為替こうみる:これまでの「スピード違反」を調整、今後は米経済次第=三菱UFJMS証 植野氏
足元のドル/円は円安基調が一服しているが、調整局面にある米長期金利や株価の調整と同様に、短期的にドル買い/円売りの巻き戻しが起きているとみている。
足元のドル/円は円安基調が一服しているが、調整局面にある米長期金利や株価の調整と同様に、短期的にドル買い/円売りの巻き戻しが起きているとみている。
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、50ベーシスポイント(bp)の利上げと、6月のバランスシートの縮小開始、今後の具体的な縮小ペースプランが発表され、おおむね予想通りの内容だった。
足元の円安は、米金利が一段と上昇していることでドルが買われて、その裏で円が売られている。これまで米2年債利回りと連動性の高かったドル/円は、今は10年債利回りとの相関性が強まっており、米10年債利回りの上昇がドル/円を押し上げた。
週明けから一段とドル高/円安が進んだが、金融引き締めの加速を米連邦準備理事会(FRB)が示唆しており、日米金利差のさらなる拡大がドル買い/円売りの安心感につながっている。ただ、来月は50ベーシスポイント(bp)の利上げがほぼ織り込まれており、量的引き締め(QT)に関しても5月頃に決定するというのが市場のコンセンサスで、米利上げに関してはいいところまで織り込みが終わっているとみている。
先週、ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事がバランスシートの急速な縮小について言及したことから、フラットニングしていた米国のイールドカーブがスティープニングし、米10年債利回りが上抜けた。これを受けて日米の金利差拡大の面からドル/円が上昇している。
昨日の米連邦準備理事会(FRB)議長の講演のインパクトが大きく、インフレ抑制のために行動を起こさなければならないということが示唆され、利上げペースの加速を想定せざるを得ない状況になった。講演の内容からも、必要であれば50ベーシスポイント(bp)の利上げにオープンな姿勢が確認された。
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は若干タカ派的だった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で、ウクライナ情勢は短期的なインフレリスクと指摘したことを踏まえた上で、米国が景気後退になる可能性は少ないと述べるなど、米経済に対して強気な見方を示し、金融引き締めを行うことを明確にした。
ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システム、SWIFT(国際銀行間通信協会)から排除したことは、マクロ経済に与える影響は大きい。ロシアは輸出ができにくくなり、欧州のエネルギー価格は上昇する。供給制約が強まり、インフレ高進と景気減速の要因となる。
ロシアとウクライナの問題が長引いた場合、一番注目しなければならないのは米連邦準備理事会(FRB)の金融政策正常化プロセスがどうなるかという点だ。現時点では、政策変更を行うような雰囲気はみられていない。むしろ、地政学リスクの高まりで資源高が収束せずインフレ高進が続き、金融引き締めの方向性は変わらないとの見方も多いようだ。
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)でサプライズはなかった。市場は前のめりで金融引き締めを織り込んでいたものの、米連邦準備理事会(FRB)が示唆していたスタンダードな出口戦略に戻った。