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〔焦点〕世界的な景気悪化で日経平均はバブル後安値を意識、世界同時不況なら7000円割れの声

 [東京 23日 ロイター] 欧米を中心とする世界的な景気悪化懸念の広がりを背景に内外の株価が再び揺れ動き始めた。米国、ユーロ圏とも景気後退に陥るのは避けられないとの声は多く、23日の東京市場では日経平均.N225が10日につけた年初来安値を更新、午前中に一時8000円割れ寸前まで下落した。金融危機への対応に追われる各国政策当局は景気対策でも後手にまわるとの見方が強く、株式市場は景気悪化に焦点を合わせている。市場参加者の間ではバブル後安値である7603円が意識されている。さらに、世界同時不況を織り込みにいくような展開になった場合、7000円割れもあり得るとの声も聞かれる。

 <9月貿易黒字は前年比94%減、海外需要減が鮮明に>

 外需依存型経済の日本の場合、海外景気の悪化による需要減少がマーケットに大きく響く。9月の貿易黒字額は前年比94.1%減。エネルギー価格高騰による輸入拡大もあるが、対米・対EU輸出の減少が目立つ。対米黒字は前年比マイナス28.1%、対欧州連合(EU)黒字はマイナス25.6%に落ち込んだ。欧米だけでなく、これまで堅調だった対アジア輸出にも減速が目立ってきている。

 ここに、円高が追い討ちをかけ、日本の輸出産業を追い込んでゆく。これまで値を保っていたユーロまでもが急落し輸出採算は一段と悪化する。

 世界の政策当局は金融危機への対応に追われており、大規模な景気対策まで手がまわらない状態だ。また、7000億ドルの金融安定化法を遂行する米国を中心に、金融対応だけで膨大な資金が必要になる。景気対策に振り向けられる資金がどの程度あるのか、といった問題もある。

 <強まる下値不安、世界同時不況なら7000円割れも>

 日本株はバリュエーション的にはすでにかなりの調整が進んでいる。しかし、悪化を続ける世界景気の底がまだみえてこないため、下値不安はむしろ強まっている。市場ではバブル後安値を意識する声が多く「日経平均は2003年安値7603円76銭をトライする可能性が高まろう」(東海東京証券・エクイティ部長、倉持宏朗氏)との声が上がっている。

 さらにバブル後安値を割り込めば、下値のメドはたちにくくなる。「世界同時不況を本格的に織り込む展開になった場合、日経平均はバブル後安値の7600円水準では下げ止まらず、オーバーシュートの領域に入る。7000円割れの可能性も出てくるだろう」(草野グローバルフロンティア代表取締役、草野豊己氏)との見方も出ている。

 *以下が市場関係者の見方(順不同)

◎ 第一生命経済研究所 主席エコノミスト 嶌峰義清氏

 新たに連鎖的な株価下落を作った震源地は、ユーロ売りが加速した為替だ。米国と比較して、ヨーロッパの利下げは遅れている。欧州中央銀行(ECB)は主要政策金利を3.75%にまで引き下げたが、米国の政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートは1.5%。欧米ともに景気悪化が顕著な中、乱暴な言い方をすればECBは2.25%分遅れていることになる。

 市場は景気対策の一環として利下げを催促しているが、ユーロ売りによる円高の急伸は、企業業績の見通しに下押し圧力を与える。国内企業業績について、市場は今期2割程度の減益を織り込んでいるとの見方もあるが、円高を受けて来期見通しに一段の不透明感が増すようであれば、市場不安は増大しそうだ。

 為替やこの先の個別金融機関の材料次第では、日経平均で7000円、米ダウで7000ドル程度まで下落する可能性があるとみている。

◎ 草野グローバルフロンティア代表取締役 草野豊己氏

 潤沢な流動性を背景に、これまで金融も実物経済も借金でレバレッジをかけたハイリスク・ハイリターン投資で収益をあげ、世界的な景気拡大を実現してきた。新興国の急成長の背景にも、レバレッジでふくらませた海外からの投資がある。これが急速に巻き戻されているのが現在の状況だ。

 流動性の逆回転により、世界同時不況や世界的なデフレスパイラルに陥る可能性が出てきており、世界景気に対する敏感株である日本株を圧迫している。これに円キャリーの巻き戻しや金利感による円高が加わることで、日本株への売り圧力はさらに強まる。世界同時不況を本格的に織り込む展開になった場合、日経平均はバブル後安値の7600円水準では下げ止まらず、オーバーシュートの領域に入る。7000円割れの可能性も出てくるだろう。

 レバレッジで収益をあげたビジネスの典型であるヘッジファンドは現在、解散や清算、プライムブローカーからのマージン・コールに苦しんでおり、手仕舞い売りはまだ続く。

 ヘッジファンドの規模は、昨年末で1兆9000億ドル。これが足元では1兆7000億ドルに減少しており、来年3月までには1兆3000億ドルに減るとみられている。減少分の4000億ドルをレバレッジで膨らませたポジションが、この先、手仕舞われることになる。

 世界の政策当局は現在、金融危機への対応で手一杯で、景気対策まで手がまわらない。また、7000億ドルの金融安定化法の遂行に膨大な資金が必要になる米国を中心に、各国が景気対策にどれだけの資金を振り向けられるかも不透明だ。11月15日の金融サミットで景気対策の議論にまで踏み込んだとしても、市場は財源への疑問を感じ取る可能性がある。

◎ 東海東京証券 エクイティ部長 倉持宏朗氏

 日経平均が10日のザラ場年初来安値8115円41銭を更新したことで、売り方に目標達成感が生じた格好となり、買い戻しから下げ渋っているものの、昼のバスケット取引の状況や為替相場の動向によって、後場も予断を許さない展開が続きそうだ。

 ここにきて株価の下げが厳しくなったのは、欧米景気の失速に加え、新興国に中には国家レベルのデフォルトが懸念されるようになってきたことも背景にある。これを受けて相対的に安全な通貨として円が買われ、円高が進むことによって輸出型企業の業績不安が一段と高まるなど、日本株は景気低迷と為替リスクの両面から売りを誘っている状況だ。

 ここで求められるのは世界各国での大型景気対策だが、今のところ明確に打ち出される気配がないため、市場は日米欧とも財政事情などから大型対策が出ないという不安を感じ出したようでもある。このまま対策が出なければ、日経平均は2003年安値7603円76銭をトライする可能性が高まろう。

◎ 日興コーディアル証券 シニアストラテジスト 大西史一氏

 確かに景気、企業業績は悪化しているが、現状は過度な実体悪を意識し、ファンダメンタルズを超越した下げ方になっている。海外勢によるリスク資産圧縮の動きが続いており、ヘッジファンドの換金売りやミューチュアルファンドの解約売りなどが止まらない。パフォーマンス悪化が売りを誘い、売るから一段とパフォーマンスが悪化するという負の連鎖になっている。11月中にも米新政権による経済対策が明らかになると予想されるが、しばらくは不安定な需給に振り回されることになりそうだ。

 新興国の成長が続く限り世界景気が腰折れすることはないが、底が浅いだけに景気低迷が長期化するリスクもある。市場はそのあたりも意識している。ファンダメンタルズで語れない相場だけに下値は難しい。日経平均.N225は目先の節目である8000円や2003年安値の7600円などを意識する展開になる。ただ、ファンダメンタルズをベースとする相場に戻れば、相当な景気、企業業績の悪化を織り込んでも、日経平均1万円以上への回復はあるとみている。

◎ 東洋証券 シニアストラテジスト 児玉克彦氏

 株価は企業業績のさらなる悪化を織り込みに行っている。ユーロに対し円高が進んだだけでなく対ドルや他通貨に対しても円高が進行しているほか、世界同時不況の懸念も強くなっている。貿易統計にみられるように輸出の落ち込みも厳しい。現時点の予想株価収益率(PER)が10倍付近まで低下したとしても、それが割安かどうかわからない不安が株安の背景だ。

 自国の株価下落で日本株を換金売りする海外ファンドの動きは止まらず、前回安値では下支えの主役になった個人投資家も指数が安値を切ってきたことで投げ売りをせざるを得なくなっている。

 また輸出株が厳しいからといって金融株などにもシフトにくい。新興国の一部にはデフォルト懸念が出ており、それらの国の国債を保有する国内金融機関への影響が不安視されているためだ。

◎ 三井住友銀行市場営業推進部 チーフストラテジスト 宇野大介氏

 金融問題が実体経済に波及したとの見方が強いが、金融問題の発端が米不動産市場の減速であることを考えれば、因果関係は逆だ。米国を中心に、各国政府による景気悪化を止めるための早急な対策が望まれる。

 米株は景気の減速などを映して、ダウで7000ドル程度まで下落する可能性があるとみている。ユーロ安が対ドルでも加速しているが、米国で景気対策などの有効な施策がない限り、再びドル売りに回帰するだろう。ユーロは2001年から上昇し続けた結果のポジション調整の部分も強い。1ユーロ130円を割ったのは想定外だが、ユーロはいつかは反落するとみていたので、このユーロ売りはヨーロッパの景気減速が足元でさらに悪化したためではない。

 日経平均については8000円を割れないように、政府が景気対策や株価買い支えなどあらゆる対策を打つべき状況になったとみている。市場メカニズムによる自律反発は期待できない。

◎ エース証券・専務 子幡健二氏

 主要国、新興国を問わず各国通貨は対円で下落傾向をたどっているが、今後も比較的安心ができる通貨と

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