January 12, 2018 / 8:31 AM / 6 months ago

焦点:年始の投機筋、円高と米金利高に照準 異例の組み合わせ

[東京 12日 ロイター] - 金融市場を大きく揺り動かす投機筋の間で、円と米国債が今年最初の有力な取引の標的となりつつある。日銀の金融政策変更を見越した円買いや、対中情勢の不透明感などを背景とする米金利の上昇シナリオで、いずれも今年は小幅な変動にとどまるとする大方の予想の裏側を突こうとする戦略だ。円相場の主戦場である東京の外為市場関係者は、そうした海外勢の動きをまだ冷めた目で眺めているが、勝負はまだ始まったばかりだ。

 1月12日、金融市場を大きく揺り動かす投機筋の間で、円と米国債が今年最初の有力な取引の標的となりつつある。日銀の金融政策変更を見越した円買いや、対中情勢の不透明感などを背景とする米金利の上昇シナリオで、いずれも今年は小幅な変動にとどまるとする大方の予想の裏側を突こうとする戦略だ。写真は昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

<「必ず負ける」戦略に賭けた海外勢>

市場関係者も円高派と円安派に割れる今年の円相場。結局どちらにも大きく動くことはないだろうとの声が多かった中で、異変が起こったのは今月9日だった。

日銀が通告した国債買い入れオペで、残存10年超25年以下と同25年超をそれぞれ前回から100億円減額。国債市場では先物が売られ、長期・超長期ゾーンの金利も上昇。それを受けて円JPY=は対ドルで112円半ばへ70銭近く一気に上昇した。

この局面で円を買い込んだのは、海外投機筋が中心だったとされる。新年度入り後は超長期国債の発行が減額されるため、オペもそれに伴って減額されるとの見方は、多くの国内勢にとって周知の事実。時期の不透明さはあったとはいえ、大きく進むはずのなかった円高に鋭く反応した海外勢に、在京のある大手銀幹部は「全然分かってない。彼らは必ず(円が反落して賭けに)負ける」と吐き捨てた。

だが、日本の事情に理解の乏しい海外勢が、安易に日銀の政策変更を期待して円を買い仕掛けただけとの見方は早計かもしれない。9日以降にしつこく円を買い上げた海外勢の間では、その後大きく取りざたされることになる米中貿易摩擦の可能性などが、すでに話題になっていたとみられるためだ。

<キーワードは年初来の「米中貿易摩擦への懸念」>

翌10日。中国の外貨準備当局者らが、米国債の購入ペースを落とすか、購入を停止する提言を行ったとの報道が手がかりとなって、米国債市場では10年債利回りUS10YT=RRが急上昇。一時2.5%台と10カ月ぶり高水準に到達した。

通常であれば、米金利高はドルの押し上げ圧力。しかし今回は、その要因が米中関係の悪化を懸念させる事象だったことで、市場のうねりはリスクオフ的な動きとなって、円がさらに買われる展開となった。ドルは12日早朝に111.05円と1カ月半ぶり安値を更新。この1週間で2円超の円高が進んだ。

布石はあった。年初来、米政府は中国アリババ・グループ(BABA.N)傘下企業による米企業の買収を阻止したほか、米AT&T(T.N)は中国の華為技術HWT.UL製スマートフォン販売の合意を理由が曖昧なまま、突然撤回していたのだ。

相次ぐ不穏な動きに続いて流れた米国債売却を想起させる報道。市場では、一連の米国の姿勢に不信感を強めた中国側が「貿易摩擦問題の台頭を受けた、米政府への一種のけん制」(野村証券の郭穎アナリスト)を狙って仕掛けたのではないかとの思惑が、静かに広がっている。

<米金利高の背景に中国の通貨政策変更>

「中国発の米金利上昇」とも呼べる動きは、これだけではない。中国人民銀行(中央銀行)が基準値算出のため概算値を提出している銀行に対し、算出に用いる手法として昨年5月に導入した「カウンターシクリカル要因」の影響を緩和するよう指示していたことが判明したのだ。

中国当局は明言していないが、この仕組みはもともと、昨年来の資本流出に伴う元安を抑制する手段。同時に、元安に歯止めがかかれば元買い/ドル売り介入が減少し、米国債売り圧力が低減するため、米金利の上昇に歯止めがかかりやすくなる構造でもあった。

その措置が緩和されたことで、報道のあった9日にも米金利は急上昇。同日昼から台頭した日銀政策変更への思惑を背景とする円高と、米金利高が同時に進行する異例の「ゆがみ」が発生するきっかけとなった。

<思惑先行の円高、日本当局の姿勢が今後の鍵>

こうした読みが正しければ、市場では当面、海外投機筋の思惑通り、日銀の出口戦略やリスクオフ懸念を意識した円高と、米中関係の不穏さなどを手がかりとする米金利上昇が続くことになる。「事態はそう単純ではない」(トレーダー)と冷ややかな声も根強いが、特に円相場は昨年来高水準に積み上がったままの大規模な円売りポジションがいつ解消されるかも焦点のひとつで、上昇圧力がかかりやすい情勢でもある。

ただ、思惑先行の円高は日本経済への打撃となるのはもちろん、日銀の出口戦略にも大きな影響を与えかねない。三井住友銀行・市場営業部副部長の呉田真二氏は「市場を過度に反応させず、しかし正常化への道をある程度織り込ませないといけない。政策当局者は注意深くコミュニケーションをする必要がある」と指摘している。

基太村真司 編集:石田仁志

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