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再送:大型増資の日立とNEC、成否は新規分野の事業展開次第

 [東京 16日 ロイター] 日立製作所6501.TとNEC6701.Tが相次いで大型増資に踏み切った背景には、業績不振による財務体質の悪化で、このままでは環境関連事業や「クラウド・コンピューティング」と呼ばれる新世代のIT(情報技術)サービスなど成長が見込まれる分野への投資競争から取り残されるとの危機感がある。

 11月16日、日立とNECが大型増資に踏み切った背景には、このままでは成長が見込まれる分野への投資競争から取り残されるとの危機感がある。写真は都内で株価ボードの前に立つ男性。7月撮影(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 固定費削減に止まらず、これらの新規分野で両社がどのようなビジネスモデルを構築するのか、新株購入を検討する投資家は慎重に見極める必要がありそうだ。

 <マーケットは両社に楽観視せず>

 新株発行による資金調達額は日立が約3180億円、NECが1340億円に上る。16日に増資を発表した日立の株価は前週末比8.5%下落。6日に同様の増資を発表したNECは、直後には好意感されたものの、その後は一進一退でマーケットの両社の先行きに対する見方は決して楽観的ではない。

 いちよし投資顧問チーフファンドマネージャーの秋野充成氏は、日立の増資について「今実行しないとV字型回復の展望が見えなくなる」と指摘。NECについて同氏は「本当の意味で成長路線に乗るためには最低でも4000億─5000億円を調達する必要があるが、その額が調達できるかといったら無理だろう」との見方を示した上で、そうした規模の資金調達を可能にするには「日本の電機メーカーはもっと統合しないといけない」と強調する。

 <日立とNEC、過去5年間で純損失>

 市場が両社の大型増資に必ずしも好意的でないのは、近年国際的な地盤沈下が指摘される電機業界の中でも、この2社の業績不振が目立つためだ。2009年3月期までの過去5年間の最終損益の合計額でみると、日立が7894億円、NECが1977億円とともに赤字。大手電機8社のうちソニー6758.Tや三菱電機6503.Tなど他の6社はいずれも黒字を確保しているのとは対照的だ。

 昨年秋のリーマンショックに直撃された09年3月期こそ三菱電を除く7社が最終赤字となったが、それ以前の4年間は薄型テレビなどデジタル製品の普及と搭載される半導体など関連デバイスの市場拡大、中国をはじめとする新興国の経済成長など事業環境はむしろ良好な時期だった。

 しかし、日立とNECは追い風に乗りきれないまま、前年度に業績が急速に悪化。自己資本比率は08年3月末から09年9月末の間に日立が20.6%から10.9%、NECが28.5%から20.9%にそれぞれ低下した。

 10年3月期通期は、日立が2300億円の最終赤字の見通しで、NECは従来1000億円と見込んでいた営業利益が半導体事業の悪化で600億円に下振れするものの最終利益予想100億円は維持。両社とも固定費削減を前倒しで進めているが、売り上げ拡大による本格的な回復軌道には乗っていない。

 市場関係者からは、今期も多額の赤字見通しである日立が今年度当初から公募増資の可能性を示唆していたことについて「増資を行う前に売るべき(上場子会社株などの)資産があるのではないか」(外資系証券アナリスト)といった批判が聞かれた。ただ、資本増強が決まっていない段階で上場株などの資産売却を強引に進めると、交渉相手に足元を見られるといったことも想定されるため、増資を先行させようとの判断が働いたとみられている。

 <「選択と集中」に遅れ>

 日立とNECが近年の業績で他の電機大手に見劣りしたのは「事業の選択と集中」が遅れたことが要因の1つとして挙げられる。

 日立の場合、07年3月期から09年3月期にかけて、1)国内電力向けのタービン事故や海外で受注した火力発電所建設事業でのプロジェクトの混乱、2)ハードディスクドライブで続いた赤字、3)薄型テレビでの大幅赤字、4)昨年秋のリーマンショック以降の自動車機器事業の急速な業績悪化、5)三菱電機と共同出資する半導体メーカーのルネサステクノロジの大幅赤字──など、問題が次から次へと発生した。ある国内証券系アナリストは、日立の経営について「ある問題が解決しても別の問題が現れる。モグラたたきを続けているようだ」と辛らつに指摘した。

 NECでは、経営不振の子会社NECエレクトロニクス6723.Tがルネサスと来年4月に経営統合することに決まり、かつて出荷額世界一を誇った半導体事業がNECの中核から外れる。携帯電話端末やパソコンのグローバル展開では成果を上げられず、矢野薫社長が06年の就任後しばらくは注力分野として強調していた次世代通信網(NGN)事業も、頼みとするNTT9432.Tグループによる光通信網の普及が計画に比べ遅れており、NEC側の情報発信も最近ではトーンダウンしている。

 また、現在の中核事業であるコンピューター・システム構築やIT(情報技術)サービス分野では、富士通6702.Tが1990年に買収した英ICL社(現・富士通サービス)をテコに海外事業展開や外国のIT企業買収に積極的で、ITサービスの海外売上高比率も32%に上るのに対し、NECは国内での事業展開が中心で(ITサービスの海外比率は非開示)、成長戦略に欠かせない同分野のグローバル化で遅れている。

 コンピューターとIT、通信機器で日本を代表する両社の2000年代の売上高推移は、ほぼ拮抗しながらもNECが上回ることが多かったが、07年3月期以降はコンスタントに富士通が上回るようになった。10年3月期には、NECは富士通に1兆円以上の差をつけられる見通しで、両社の体力差が明白になってきている。

 <環境やクラウドで反転攻勢なるか>

 ただ、電機産業の今後の事業環境は、過去数年の経験だけでは予測困難なほど大きく様変わりする可能性が高い。その典型的な事例として、電気自動車向けのリチウムイオン電池などの環境関連分野の市場拡大と、インターネット経由でソフトウェアサービスなどを提供する「クラウド・コンピューティング」の台頭が挙げられる。

 日立は、低炭素社会実現に関連する幅広い事業を抱える。具体的には、リチウムイオン電池、原子力発電、鉄道、ITを駆使しながら電力の需給を効率的に制御し、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及にも欠かせない次世代送配電網「スマート・グリッド」などがある。同社の川村隆会長兼社長は4月の就任会見で、「高信頼な情報通信システム技術に支えられた社会インフラの提供こそ他社に真似の出来ない日立の強み」だと強調した。

 NECも電気自動車など次世代環境対応車向けリチウムイオン電池を成長事業の1つに掲げている。自動車関連分野はNECにとって必ずしも中核的な分野ではなかったが、今後はクルマの心臓部がエンジンから電池に大きくシフトすることが見込まれ、可能性を見いだしているようだ。「矢野社長は講演があると、必ず電池事業をPRしている」(NECグループ関係者)という。

 環境分野が成長戦略に向けた「攻め」なら、クラウドへの対応は「守り」かもしれない。この分野では、ネット経由でメールやスケジュール管理、表計算やワープロなどを提供する米グーグルGOOG.Oや、顧客管理システムで成長著しい米セールスフォース・ドットコムCRM.Nなどイノベーション志向の強い競合相手がひしめく。

 クラウドが普及すれば、企業向けITサービスは低価格化を伴うコモディティー(日用品)化が進行する可能性が高い。信頼性は高いが高価格に傾きがちな日立やNECなど日本のITベンダーが、日進月歩のIT市場の変化にどのように対応し、差別化や棲み分けを図るかについても資本市場から問われることになりそうだ。

*記事本文中の誤字を修正して再送します。

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