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アングル:野生動物の密猟と戦う女性部隊、ジンバブエで貧困脱出にも貢献

[フルングウェ(ジンバブエ) 25日 トムソン・ロイター財団] - ジンバブエ北部の一角で、女性だけの警備隊が演習を行っていた。全員が武装し、野生動物を密猟する男たちを捕まえる準備は万端だ。

 ジンバブエ北部の一角で、女性だけの警備隊が演習を行っていた。全員が武装し、野生動物を密猟する男たちを捕まえる準備は万端だ。写真はジンバブエのワンゲ国立公園のゾウの群れ。2015年8月撮影(2022年 ロイター/Philimon Bulawayo)

真剣な顔つきで演習に集中するシャライ・トゥンヒラさん(25)。軍形式の仕事にはリスクもあるが、ここに所属してからは愛する野生動物を守りながら、慎ましいながらも暮らしの糧を稼げるようになった。彼女が住む地域では、多くの貧しい女性が貧苦にあえいでいる。

「ここでは仕事に従事できるし、自立できる。男に頼って生き延びているんじゃない」とトゥンヒラさん。清掃と野菜販売の仕事でなんとかやりくりする年月が続いた後、2021年に警備隊に入った。

地元の言葉で「勇敢な者たち」を意味する「アカシンガ部隊」は、ジンバブエ初の女性だけの武装した密猟取り締まり部隊として、野生生物保護の姿を変えることを目指している。

男性が支配するこの分野において、アカシンガ部隊は希少な存在だ。

世界自然保護基金(WWF)が2016年に警備隊員570人を対象に行った調査によると、アフリカの警備隊員は5人に1人が女性だ。ただ、女性のチームは南アフリカの「ブラック・マンバス」やケニアの「ザ・ライオネシズ」など、ひと握りしかない。

アカシンガは2017年、オーストラリアの元特殊部隊員、ダミエン・マンダー氏が設立。今では重武装した総勢200人の女性が、3つの地方議会との契約に基づいてロウワー・ザンベジ渓谷にある保護区8カ所をパトロールしている。

<軍スタイルに批判も>

ジンバブエには、アフリカ全体の5分の1に当たる推計約8万頭の象が生息している。しかし、近年は密猟、違法な狩猟、干ばつを主な原因として数が急減した。

ザンビアとの国境に広がるザンベジ渓谷は数千頭の象のほか、ライオンやチーターの生息地だ。

アカシンガのような軍形式の警備隊は、物議を醸してきた。戦闘技術を駆使するため地元住民を傷つけたり、おびえさせたりする一方、密猟の根本原因には対処できない、との批判もある。

アカシンガはマンダー氏が2009年に設立した非営利組織、国際密猟撲滅募金(IAPF)に属する。IAPFはアカシンガについて、衛生環境の向上や雇用創出など、コミュニティーとの関わりを通じて野生生物を守ることに重点を置いていると説明している。

マンダー氏は、IAPFが確かに当初、地域の防衛に焦点を絞っていたと認める。だが、その後は教育や地域の自立を含めた社会問題として自然保護を認識する方向にシフトしており、今では軍形式を巡る批判は的外れだという。

「われわれはかつて、法の執行に極端に集中する組織だった。ヘリコプターやドローン、軍用装備品を持っていた」が、「今ではもう持っていない。かつてほど敵対的ではなくなった」とマンダー氏は話した。

アカシンガは、今でも半自動式やボルトアクション式のライフルを使い続けている。しかし、マンダー氏は密猟者が自動兵器を携えている恐れがある上、女性は最悪の事態に備える必要があると、その理由を説明する。

「男女を問わず、警備隊員が直面するであろう脅威への対処法を訓練しないのは無責任だ。われわれは、隊員を危険な場所に送り込むのだから」とマンダー氏は語った。

女性が警備隊員だと「一般的に言って緊張が和らぐ」とマンダー氏は言う。また、警備隊が地元のコミュニティーと協力することが、地元住民との建設的な関係構築につながっているという。

IAPFによると、アカシンガは2017年以来、発砲せずに300人以上の密猟者を拘束し、ザンベジ渓谷の象密猟を80%減少させることに貢献した。野生動物の目撃記録は約400%増えている。

トムソン・ロイター財団は、この数字を独自に検証することができなかった。だが、地元フルングウェ・ノースのアビリティ・ガンダワ議員によると、動物の目撃情報は増えている。

<経済的な恩恵>

アカシンガが女性隊員に恩恵をもたらしたのは、疑いようがない。隊員には家庭内暴力や児童婚の経験者や、学校からドロップアウトした少女らもいる。

隊員の月収は300―1500ドル相当で、教員の月収が平均120ドルのジンバブエにおいては高給だ。

「きちんとした職場で働けるなんて思わなかった。ほとんどの仕事は、教育を受けた人たちしか就けないから」とトゥンヒラさんは語る。家族は貧しく、彼女は学校を終えることができなかったという。

3歳の娘を持つシングルマザーのマーガレット・ダラワンダさん(24)は隊員になる前、貧しい農民の母に扶養してもらっていた過去を振り返る。「一番必要としていた時に、隊員になるチャンスがやってきた。今では母と子ども、私のコミュニティーの世話ができるようになった」という。今は大学に進むことが目標だ。

マンダー氏によると、アカシンガの隊員の95%は活動地域から20キロ圏内に住んでおり、給与を地元で使うことで、広い地域に経済的恩恵を及ぼしている。

「われわれは、自然保護業界における進歩の灯になりたい。アカシンガの理念は、女性が目的を遂げ、職業人生を歩む礎になることだ」とマンダー氏は語った。

<家庭内暴力から逃げて>

エスター・ゴボザさん(22)は、暴力を振るう夫から逃げ出すために部隊に入った。夫は隊員になるのを阻もうと、申請に必要な彼女の身分証明書を焼いてしまった。

「警備隊は私にチャンスをくれた。夫は訓練キャンプにまで来て私を連れ帰そうとしたが、踏ん張った」と話す。夫とは離婚した。

トレーシー・ムクニさん(32)は、他の働く女性たちを助けたいと思い、警察の職を辞して部隊に加わった。現在は隊員の訓練指導に携わっている。

「彼女たちは現場で、武装した屈強な密猟者に向き合っている。この女性達は野生動物を守るため、勇敢で技術を身につけてなければならない。それに、お互い助け合うことも必要だ」とムクニさんは語った。

(Farai Shawn Matiashe記者)

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