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コラム:米雇用統計は重視され過ぎ

コラム:米雇用統計は重視され過ぎ
 11月6日、ウォール街が毎月の非農業部門雇用者数に取りつかれているというのは、実に愚かな構図だ。米カリフォルニア州で昨年10月撮影(2015年 ロイター/Lucy Nicholson)
Robert Cyran
[ニューヨーク 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ウォール街が毎月の非農業部門雇用者数に取りつかれているというのは、実に愚かな構図だ。10月に27万1000人増加したことは、仕事を見つけた人たちにとってみれば重みがあるのは間違いないが、投資家が考えているほどの意味は持たない。
非農業部門雇用者のデータは変動が大きく、すぐに改定される性質があり、経済の健全度を探る指標としては筋が悪い。重要であるのは、トレーダーやアナリスト、報道関係者がひときわ注目するからという理由がほとんどすべてだろう。
米国の雇用トレンドは過去数年にわたり上向きで推移し、2015年中は月間平均で約23万人の新規雇用が生まれた。2010年に10%前後だった失業率は、足元で5%まで下がった。
ただし短期的な数字は、天候や季節、一時的な雇用などの予測不能な要素次第で左右されるため、信頼性に欠ける。労働省の統計はこれらの変化を常に補完できるわけではなく、上下双方におよそ10万人の誤差が生じてしばしば後で改定される。
また月次ベースの雇用の変動は、米経済の規模に比べれば些細なものだ。米国の総人口は約3億1900万人で、労働力人口はこのうち1億5000人程度を占める。
その上に非農業部門雇用者数は、経済の動きを見通す際にはほとんど役に立たない。雇用者数は2007年終盤の景気後退開始時期まで増加していたし、景気回復が始まった2010年以降も数カ月にわたって減少を記録した。
もちろんこのデータにはそれなりの価値もある。雇用増は景気拡大局面、雇用減は縮小局面を示すことが多いので、経済の現状をおおまかに把握することができるのだ。経済の天気が雨かどうか、窓から指を出して確かめることに似ている。その意味で10月は、「晴れ」だったように見受けられる。
それでもウォール街は、息をひそめて次回の雇用統計を待つのだろう。雇用と物価上昇率の関係が希薄であるにもかかわらず、債券投資家は、米連邦準備理事会(FRB)が利上げするかどうかの手掛かりを探るかもしれない。トレーダーは雇用統計に基づいてポジションを定め、報道関係者は雇用統計の数字から記事のストーリーを展開させていくかもしれない。しかしより合理的な世界であるなら、月次の雇用者数はその価値に相当するもっと低い扱いになる。
●背景となるニュース
*米労働省が6日発表した10月の非農業部門雇用者数は前月比27万1000人増加し、2014年12月以降で最大の伸びを記録した。
*失業率は5%と、2008年4月以来の低水準になった。
*労働省の発表は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。
1.usa.gov/1pZUoBm
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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