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〔焦点〕中国新指導部、改革以外に道なし 国民の不満抑えるほどの高成長見込めず
2012年11月16日 / 03:46 / 5年後

〔焦点〕中国新指導部、改革以外に道なし 国民の不満抑えるほどの高成長見込めず

 [北京 16日 ロイター] 15日に発足した習近平氏をトップとする中国共産党指導部は、経済と政治の改革をゆっくりしたペースで進める意向かもしれないが、指導部を待ち受ける圧力はあまりに大きいため、好むと好まざるとにかかわらず改革を迫られることになるだろう。

 共産党は15日、習近平国家副主席を新たな総書記に選出。李克強・副首相も、政治局常務委員(党内序列2位)に選出された。習近平氏と李克強氏は来年3月に、それぞれ国家主席、首相に就任する見通しだ。

 

 新指導部は、胡錦涛・温家宝両氏に指導部が交代した10年前と比べ一段と豊かになり、自信を強めている中国を引き継ぐ。同時に社会、経済、政治の課題も大きく、舵取りを誤れば党の根幹が揺らぎかねない。

 米ジョージワシントン大学の中国政策プログラムディレクター、デビッド・シャムボー氏は、新指導部にビジョンがなければ「(次回の)第19回共産党大会が開かれることはないかもしれない」としている。

 これは極端な見方かもしれないが、中国専門家の多くは、鉄の支配を続けるつもりならば、大胆な改革実施が必要との見方で一致している。

 

 <貧富の差拡大に国民の怒り>

 

 共産党は急速な成長を実現、国民の多くを貧困から救った。国民は今や、要求を声高に叫ぶようになり、抗議活動も起きやすくなっている。

 中国国民の怒りの種は、枚挙にいとまがない。多くの調査によると、国内の河川は40%以上が深刻な汚染に見舞われている。中国は一部の汚職指数で最下位に近い。約1億5000万人の出稼ぎ労働者は、出稼ぎ先の都市に居住権がないことを理由に、福祉を受けられないでいる。

 こうした問題は中国台頭の課題の1つを如実に示している。経済成長を背景に収入が拡大したが、それに伴い国民は副作用を我慢しようとしなくなっており、指導部の「家父長的」手法への不満も広がっている。

 ハーバード大ケネディースクールのトニー・サイ教授は「国民は子供のように扱われている。(指導部は)国民の声に少しは耳を傾けても、結局は『何がお前のためになるのか、パパが一番良く知っている』ということになる。こうした手法が長続きするとは思わない」としている。

 

 中国は10年前よりもずっと豊かになったが、繁栄追求の過程で貧富の差が劇的に広がっており、平均的な国民は、強い怒りを覚えている。

 国連の報告書によると、中国の約13億人の国民のうち13%は依然として、1日あたり1.25ドル以下で暮らしている。一方、「胡潤」がまとめた中国の富豪ランキングによると、中国には270万人の百万長者、および251人の億万長者(ともに米ドル)が存在するという。

 最近は特に、党幹部が巨額の富を蓄積していることへの不満が強い。

 党幹部の富蓄積は、薄熙来・前重慶市党委書記をめぐるスキャンダルをきっかけに、注目が高まっている。温家宝氏や習近平氏の一族による富蓄積に関する外国メディアの報道を受け、ネットで批判が相次いだ。

 習近平氏は、新総書記として紹介されたあとの演説で、党は汚職問題に取り組まなければならないと表明。また胡錦涛国家主席は先週、最後の活動報告で、汚職は党にとって「生きるか死ぬか」の問題と述べた。 

 <不満抑えるほどの高成長見込めず>

 

 都市部、農村部を問わず、中国国民は一段と反抗心を強め、抗議活動も増加の一途をたどっている。それをあおっているのは、技術革命だ。

 一般国民の多くは今や、インスタントメッセージやブログを自在に使いこなし、デモ活動の写真も簡単にとることができる。情報規制に神経をとがらせる共産党にとっては、ますます頭の痛い問題になっている。

 これまで、貧富の差拡大といった問題を覆い隠してきたのは絶え間ない経済成長だった。だが、急成長が今後も続くのかは極めて疑わしい。

 中国が今後も高成長を維持するためには、投資や輸出よりも消費の拡大に力を入れるなど、経済モデルの転換が必要だが、それには、国有企業の支配力を弱めるといった大幅な政策変更が必要ということになる。

 ニューヨークのコンサルタント会社ロジウム・グループを率いるダニエル・ローゼン氏は「(新指導部が)今すぐに動かなければ、その結果は明確に、すぐに表れる」と指摘。「6─9カ月以内にGDP(国内総生産)の伸びは低下する。ハネムーンは1年ともたない」としている。

 

 共産党は急激な成長を実現することで国民の信認を得てきたが、その成長にも陰りが見え始めている。7─9月期のGDP伸び率は7.4%と7四半期連続で鈍化。成長がさらに減速すれば不満も高まるだろう。

 足元の成長には持ち直しの動きもみられるが、アナリストは依然、成長率は2020年末ごろには10%よりは5%に近くなるとみている。

 そうなれば党が国粋主義や大衆主義に傾くことが懸念される。最近の近隣国との領土問題でも、国民の関心をそらそうする動きがみられる。

 

 <改革には「転機」必要>

 

 理想的には、共産党の新指導部がなるべく早いうちに、政治改革の必要性に気が付くことだ。遅くなれば遅くなるほど、改革は困難になる。

 たとえば、国民が意見を表明できる機会をもっと増やせば、不満の鎮静化につながる可能性がある。しかし問題は、新指導部がこれまで、政治改革への意欲をまったくといっていいほど示していないことにある。

 指導部に近いある匿名の関係者は「安定がすべてに優先される。安定への脅威が生じれば、それはまだ芽のうちに摘まれる」と話している。

 

 指導部がこのように安定維持に固執し、慎重にしか動かないなかでは、何らかの深刻な危機が起きない限りは、改革の加速は難しそうだ。

 1989年には学生を中心とするデモ活動(いわゆる天安門事件)が起きたが、これを受けて当時の共産党指導部では、本格的な政治改革を実行すべきかどうかをめぐって、白熱した議論が交わされた、という。

 ユーラシア・グループのアナリスト、ダミエン・マ氏は「党は問題は認識しているが、実際の行動には何らかの『転機』が必要」と述べた。

 最終的には、党の生存本能が、改革に突き進ませるのかもしれない。

 

 (Jason Subler記者、John Ruwitch記者;翻訳 吉川彩;編集 内田慎一)

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