May 5, 2019 / 12:08 AM / 2 months ago

アングル:人材獲得競争で立ち遅れる米国、トランプ主義が障害に

約50万人に上る技術系の空きポストを抱える米国では、それを埋めるソフトウェア開発者やエンジニアが圧倒的に不足しており、「国家的危機」に陥っていると一部のIT企業経営者が懸念している。

「エンジニア約20人分のポストが埋まっていない。6カ月も前から募集をかけているのに」と語るメーディ・ダウディ氏は、ウェブ企業向け分析ツールを提供するキャッチポイントの共同創業者だ。

もう1人の共同創業者ドリット・ソルジョーティ氏と共にアルファベット(GOOGL.O)傘下のグーグルを辞め、ニューヨークで起業した。オフィスを3カ所増やしたが、今も人材採用が大きな課題だという。

米国では、求人数が失業者数を上回る地域が増えつつある。

ビジネス向け交流サイトのリンクトインを使って、積極的に職を探していない人にも声をかけなければならない状況だ、とソルジョーティ氏は言う。「求人広告を出して履歴書が送られてくるのを待っているだけでは、そもそも何の成果も上げられない」

<「米国第一主義」が問題を深刻に>

そこでキャッチポイントが目を向けたのが海外だ。中国やインドで高いスキルを持つ技術者を採用し、米国に連れてくる。こうした手法を選択するのは同社だけではない。

「世界中の人材に門戸を開くこと、それは必ずしも米国民が雇用を失うという意味ではない。米企業が競争力を高めるための基礎の1つだ」と、ハーバード経営大学院のウィリアム・カー教授は話す。同教授は、米国における12件に1件の特許は、サンフランシスコのベイエリアで働くインドや中国の出身者によるものだ、と指摘する。

しかし海外人材の登用環境は、さらに難しさを増している。

米国第一主義を掲げ、「米国製品を買い、米国民を雇おう」と叫ぶトランプ米大統領は、不法移民を非難するだけでなく、合法的に入国する移民まで制限する措置を取っている。

「さらに問題なのは、米国社会で見受けられる全般的な論調と雰囲気だ。有能な人材が、どこで教育を受け、どこで起業するかを考える際に、本当に大切なのは、その場所をどこまで居心地いいと感じるかだ」と、カー教授は言う。

約50万人に上る技術系の空きポストを抱える米国では、それを埋めるソフトウェア開発者やエンジニアが圧倒的に不足しており、「国家的危機」に陥っていると一部のIT企業経営者が懸念している(2019年 ロイター/ロイターTV)

キャッチポイントは、他の国内企業と同様に、専門性の高い知識や技術を有する外国人労働者に発給される一時就労ビザ「H─1B」でトップクラスの人材を確保している。これはダウディ氏自身がモロッコから、ソルジョーティ氏がアルバニアから、それぞれ米国移住した際に使った制度だ。

当時と違うのは、こうした海外労働者がいつまでも米国に留まることを望んでいないという点だ。

「何かが変化しつつあることが分かる。私やメーディのように、自ら望んでこの国に移民し、定住するという発想は失われた。むしろ、しばらく米国に住み、可能な限り学び、帰国してから自分の国で将来を築こう、という風潮となっている」と、ソルジョーティ氏は語る。

<人工知能(AI)で先行する中国>

プレッシャーはさらに高まりつつある。トランプ氏は「Hー1B」ビザの発給条件を学士号よりも上の学位取得者に絞り、もっとエリート主義的な制度に変えていこうと提案している。

悪くないアイデアにもみえるが、ダウディ氏は気に入らないという。「米国はエリート主義の国ではない。そのことを思い出さなければならない。われわれが現在の立場にあるのは、学位のおかげではなく、勤勉さと根性のおかげだと固く信じている」と、同氏は語る。

フランスにある無名の学校に通ったダウディ氏は、職を見つけるのにひどく苦労したという。米国に来て、マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学の出身者と机を並べて仕事をするようになった同氏は、「出身校など誰も気にしない。気にするのは、問題を解決できる一体感のある優れたチームかどうかだけだ」と話す。

障害はもう1つある。数十万人の応募に対して、同ビザは年8万5000件しか発給されない。しかも抽選で割り当てられるため、企業が欲しいと思った人材がビザを取得できるとは限らない。

「優秀な成績で卒業した人材を見つけたら、(ビザの申請に向けて)彼らのスポンサーになる必要があるが、抽選で選ばれるか気を揉まなければならない」とダウディ氏。

最初の年に落選した場合、その会社が本当に自分の就労先になれるかを懸念して、彼らは米マイクロソフト(MSFT.O)やアマゾン・ドット・コムamzn.oといった別の企業を探し始める、と同氏は語った。

大企業であれば、抽選に外れても、現地法人にいったん入社させ、翌年以降に再び申請することもできる。

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「われわれのような小さな企業は、どうやって対抗すればいいのか」。そう語るダウディ氏だが、海外人材の雇用を巡るこうした問題は、技術競争における米国の将来に暗い影を落とすと懸念する。

「われわれは今、毎日のようにAIが話題になり、それが次の大きな何かに変わろうとしている世界にいる」とダウディ氏。「しかし、そのトップにいるのは中国だ。世界中から人材を引き寄せる磁力があったからこそ、米国は国家として成功してきた。その磁力が無くなったら、と不安を覚える」

(1月9日 ロイター)

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