[ワシントン 19日 ロイター] オバマ次期米大統領は、待ち望まれていた20日の大統領就任演説で、米国が経済危機からの立ち直りが可能であると国民に安心感を与えるという課題に直面する。議会議事堂前での就任宣誓後、多数の聴衆を前に行われるこの演説は、政権が掲げる目標を示す最善の機会をオバマ氏に与える。
多くの米国人が失業、経済が疲弊した上、イラクとアフガニスタンへの米軍の展開が続くなか、オバマ氏が過去数週間練ってきた演説への期待は大きい。オバマ氏の広報担当者、ニック・シャピロ氏は「就任演説は、われわれが置かれている瞬間、および危機からの脱出に必要な精神を描写するものになるだろう」と語った。
過去の大統領演説のスピーチライターによると、オバマ氏は提案を書き並べた長いリストの概要を説明するのを避け、国民が直面している課題とこれを切り抜ける方法について話す見通し。
クリントン前大統領のスピーチライター、ジェフ・シェソル氏は「就任演説は大統領が第一の理念と国家の進路を示すことから始まる」とし、「そして現状の定義を行う。自身の人となりを示し、状況の認識、自らが考える国民の進むべき方向について明らかにする」と語った。
大統領の演説を待ち望んでいるのは米国民だけではない。世界中の人々が演説に関心を示している。
日本の多くの書店では現在、オバマ氏のコーナーが作られ、同氏の演説に関連する書籍が集めている。
<インスピレーション>
オバマ氏はインスピレーションを得るため、過去の大統領の就任演説に目を通してきた。50を超える演説のうち、後世に名を残したのはわずかに過ぎない。
1865年の南北戦争末期のリンカーン大統領の演説、1961年のケネディ大統領の演説、大恐慌最中の1933年のフランクリン・ルーズベルト大統領の演説がこれらに含まれる。
イリノイ州出身の同郷人、リンカーン大統領を慕うオバマ氏は、USAトゥデー紙に対し、リンカーン大統領の演説が最もすばらしいものであり、ケネディ大統領は2番目だ、と述べている。ルーズベルト大統領の演説には特段、印象に残るものではないという。
オバマ氏は「ルーズベルト大統領の演説は実際、それ程素晴らしいものではい」とし、「『われわれが恐れるべき唯一のものは、恐れそのものだ』は名文だが、これを除けば魅力に乏しい」と述べた。
オバマ氏は自身の演説草稿にある程度満足している、と述べたが、「まだ手を加えることができる」としている。
同氏は「就任演説での私の仕事は、われわれが進んできた道と、克服してきた尋常でない状況を国民に思い起こさせることに過ぎない。われわれはより困難な時代を経験しており、これからも難しい状況を乗り超えて行くだろう」と述べた。
ブッシュ大統領のスピーチライターを務めたマイケル・アントン氏は、オバマ氏は多くを公約することを避ける必要があるかもしれない、との見方を示した。「1月20日に太陽が姿を現し、世界が根本的に変化すると信じる熱狂的な支持者を抱えている」とし、「期待を和らげる必要があるだろう」と述べた。
バンダービルト大学で大統領を研究するトーマス・シュワルツ教授は、オバマ氏にとって困難な問題の一つは、式典で近くに着席するブッシュ大統領を強く非難することなく、いかに新たな始まりを提案するかだと指摘。「ブッシュ大統領を過度に厳しく批判することで始めたくはないだろう」と語った。
シュワルツ氏によると、ケネディ大統領は前任のアイゼンハワー大統領をさり気なく非難することが可能だったという。
今回の就任演説には多くの時間と努力が注ぎ込まれている。
オバマ氏の側近によると、次期大統領は昨年11月の感謝祭休暇の前週、スピーチライターのジョン・ファブロ氏とシニアアドバイザーのデービッド・アクセルロッド氏と会い、演説のテーマについて協議した。
初稿は12月上旬に出来上がり、その後数週間、作業が続行された。前週の週末にはオバマ氏自身が加筆と推敲(すいこう)を行った。
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(Steve Holland記者;翻訳 山口 肇)
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