October 24, 2018 / 4:45 AM / 24 days ago

焦点:円とスイスフラン、「安全資産」の輝き取り戻すか

[ロンドン 23日 ロイター] - 世界的な株価の不安定化や最近の米国株のボラティリティ上昇は、市場全般が動揺した場合の逃避先を熱心に探している投資家にとって一種の警戒信号となっている。

 10月23日、世界的な株価の不安定化や最近の米国株のボラティリティ上昇は、市場全般が動揺した場合の逃避先を熱心に探している投資家にとって一種の警戒信号となっている。都内で2017年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

資金の逃げ場として伝統的に挙げられるのは、米国債や金、ロンドンの不動産などだ。通貨で言えばドル、スイスフラン、円が該当する。

ただここ数カ月を見ると、不思議なことにこれらの多くは安全資産という評判通りの動きをしていない。貿易摩擦や米国株のボラティリティ上昇、イタリアの財政運営を巡る懸念が生じていても、円は対ドルで3月以降7%下落している。

スイスフランはユーロに対して今年全体では2%上昇しているとはいえ、9月初めからはイタリアと欧州連合(EU)の財政政策に関する対立があるにもかかわらず、下げ歩調が続く。

ドイツと米国の国債は価格の割高感が広がり、インフレに強いとみなされてきた金は年初来で5%下落している。

唯一ドルだけが、世界で最も流動性の高い通貨という立場や力強い米経済と金利上昇の恩恵に浴し、値動きが堅調だ。

<期待通りの働き>

それでも多くの市場関係者は、さらに大幅な株価下落や、特に米国について深刻な成長下振れ懸念が出てくれば、伝統的な安全資産だけが妥当なヘッジ先とみなされるようになると考えている。

他の全ての資産が値下がりする中でも円とスイスフランは上昇する、というのが投資家の見立てだ。

3510億ポンド(4640億ドル)を運用するM&Gインベストメンツのリテール債券事業責任者ジム・リービス氏は「もし相当切実なリスク・オフ・イベントが発生し、米国株もしくは欧州銀行株が10%下がるようなら、安全資産へのヘッジ投資が起きるだろう」と述べた。

市場のボラティリティが跳ね上がったり投資家が株を投げ売りする局面で円が想定通り安全資産として機能するという証拠は、今月も確認できた。10日に米国株が1日として2月以降で最大の下げを記録した際には、円が強含んだからだ。

ブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、カスパー・ヘンセ氏は、株価の調整に対する安上がりのヘッジになるとしてここ数日で円を買ったと表明。「(万が一のときには)日本の資金は海外から本国に逆流し、それが円を押し上げるはずだ」と話した。

<円とフランの強み>

ヘッジ先として円とフランには魅力がある。日本とスイスはともに巨額の経常黒字を抱え、対外資産も潤沢だ。世界的に資産が下がる局面では、日本とスイスの投資家は資金を還流させて、それぞれの通貨が上昇する。

スイスの経常黒字の対国内総生産(GDP)比は10%近い。日本も昨年の経常黒字はおよそ1840億ドルで、GDPの4%に達した。

また日本は世界最大の債権国で、昨年末の対外純資産額は328兆円(2兆9200億ドル)。スイスも世界有数の債権国として知られる。

さらに両国は豊富な外貨準備を保有し、政治システムは安定的で、円とフランには市場の混乱時に投資家が求める流動性もある。

ラボバンクのストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏は「何かものすごい地政学イベントや、米国の成長見通しを暗転させる材料があれば、買われるのは円とフランになる」と言い切った。

では両通貨はなぜ今年はさえない動きをしているのだろうか。

第1には、全般的に考えるとまだ事態が落ち着いていることが反映されている公算が大きい。何といっても世界の経済成長率は3.5%強で、企業の増益率は2桁で推移しており、政治情勢や通商問題を巡る不安を相殺している。

第2に、円やフランなどの低金利通貨で資金を調達して高利回り資産を買う「キャリートレード」が、今の局面では以前ほど重要な存在でなくなっていることがある。

最後に、通貨のボラティリティがなお相対的に低く、2015─17年の3割強程度の水準にとどまっている点が影響している。そのためイタリアの財政問題など政治情勢への懸念が高まっても、円とフランの需要が抑えられてきた。

ソシエテ・ジェネラルの通貨ストラテジスト、アルビン・タン氏は「円といわゆるリスクオフは直線的な関係にない。円は急激なボラティリティ上昇により大きく反応する」と説明した。

だとすれば投資家が抱くのは、何をきっかけに、いつ安全資産買いを促すムードが生まれるか、との疑問だ。

大方の市場関係者は、米国株が持続的に10─15%値下がりして長きにわたる強気相場の終えんが示唆され、その場合恐らく米国と世界の先行きの経済成長に対する不安が同時に高まることで、安全資産に資金が向かうとの見方で一致する。

ウッドマン・アセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ベルント・ベルク氏は「世界的な成長懸念を理由にリスク回避の動きが出てくれば、スイスフランや特に円などの典型的な安全資産が大きく値上がりする」とみている。

(Tommy Wilkes、Tom Finn記者)

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