November 9, 2012 / 8:12 AM / 5 years ago

〔アングル〕日本企業の東南アジア投資加速、「チャイナ・プラスワン」の取り組み活発に

 [プノンペン 6日 ロイター] 領土をめぐる対立で日中間の緊張が高まる中、中国リスクを回避するために他国に進出する「チャイナ・プラスワン」の取り組みが活発化している。円高を背景に海外事業を拡大する日本企業の間でも、リスクが見込まれる中国への過度な依存を避け、東南アジア各国を代替の製造拠点として活用する動きが次第に強まってきている。ロイターが実施した10月企業調査では、日本の製造業者の約4分の1が中国への投資計画を見直していることが明らかになった。

 日本の財務省によると、日本の対東南アジア諸国連合(ASEAN)の海外直接投資(FDI)の純流出額は昨年、2倍超に増加し、過去最高の1兆5500億円(195億ドル)に達した。東南アジアの魅力は労働力の安さだけではない。人口6億人のASEANでは、急成長を背景に中間層が拡大する中、日本製の自動車や電化製品、サービスに対する需要が高まっている。

 昨年の東日本大震災やタイの洪水も、世界的な供給網のさらなる混乱回避に向けた事業多角化の必要性を認識させる結果となった。日本貿易振興機構(ジェトロ)のハノイ事務所長、山岡寛和氏は「2011年に日本企業は2つの自然災害から教訓を得た」とし、「今年は中国のリスクが認識されており、製造業にとってのリスクシェアリングについて検討を深めるようになった」と指摘した。

 <ASEANの成長> 

 鉄道や道路などインフラ投資が拡大するなか、ASEANは国境を越えた事業の連携を容易にすることを狙い、2015年末までに欧州連合(EU)のような単一市場を立ち上げるための取り組みを進めている。景気が減速する欧米や中国に対して、この地域の経済成長には目を見張るものがある。

 日産自動車(7201.T)はASEANでの販売台数を2017年までに3倍超の50万台とする計画で、2日にはタイに3億5800万ドルを投じ、第2の組み立て工場を建設すると発表。西川廣人副社長はタイでの投資加速について、ASEANとタイの成長を確信しているためと説明した。

 タイの投資委員会(BOI)によると、日本からタイへの投資額は1─9月で3倍近くの約81億ドルとなった。

 インドネシアでも日本からの直接投資の純流出額が過去最高となる勢い。2011年は2880億円で、2010年の410億円から急増した。日本の財務省によると、1─8月の投資額は2370億円の流出超だった。

 政府は先月、インドネシアのインフラ投資に130億ドルを供給すると発表。またホンダ(7267.T)やスズキ(7269.T)が今年にインドネシアで生産能力を拡大する計画を発表したほか、日本の複数報道によるとトヨタ自動車7203.T.が第3工場を検討している。

 <タイの洪水が鳴らす警鐘>

 日本企業は東南アジアの中でもさらに多角化を進めている。これまで地域の製造拠点として有望視されてきたタイが昨年、深刻な洪水被害に見舞われたためだ。マレーシアのペナン州やタイとの国境に近い周辺地域はここ数年で日本勢の投資が相次いだ。フィリピンもレーザープリンターやデジタルカメラなどハイテク関連の分野で日本からの投資を確保している。

 タイの洪水の影響は、カンボジアの製造業を活気付ける結果となった。カンボジアでの賃金は最大でも中国の4分の1で、比較的難易度の低い組み立てが中心となっている。

     カンボジアで経済特区を率いる上松裕士氏(45)は、輸出が低迷し、投資への関心が枯渇した世界的な金融危機の直前に到着し、立ち上げ当初は苦戦を強いられたが、現在は関心を示す企業からの連絡を毎日受け取っていると話す。こうした風向きの転換は、労働コスト上昇と領土問題などで中国の魅力が薄れていることを反映している。上松氏は「中国はかつて世界の工場だった。今はもうそう表現できない」と述べた。

     このプノンペン経済特区は日本からの投資を呼び込むために創設された。365ヘクタールの用地の約3分の1は空き地となっているが、ヤマハ発動機(7272.T)や味の素(2802.T)、ミネベア(6479.T)が確保している。

     例えばミネベアは、プノンペンの経済特区での組み立て作業のために部品をタイから運び、より高度な作業を行うためにまたタイに持ち運ぶ。同社は電化製品に使われる小型モーターを製造しており、カンボジアの生産能力を拡大するため第2工場の用地を購入。来年末には従業員が8000人に達する見込みだ。

     アジア開発銀行のカンボジア担当シニアエコノミスト、ピーター・ブリンブル氏は「日本の投資家を説得するのは困難だが、一旦決めれば動きは素早い」と指摘する。カンボジアで熟練労働者不足や輸送のためのインフラ不備など懸念にもかかわらず、投資を決めている、とした。カンボジアの統計によると、カンボジアでの日本の投資は今年、既に3億ドルに達した。2011年は7500万ドルだった。

     上松氏によると、カンボジアでの製造に対する日本企業の関心が高まったのは、前回に中国で反日デモが広がった2010年。今年9月の新たなデモの広がり後も、カンボジアへの関心は再燃した。

     上松氏は賃金の急上昇と、時に一触即発の労使関係により、中国が日本企業にとっては「悩みの種」にもなっていると指摘する。「中国の若年層はもう工場では働かない、他に多くの機会があるからだ」という。

     日本企業ではタイやカンボジア、ベトナムを単一の製造ラインとして連携させる見方を取り始めている。上松氏は「3カ国に分けることはもはやナンセンス。ここは1つの地域だ」とし、「バンコクは東京で、プノンペンは名古屋、ホーチミンは大阪のようなもの」と話している。

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