[ワシントン 25日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は25日、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を行った。 発言内容は以下の通り。
<季節調整の問題>
FRBは、2008年、09年の異例に深刻なリセッション(景気後退)により生じた一部季節要因の問題も考慮しており、このことが統計の解釈を一段と難しくしている。
過去5、6カ月間に見られた雇用増は08─09年の非常に急激なレイオフの反動としての一回限りの巻き戻しであり、今後予想される伸びよりもある程度大幅となった可能性があるという説を提示する。これはあくまで仮説だ。この先の動向を見守る必要があるが、仮説が正しければ、今後の雇用増は最近の増加幅となっていた月25万件をやや下回ることになる。しかし、これは依然として未知であり、3月の雇用統計からあまり多くの結論を導くことはしない。
<経済指標に対する天候の影響>
天候は恐らく複数の事柄に影響した。一部で雇用の前倒しにつながり、1月と2月は見かけ上堅調に、3月は見かけ上やや軟調になった可能性がある。恐らく建設と製造業に影響しただろう。異例の暖冬によって影響を受けたとみられる事柄は複数あり、われわれはそれを踏まえた調整に最善を尽くしている。
<労働参加率低下の一因は景気循環>
トレンドを上回るペースでの労働参加率の低下は大部分が景気循環要因を反映したものであり、経済の改善に伴い反転する、との見方に賛同する。
<ツイストオペの終了>
FRBは一般的に、金利の主要な決定要因は特定の時点での保有証券の規模であり、新規買い入れやそのフローではないという見方をとってきた。こうした見方を裏付ける証拠はかなり有力と思われる。
この理論が正しければ、FRBの(資産)買い入れ終了時の金利への影響は比較的軽微となるはずだ。実際に、FRBが過去に実施したプログラムを自然に終了させた際の経験はそうしたものとなった。
われわれは当然、状況の注視を続けるが、なんらかの理由で金融状況がFRBの経済目標に一致しないと判断した場合、是正に向け行動する。しかし、金融市場がかなり先を見越すものであることを踏まえると、FRBの買い入れ終了時には市場は既にそれを予想済みで、影響は軽微になるとわれわれは予想している。
<「異例の低金利」の意味>
声明の文言が時として期待されるよりも多少あいまいになる理由の一つとして、17人もしくは最低10人の総意を得る試みが挙げられる。異例の低水準の意味については、FOMCのメンバーや参加者によって考えが多少異なる可能性もあるが、個人的には、おおむね現在の状態に近い水準を表していると考える。
<金融政策は正しい位置にある>
FRBが実施してきた経済、および見通しに関する分析に基づくと、金融政策は現時点で、おおむね正しい位置にあるとみている。これは、FRBが追加措置を実施しないという意味ではない。FRBには当然、追加措置を行う用意がある。ただ、当面はおおむね正しい位置にあるように見えるということだ。
<欧州諸国の債務危機への対応>
進展は見られたが、市場の状況を踏まえると、明らかにやるべきことは残っている。欧州当局者が確約したことを引き続き実行し、欧州に残存する大きな問題に対処するために非常に強力な措置を導入すると、われわれは信頼している。
<インフレと失業率>
われわれの計量経済モデルに、失業を改善させるにはインフレ率が目標を大きく上回る必要があるとの仮定はない。
<金融市場改善の巻き戻し>
スペインやイタリアの財政状況に対する懸念により、最近数週間、市場で緊張が高まっているほか、それに伴い米国市場でも振れが大きくなっていると認識している。昨年末から今年初めにかけて欧米金融市場で見られた改善に対して最近、一部巻き戻しが起きていることを単純に留意している。
<迫りつつある財政の崖>
財政政策は、ある程度考慮する必要があると思う。ただ、財政当局者が何の対応もとらなければ、(歳出削減によって生じる)財政の崖は非常に大きく、経済への影響を相殺する能力をFRBが持つ、あるいは持ち得る可能性は全くないと指摘しておくことは非常に重要だと考える。
<インフレ>
このところのガソリン価格の上昇により、コアインフレ率、および全般的なインフレ率が、一時的に押し上げられている。ただ、こうしたことはシステムに吸収され、原油関連の新たな衝撃が発生しないと仮定した場合、インフレ率は年内に2%近辺に緩んでいくと予想している。
<FRBの透明性>
FRBは透明性を高めるよう努力を続けており、多くの方法を検討している。引き続き注目していてほしい。ただ、再度述べておくが、FOMCは今日発表した合意について、かなり満足している。
<FOMCの総意>
公表したガイダンスが依然適切との総意に至る上で、FOMC内において困難は生じなかった。経済見通しがいずれかの方向に大きく変化することになれば、ガイダンスもそれに合わせて変化することになる。だが現時点で公表した声明の内容にFOMCは満足しているとわたしは考えている。
<住宅セクターの経済見通しへの影響>
FOMCの大半のメンバーは、経済成長が今後数四半期緩やかな伸びにとどまり、その後は次第に加速すると予想している。改善の兆しにもかかわらず、住宅セクターのぜい弱さは依然、景気回復への向かい風となっている。世界の金融市場でみられる緊張も、昨秋にほど顕著ではないものの、引き続き見通しへの著しいリスクとなっている。
<追加措置の可能性>
われわれは、少なくとも2014年末までのフェデラルファンド(FF)金利見通しを示しており、非常に緩和的だ。景気回復を維持し、インフレが目標付近にとどまることを確実にするために、必要に応じて一段の措置に動く用意が依然としてある。特に、経済見通しを引き続き検討し、失業率が長期的に正常な水準に向かって十分改善しているか、インフレが目標付近にとどまっているか、追加措置のコストとリスクに関する評価において適切かといったリスクをみていく。依然として、目標達成に必要であれば、バランスシートに関する新たな措置を講じる用意は全面的にある。これらの手段は現在も検討事項として残っており、経済への追加支援が必要になった場合は活用することをちゅうちょしない。
<緩和スタンス>
予見し得る将来において、政策上かなりの緩和スタンスを維持することがFRBの意図するところだ。必要に応じて追加措置を講じることが引き続き可能であり、その用意もある。