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〔焦点〕投機が造成した円安の「蜃気楼」、リアルマネーの後押しあるか
2013年3月28日 / 07:27 / 5年後

〔焦点〕投機が造成した円安の「蜃気楼」、リアルマネーの後押しあるか

 [東京 28日 ロイター] これまでの円安相場は投機が造成した「蜃気楼」ともいえる。世界的な金融緩和で生み出された豊富な過剰流動性を背景に投機筋が円安を加速させたが、リアルマネーの動きは乏しい。新年度入り後、日本の機関投資家が外債・外株投資を再開すれば、実体を伴う円安相場が到来する可能性もあるが、足元では外債・外株の大量処分売りに動いている。欧州問題でマーケットは神経質になっており、実需の動きが大きな焦点となってきた。

 

 <円に「暴発注意」のレッテル>

 最近の円相場は、円安方向に進む際のスピードが緩慢なのに対し、円高への揺り戻しは強烈なことが特徴だ。イタリア総選挙への懸念が広がった先月25日、円は全ての通貨に対して暴騰。わずか一昼夜のうちに、円は対ユーロで6.62円、対英ポンドで4.37円、米ドルと豪ドルに対してそれぞれ4円も急騰した。今月25日にも、キプロス懸念を背景に対ユーロで3.77円急伸し、円は「暴発注意」(米銀)のレッテルを貼られた。

 

 東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は「カネ余りのみに依存し、実体のない円安は、些細なショックに弱く、出て行った資金が逆流しやすい」と、最近の強烈な円買い戻しの背後にある構造を説明する。投機の円安が蓄積したところへ、ショックとなるような相場急変や信用収縮が起こると、リーマンショック後のような急速な円買い戻し型の円高が生じるという。

 円安はグローバルなリスクオンの潮流と共に進んできたが、「グローバルなリスクテーク嗜好の背景には過剰流動性の存在がある」(JPモルガン・チェース銀行、チーフFXストラテジストの棚瀬順哉氏)。

 過剰流動性の根源は日米欧による前代未聞の金融緩和であり、実体経済に対して巨大化した金融の存在だ。キプロス問題やイタリアの政局不安など欧州問題が再び浮上するなか、過剰流動性がつくった「蜃気楼」の円安が揺らぎをみせている。

 <注目される本邦投資家の新年度投資>

 

 不安定さを増す円相場の背景には、短期筋の円売りポジションが累積していることに加え、本邦投資家の対外証券投資が円安とは逆向きのフローになっていることもあるとみられる。

 財務省によると、本邦投資家は2月に外国中長期債を約2.5兆円売り越し、資金を日本に回帰させている。外国株については11月から5カ月間で約3.8兆円売り越している。

 アベノミクスは海外短期筋の円売りを誘発・扇動する一方で、本邦投資家に不採算ポジションを解消する好機を与えた。昨年からの円安の潮流で「日本中の投資家から『やれやれ売り』が出た」(機関投資家)という。

 4月の新年度からの投資家動向について、SMBC日興証券の為替ストラテジスト、野地慎氏は「欧米とも金利が低下している中、現状では外貨建て資産を高値掴みするリスクがある。JGB20年債の利回りがまだ1.5%程度ある環境では、外に資金をどんどん振り向けていくことはしないだろう」と予想する。また、外債投資をする場合にもヘッジ付きが想定され、円相場への影響は限定されるという。

 一方で、「年度末に向けたポートフォリオのリバランスが終わり、アロケーションを見直して、外もの(外債・外株)を買っていこうという動きが出てもおかしくない」(前出の機関投資家)との見方も出ている。リアルマネーの動向が、揺れている投機筋のマインドを左右する可能性もあり、日本の機関投資家の新年度の投資姿勢は円相場を占ううえでも大きな注目点となっている。

 

 <依然大きな投機筋のポジション>

 

 投機筋のポジションは依然大きい。モデル系ファンドの動向を移すシカゴのIMM通貨先物市場では、円のネット売り持ち高が7万9993枚と3カ月ぶりの高水準となった前週の9万3763枚から縮小したが、依然高止まり。主要6通貨に対するドルの買い越し額は257億5700万ドルで、昨年7月17日以来の高水準となっている。

 著名投資家のジョージ・ソロス氏は、円の下落を見込んだ取引を通じて、昨年11月以降2月半ばまでに、およそ10億ドルの利益を得たとされる。

 ソロス氏のほかにも、デビッド・アインホーン氏率いるグリーンライト・キャピタル(GLRE.O)やダニエル・ローブ氏のサード・ポイント、カイル・バス氏のヘイマン・キャピタル・マネジメントなども円の下落に賭ける取引で多額の利益を上げたとされる。

 ただ、ヘッジファンドの業績については会計ルールに基づいた開示義務が存在しないため、市場では「宣言主義で言ったもの勝ちというところがある。ソロス氏にしても、2月下旬以降の円の急騰時までポジションを保有していたとすれば、利益が大幅に減っているはず」(外銀)との指摘も出ている。

 

 (ロイターニュース 森 佳子 編集:伊賀大記)

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