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焦点:日本の「脱炭素」に出遅れ感、技術革新を後押しも財政の壁

[東京 4日 ロイター] - 2050年に脱炭素を目指すとした菅義偉政権の下、日本でも地球温暖化対策が急速に動き出した。しかし、厳格な二酸化炭素(CO2)の排出規制に産業界の警戒感は強く、ガソリン車販売の禁止からハイブリッド車(HV)が除外される見通しなど、欧州などに比べて緩慢さは否めない。政府は規制によって目標を達成するより、「ゼロカーボン」という旗を企業の技術革新と国際競争力強化に利用する方向に軸足を置こうとしているが、そこには厳しい財政事情という壁が立ちはだかる。

 2050年に脱炭素を目指すとした菅義偉政権の下、日本でも地球温暖化対策が急速に動き出した。しかし、厳格な二酸化炭素(CO2)の排出規制に産業界の警戒感は強く、ガソリン車販売の禁止からハイブリッド車(HV)が除外される見通しなど、欧州などに比べて緩慢さは否めない。写真は2012年10月、川崎市の石油精製所で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

<日本の温暖化対策は成長戦略、CO2規制には抵抗感>

欧州では温室効果ガスの削減目標を10年ごとに定め、50年に欧州全体で実質ゼロを義務化する法案を整備する。英国ではガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表した。HV車は35年までに禁止する方針だ。

一方、日本はここまでの厳格な排出規制には反対の声が根強く、菅政権が掲げた目標も現状、50年に実質ゼロと漠然とした数値にとどまっている。政府は30年代半ばにガソリン車の販売を停止する方向とされ、加藤勝信官房長官によると、年内の具体化に向け経済産業省が検討を進めている。モーターと電池のほかに内燃機関も積むHV車は除外する方向だという。

政府の経済財政諮問会議でも「高効率発電技術やハイブリッド車製造に強みを持つ日本企業としては、(欧州のような厳しい規制は)競争力に大きなマイナスだ」と懸念の声が上がる。むしろ日本の政府や産業界では、CO2の削減を規制するよりも、革新的環境技術の開発に軸足を置く方向に傾きつつある。

1日に公表された政府の成長戦略実行計画では、「温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、大きな成長につながるという発想の転換が必要」だとして、温暖化対策が企業の競争力強化策として位置付けられた。電力部門では高効率石炭ガス炉や原子力発電の再稼働や安全炉開発、競争力強化戦略では水素技術、蓄電池、二酸化炭素の再利用技術、といった革新的技術を挙げ、「グリーン基金」を設けるなど財政支援も盛り込まれた。

産業界はかねてから「イノベーションやグリーン化投資にインセンティブをつけてもらうことが重要」(経団連・環境エネルギー本部の長谷川雅巳本部長)と要望しており、「国家プロジェクト」によって環境技術の国際競争力強化に向けた財政的な後押しを得ることになった形だ。

<支援規模は見劣り、財政事情厳しく>

この基金の規模について複数の関係者によると、1─2兆円の規模にすることで調整が進んでおり、来週にも正式決定する見通しだが、欧米の意気込みに比較すれば見劣りが否めない。

欧州委員会は今後10年で気候変動対策などの環境政策に官民で少なくとも約122兆円を投じる計画を発表。米国バイデン政権も4年任期中に200兆円規模のクリーンエネルギー投資を公約している。

日本は厳しい財政事情でどこまで対応可能か見通しは厳しい。「気候非常事態宣言」を決議した超党派の議員連盟事務局長の古川禎久衆院議員は、「日本がコロナの中で財政出動を余儀なくされている中、非常に財政状況が悪い。さじ加減は極めて難しいものがあると思う」と指摘する。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、50年までに8割のCO2を削減するためのコストは、各国の国内総生産を足し合わせた年間総GDPの12%に当たる1000兆円と試算。単純に日本に当てはまれば60兆円が毎年必要になる計算だ。

NEDO技術戦略研究センターの土肥英幸・環境化学ユニット長は、「巨額なCO2削減コストは世界にとっても日本にとっても受け入れがたい」と指摘。「この巨額費用を世界が受容できるレベルまで引き下げるためのイノベーションが不可欠であり、それこそが日本企業にとっても持続可能なやり方だ」として、官民挙げて技術開発を進めるのは必要な施策だと話す。

<再生エネルギーへの転換がカギ、壁は高く>

世界の投資家や市民団体が経済界の環境対応に監視を強める中、日本企業も待ったなしの状況に置かれている。一部報道によると、米アップルがサプライヤーに対し、使用電力をすべて再生可能エネルギーに切り替えるよう求めたことを受けて、ソニーやリコーは日本政府に再生エネルギー普及を阻む様々な規制の緩和を要望。脱炭素への対応が遅れれば、日本から製造業が海外へ移転してしまいかねないとの危機感が広がっている。

しかし、脱炭素に欠かせない再生エネルギーの普及には各種の規制だけでなく、日本の地理的条件も制約になっているとの指摘があり、必ずしも簡単な話ではなさそうだ。東京電力フュエル&パワーと中部電力が出資するJERAの小野田聡社長は、「欧州では偏西風が吹き、大陸棚があり、広い土地で日照時間が長いため風力発電が中心だが、日本やアジアにはなじまない。一定量の化石燃料を使い続けることが必要だ」と話す。

中川泉 清水律子 宮崎亜巳 編集:久保信博

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