コラム:「凶年」の北朝鮮襲う中国株安

コラム:「凶年」の北朝鮮襲う中国株安
 7月22日、北朝鮮が直面するあらゆる圧力のうち、中国の本格的な景気後退ほど脅威的なものはおそらくないだろう。写真は建物に掲げられた金日成(キム・イルソン)国家主席の写真。平壌で2011年10月撮影(2015年 ロイター/Damir Sagolj)
Andray Abrahamian
[22日 ロイター] - 北朝鮮が直面するあらゆる圧力のうち、中国の本格的な景気後退(リセッション)ほど脅威的なものはおそらくないだろう。中国の不況は国境を越えて壊滅的な影響をもたらすことになるからだ。
数年にわたって緩やかに成長してきた北朝鮮経済だが、今年は厳しい1年になるとみられる。その要因としては、エボラ出血熱を懸念した政府による国境閉鎖や、天候の問題がある。そして直近では、中国株の急落で中国人投資家がパニックに陥ったことが加わった。
まずはエボラ要因から見てみよう。北朝鮮は今年3月になってようやく、約5カ月続けてきたエボラ感染の水際対策を正式に解除した。同対策では、外国人観光客らの受け入れ停止のほか、人道支援活動家や外交官らの21日間の隔離措置が取られていた。この間を北朝鮮国内のホテルで過ごせた外国人はほとんどいない。もちろん、すでに現地に投資している外国人以外の入国は厳しく制限された。
これが貿易と観光に直接的な打撃を与えた。貿易と観光は現在回復しつつあるが、エボラ対策の長期的な影響は今後出てくるとみられる。結局のところ、北朝鮮は安全な投資先ではないというこれまでの見方が強まったにすぎないと言える。
エボラ対策が一段落すると、今度は天候問題が頭をもたげ始めた。北朝鮮は、同国政府が過去100年で最悪と称する干ばつに直面している。降水量不足により、今年の北朝鮮経済はすでに電力不足などの打撃を受けている。
同国は電力の大半を水力発電でまかなっている。公式統計の乏しい北朝鮮だが、国連に提出された報告書によれば、2005─2009年には火力発電所6基と水力発電所8基が稼働していた。雪が解けて川の水量が増える晩冬と初春は通常、比較的電力が豊富な時期であるはずだ。ところが今年の春は停電が増え、その時間も長かった。平壌に住む外国人らによると、市の中心部でさえ、電気は燃料で動く発電機にほぼ100%頼る状態だったという(通常の発電機依存度は50%を大きく下回る)。
また、5月から6月頭にかけて同国は田植えシーズンだが、今年は水不足を補うため、「より労働集約的な方法による田植え」に頼らざるを得なかったという。そのため、田植えには例年より長い時間がかかったとみられる。
これも、同国経済にはマイナス要因だ。なぜなら、田植え作業には工場の従業員らも総動員されるため、一斉に何日間も駆り出されることで生産が急停止するからだ。事務職員も通常時間外で田植えに参加するため、疲弊や過労につながっている。
田植えシーズンがようやく終わったところに、今度は中国株式市場や世界的な資源相場の急落という「資本主義の人災」がふりかかることになる。
中国の投資家の80%以上は機関投資家ではなく個人投資家だ。こうした投資家が株安の損失に苦しめば、リセッションには陥らないにせよ、景気の減速につながる可能性がある。中国の個人消費は落ち込み、中小企業は売上高の減少に直面するだろう。北朝鮮と国境を接する中国北東部では、こうした企業は北朝鮮の労働力を呼び込むと同時に、北朝鮮での工場建設にも関心を持っているだろう。
また現在、世界の商品市況は悪化している。鉄鉱石価格は6年来の安値水準となり、1日で10%下げる日もあった。鉄鉱石は北朝鮮の輸出全体の1%程度を占めるとみられる。その他の鉱物や鉱物燃料で同国輸出の30─40%を占めるだろう。
北朝鮮の主要輸出産品である石炭の国際価格は、今年すでに下落傾向にあった。中国株の下落を受け、こうした商品価格も当面は弱含みが続くと考えるのが自然だろう。そうなれば、北朝鮮経済にとってはさらに打撃となる。
中国経済が今後どうなるかは誰にも分からない。悲観論者たちは、人口動態の変化による構造的変化や、銀行に巨額の不良債権をもたらす不動産バブルの崩壊を懸念する。ただ多くのアナリストの見方は、株安は短期的な市場の調整にすぎないというものだ。
一方で、確かなことが1つある。隣の大国の市場急落を目の当たりにしている北朝鮮の経済政策立案者らは、厳しい1年を覚悟するしかないということだ。
*筆者は豪マッコーリー大学の特別研究員で、北朝鮮人の職業訓練などに取り組むシンガポールの非営利組織(NPO)「チョソン・エクスチェンジ」の理事を務める。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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