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〔BOJウオッチャー〕銀行券ルールそろり形骸化、金利低下も安心できず

 [東京 9日 ロイター] 日銀は、金融緩和強化に伴う国債の買い入れ増に伴い、保有する長期国債の残高が年末にはお札(銀行券)の発行残高を上回るとの見通しを示した。財政ファイナンス(財政支援)懸念を払しょくするための自主規制である「銀行券ルール」が事実上形骸化し、金融緩和と財政ファイナンスの境界が曖昧になりつつある。長期金利の大幅低下など金融緩和の副作用とも捉えられる事象もみられ始めており、日銀の政策運営はさらに難しくなりつつある。

 日銀が8日公表した資料によると、現在のペースで銀行券を発行する場合、2012年末の残高の見通しは約83兆円。基金による国債買い入れを月2.1兆円、銀行券需要に合わせた国債買い入れを月1.8兆円のペースで続けると、日銀の長期国債保有残高は12月末に92兆円と銀行券発行残高を上回る。

 もっとも92兆円のうち24兆円は基金による一時的な買い入れで、銀行券ルールの対象である銀行券需要に合わせた買い入れは68兆円にとどまり、銀行券ルールには抵触しない、というのが日銀の公式見解だ。

 しかし専門家の間では、日銀が2010年10月に資産買入基金による「包括緩和」政策を開始した際、財政ファイナンスとみられないために、基金による長期国債買い入れを別枠管理とした時点で、銀行券ルールは事実上形骸化しているとの見方がある。

 また、日銀は包括緩和開始時に、長期国債などの買い入れ対象を年限2年以内としていた。しかし、4月27日の追加緩和の際に、買い入れ対象を3年に延長。3年への延長が可能であれば、4年、5年となし崩し的な延長による国債買い入れも連想可能となる。

 4月末の追加緩和で日銀による2012年度の長期国債買い入れ額は約43兆円と12年度の新規国債発行額44.2兆円にほぼ匹敵する水準となり、日銀がいくら精緻な説明を試みても、外見上は財政ファイナンスと認識される可能性が徐々に高まりつつある。

 白川方明総裁は4月27日の金融政策決定会合後の記者会見で「日銀が財政ファイナンスを行わないという意思は、私も他の政策委員会メンバーも一致している。私どもの言葉を信用して頂きたい。私どもの行動をしっかり監視して頂きたい」と強調した。

 現在、国内債券市場では財政ファイナンス懸念の高まりは特段材料視されていない。むしろ、フランス・ギリシャ選挙を受けた欧州問題再燃で日米独の国債に資金流入が進むなか、長期金利(10年最長期国債利回りJP03210067=JBTC)は0.8%台まで低下している。ここまでの金利低下は、日銀の緩和強化が、結果的に金融機関の投機的な債券売買を支援した側面もありそうだ。

 ただ日銀ウオッチャーや通貨当局者関係者の間では、消費増税法案の動向次第では、欧州ソブリン問題の連想から日本国債が売られるリスクが警戒されている。日米独国債の相関が高まるなかで、何らかのきっかけで欧米発の金利上昇が日本に波及するリスクの高まりを懸念する声は多い。物価上昇率1%を目途として行う強力な金融緩和を進めれば、それだけ財政ファイナンスとみなされる可能性が高まり、ある時点で、低下していた金利が急上昇するリスクが高まるという状況が生まれている。

  (ロイターニュース 竹本能文:編集 石田仁志)

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