January 30, 2018 / 5:05 AM / 7 months ago

コラム:自動運転車革命、見落とされる「本質」

[26日 ロイター] - 2013年まで、米運輸省が出す書類で「自動運転車」という単語を見かけたことは一切なかった。わずか5年で、これほどまでに状況が変わることを誰が予測しただろう。

 1月26日、2013年まで、米運輸省が出す書類で「自動運転車」という単語を見かけたことは一切なかった。わずか5年で、これほどまでに状況が変わることを誰が予測しただろう。写真は2015年10月、米カリフォルニア州パロアルトで行われたテスラ「モデルS」の自動運転デモンストレーション(2018年 ロイター/Beck Diefenbach)

同省の道路交通安全局(NHTSA)が公表した14ページのメモにこの単語が最初に登場してから5年を待たずに、米上下両院の商業科学運輸委員会が、自動運転車を規制する法案をそれぞれ採択した。運輸省は現在、2016年9月に初版を出した、自動運転車の開発・走行に関する包括的な指針の第3版の作成に取り組んでいる。

1月は交通運輸業界の関係者にとって、わくわくすると同時に忙殺される月だ。

さまざまな新商品が披露される家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(ラスベガス)、各メーカーが新車を発表する北米国際自動車ショー(デトロイト)、学術研究が発表される交通運輸調査委員会(TRB)の年次総会、そして運輸政策の方向性を占う、自動車関連技術者の非営利団体SAEによる産官合同会議という4つの重要イベントが、1月の3週間の間に相次いで開かれる。

自動運転車は、スイスのダボスで行われている世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)でも議題となり、米配車大手ウーバーのコスロシャヒ最高経営責任者(CEO)が、運転手の仕事がなくなるのではないかという懸念の払拭(ふっしょく)に努めた。

2009年に自動運転車の路上実験が始まってすぐに、開発に取り組む事業者は、規制当局がいずれ自動運転車普及の障害になり得ると考え始めた。すなわち、規制の策定が遅すぎたり、厳しすぎたり、州ごとにちぐはぐだったりすると、広範な普及が妨げられるというのだ。

これまでのところ、こうした懸念は現実のものにはなっていない。NHTSAが最初に出した開発・走行の包括的指針は任意のものだった。そして2017年に出された改訂第2版は、初版の112ページから26ページに大幅に縮小された。丸ごと削除された章が複数あったり、「すべき」となっていた表現が「することが推奨される」に置き換えられたりするなど、「これは規制ではない」と、敏感な自動運転車開発者や弁護士に言い聞かせようとしているかのようだった。

NHTSAの現在の指針には強制力がないため、懸念されるようなブレーキにはなっていない。それでも、2017年10月に採択された上下両院の法案は、開発を後押しする強力なアクセルとなる。デザインや設計、車のパフォーマンスに関する州規制を無効とし、年数万台の自動運転車を既存の安全規制の例外扱いとする可能性を示したものだからだ。

自動車メーカーやテクノロジー企業は、穏便な表現のNHTSAの要請に応えて、少しずつ技術の内容を公表しつつある。米アルファベット傘下のウェイモは昨年10月、安全リポートを公表。米インテルが買収した運転支援ソフト会社モービルアイは、「安全な自動運転車を開発し、それを証明する計画」を発表した。自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)も、独自のリポートを公表した。これらのリポートは、程度はさまざまだが、エラーや事故の原因、リスクや責任などの問題について触れている。

責任や過失の問題は、数は少ないものの、これまでに発生した完全自動運転、または部分自動運転の車の事故で生じ始めている。

これまでで最も深刻な、2016年5月に発生した米電気自動車大手テスラの「モデルS」の死亡事故では、NHTSAと米運輸安全委員会(NTSB)がそれぞれ独立調査を行った。だがそのアプローチの仕方は異なっていた。

NHTSAの調査は、「安全性に絡む欠陥があったか」を解明するのが目的で、こうした欠陥は特定できないとの結論だった。一方、NTSBの調査目的は少し異なり、「事故に関する事実を客観的に把握し、考えられる原因を特定すること」だった。その結果、多くの過失が見つかった。

「フロリダ州ウィリストンで発生した事故は、トラックの運転手が道路の先行権を譲らなかったことと、(モデルSの)運転者が自動運転に依存しすぎて注意を払っていなかったことが重なり、トラックの存在に運転手が反応しなかったことが原因と考えられる」というのだ。

NTSBはまた、テスラの運転支援システムは、運転者が長時間注意を払わない状態でいられるようになっていたとも指摘した。

このような事故が起きる中、私自身も個人的考察を深める機会があった。

昨年7月、私が子どもたちをサマーキャンプに送るため、駐車場を歩いていた時のことだった。5歳の息子が突然飛び上がって走り出した。クモを見つけてはしゃいだのだ。私は常日頃から子どもたちに車道から一番離れた場所を歩かせるようにしていたが、ほんの一瞬の間に息子は私の後ろを走り抜け、5メートルほど走って駐車場から出ようとしていた車の前に飛び出してしまった。私は後ろに反って息子を捕まえようとしたが手が届かず、息子とともに車道に飛び出して運転者に手で制止することしかできなかった。

幸運なことに、車のスピードは速くなく、運転者は運転に集中していた。さもなければ、その朝は全く違った展開になっていただろう。そして、その次に起きたことで、考えさせられた。

車が止まると、私は女性の運転者に向かってうなずき「ありがとう」と口を動かした。それに対して彼女は笑顔で返してくれ、私はそれを、私の息子の行動は無邪気なもので、彼女が彼を守ったという意味だと受け止めた。

根本的に私が衝撃を受けたのは、他者の過失を埋め合わせる行動がいかに運転には必要かということだ。

その日事故になっていたら、ある程度私の息子(と私)の過失となっていただろう。しかし、過失を特定するのが常に重要というわけではない。もし逆の立場だったら、私も注意深く運転し、似たような回避行動を取っていたと考えたい。

日常生活の中で、これほど頻繁に死亡事故につながるような過失をわれわれが犯し、他者が気づいてその埋め合わせをしてくれることに頼っているシチュエーションは、他に考えにくい。

これは深い意味での「社会契約」だ。そして自動運転車へのシフトは、この考え方から根本的に離れ、自動車がミスを減らすことを期待する仕組みに移行することを意味する。

他者の過失を埋め合わせるという点において、自動運転車が人と同じ役割を果たせるのか、私はそれほど自信がない。運転の社会契約は、NHTSAの切り口(「このシステムは失敗したのか、それとも設計通りに動いたのか」)や、NTSBの切り口(「この車を動かしているシステムに過失があったのか」)を内包するものだ。

社会が問うべき3番目の切り口は反事実的だ。「もし運転していたのが人間だったら、この事故は起きていたか」というものだ。この切り口は、われわれが運転するたびに、他者の過失や不注意の埋め合わせをほぼ毎回しているという事実を前提にしている。

同時にわれわれは、逆の質問もしてみるべきだろう。人間が事故を起こした時に、「もしコンピューターが運転していたなら、この事件は起きていたか」というものだ。これらの質問に答える困難さは、因果推論という根本的な問題からきている。われわれは、同じ事故において、2つの異なる条件を同時に検証することはできないのだ。

ほかにわれわれが自動運転車で直面する根本的な挑戦は、事故の原因を内面化して理解することができないことだろう。人間が起こす事故はひどい結果を生むことも多々あるが、大体の場合、居眠りしたり、スピードを出しすぎたり、よそ見をしたりと、われわれは運転者にある程度共感できる。だがコンピューターシステムには、人間と根本的に異なる長所と短所があり、将来は理解困難な事故も起きるだろう。

自動運転車が絡む事故の統計が蓄積するにつれ、技術的には説明可能でも、人間なら考えられない理由で起きた事故が出てくるだろう。

この変化を受け入れるには、新たな社会契約が必要だ。

自分の過失の穴埋めを他の運転者に依存する代わりに、開発技術者が過失を減らすことに依存するのだ。

*筆者はスタンフォード大学自動車研究センター事務局長。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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