7月7日、他の欧州連合(EU)加盟国から300万人以上の市民を受け入れ、国内での労働を認めている英国の企業は、EU離脱後にEU出身の社員がどうなるのか見通せないという不安を抱えている。EU残留を訴えるデモで風船をくくりつけられたチャーチルの銅像。2日撮影(2016年 ロイター/Neil Hall)
[ロンドン 7日 ロイター] - 英国は他の欧州連合(EU)加盟国から300万人以上(人口の5%相当)の市民を受け入れ、移動の自由を定めたEUルールに基づき、国内での労働を認めている。
しかし英企業は、英国のEU離脱後、EU出身の社員がどうなるのか見通せないという不安を抱え、移民専門の弁護士を雇って彼らに助言したり、英居住資格の要件を満たす社員には申請を急ぐよう求めたりしている。
多くの英政治家は、英国で暮らす移民の法的権利を保証するよう求めている。一方、キャメロン首相の有力な後任候補に浮上したメイ内相などは、EUに離脱の意思を正式に伝えてから2年間の交渉期間に決めるべき問題だとの立場だ。
EUからの労働者に依存する企業は、先行き不透明感が社員に苦痛をもたらし、採用計画に影を落としていると話す。
バーミンガム郊外で高級車マセラッティや日産自動車などの自動車部品を製造するメタル・アセンブリーズは、120人の社員のうち3分の1がポーランドなどからのEU移民だ。スチュアート・フェル会長は「彼らは仕事が必要だからここにいる。当社にも労働力が必要だ」と話す。
フェル会長は「最大の懸念は彼らが歓迎されていないと感じることだ。政府は今後2年間何も変わらないと言うが、彼らはここで子供を持つ、家を買うといった決断を常にしている。人生の節目を保留することはできない」と話す。
EUパスポートがあれば、審査なしに英国で生活したり働いたりできるため、英国の居住権を証明する法的書類を申請する人はほとんどいない。また、5年以上滞在すれば、永住権を取得する資格が得られるが、英国がEU内にとどまる限りは特に必要のない手続きだった。
<先行きは誰にも分からず>
移民問題が専門のフラゴメン・ワールドワイドの弁護士でマネジャーのシャーロット・ウィリス氏は、新進企業、大手企業、大学を含めた法人顧客からの問い合わせが急増したと話す。また、英国でしっかりと身分を確立したい一般市民からの電話も多いという。
ウィリス氏は「誰もが知りたい大問題は、これから何が起きるのかということだ。しかし今はわれわれも答えようがない」とこぼした。
英国の大学が所属するユニバーシティーズUKによると、同国の大学職員の約15%は他のEU諸国から来ており、EU離脱による資金面の影響も懸念されている。2014─15年には研究助成金や委託研究の14%以上をEUが占めていたからだ。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)は職員に電子メールを送り、EU離脱によるEU資金支援プログラムへの影響を精査していると伝えた。
クレイグ・カルホーン学長は「LSEは学術研究でも専門サービスでも、英国人以外の職員の努力なしには立ち行かない」と記した。またLSEは、EUから新たに採用予定の研究者に対し、手続きを急ぐよう連絡したという。
<ここには居られない>
英国の農場は毎年5万─6万人の季節労働者を雇い入れ、果物の収穫や花の摘み取り、野菜の植え付けなどを行っている。農業人材サービス会社HOPSのジョン・ハードマン氏は、彼らが来なくなれば、代わりを見つけるのは困難だと指摘する。
同社は主にルーマニアやブルガリアからの年間約6000人の季節労働者をあっせんしているが、「途方もないダメージだ。労働者は来年も職があるのかと心配し、生産者は次はどこから働き手が来るかと気をもんでいる」と語った。
将来のルールがどうなるにせよ、EU労働者の多くはすでに変化を肌で感じているようだ。
ロンドンのファストフード店で働くスペイン人のダニエル・リンコンさんは、働きながら英語を磨くために7カ月前に移り住み、最低4年間は滞在する計画だった。
しかし「人々が自分を見る目が変わったと感じる」と語り、自身も3人のスペイン人のルームメイトも今は居住資格を申請するつもりはないという。「今すぐは状況が変わらなくても、2年後にはどうなっていることか。こうなったら、われわれも立ち去るしかない」と語った。
記者:Karin Strohecker 翻訳:長谷川晶子 編集:加藤京子
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