[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は14日、上院銀行委員会で半期に一度の証言を行い、今後の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが必要となる可能性が高いと述べた。ただトランプ新政権の経済政策をめぐりかなりの先行き不透明性が出ているとの認識も示した。
イエレン議長は証言で、雇用市場が一段と引き締まりインフレ率が目標とする2%に向け上昇していくとFRBが予想していることに言及し、「緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではない」と指摘。利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされ、リセッション(景気後退)を招く恐れがあるとした。
その上で「今後のFOMCで、雇用とインフレがわれわれの予想に沿って進展し続けているか検証していく。予想通りに進展している場合、フェデラルファンド(FF)金利の一段の調整が適切となる公算が大きい」と述べた。
ただ、FRB当局者が年内に3回の利上げが正当化されると予想しているかについては言及しなかった。また、今年初めての利上げが次回3月会合で決定されるのか、その次の6月会合になるのかについても明言を避け、議長は「3月か5月か、それとも6月か。具体的な時期は言えない」とした。アナリストの間では6月会合が有力との見方が大勢となっている。
イエレン議長はまた、労働市場はかなり引き締まっているとの認識を表明。雇用の伸びは力強く、長期的に持続可能な水準を上回っている公算が大きいとした。その上で、労働市場が過度に引き締まらないよう注意する必要があると述べた。
インフレ率は数年にわたり、FRBの目標を下回って推移しているが、議長は市場ベースのインフレ指標が依然として低水準ながらも、足元で上昇していることは心強いとした。
賃金の伸びについては、現在の水準をいく分上回るペースがFRBのインフレ目標と整合すると指摘した。
議長は今後数カ月に、どのようにバランスシートを縮小していくかについて協議することも明らかにした。ただ、バランスシートの縮小は現在の利上げ局面がかなり進んだ段階で着手するとの方針をあらためて示した。
バランスシートの規模は最終的には、現時点よりもかなり小さくなるとしたほか、段階的に償還資金の再投資を停止し、米国債が中心の構成になることが望ましいとの考えを示した。委員会はできる限り、短期金利に依存することを望んでいるとも述べた。
トランプ大統領が金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを指示したことをめぐっては、大統領令の基本原則には同意するとしたが、米銀に対する年次ストレステスト(健全性審査)は金融規制の柱であり「監視プロセスを大きく強化した」とし、擁護する立場を示した。
イエレン議長の議会証言はトランプ政権の発足後初めて。議長は「財政政策やその他の経済政策の変更により、景気見通しに影響が及ぶ可能性がある」と指摘。ただ、どのような政策の変更が行われるのか、また経済にどのような影響が及ぶのか把握するのは現時点では時期尚早との考えを示した。またFRB当局者の多くは、トランプ政権下における経済政策の変更について憶測しないことを決めたと述べた。
イエレン議長は税制や財政をめぐる特定の提案について立ち入るようなことはしたくないとしながらも、政策担当者に対し米企業の効率性を高めることの重要性を念頭に置くよう呼び掛けた。
財政政策については、「米国の財政を持続可能な軌道に乗せることに整合的な変更であることを望む」と述べた。
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