12月20日、トルコ首都でロシア大使が射殺された事件は、両国の独裁的指導者を一層強く結びつける可能性がある。写真はロシアのプーチン大統領(左)とトルコのエルドアン大統領。イスタンブールで10月撮影(2016年 ロイター/Osman Orsal)
Sarah Hurst
[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トルコの首都アンカラで19日、ロシア大使が射殺された事件は、両国の関係に深い傷を負わせなかったのかもしれない。それどころか、共通の仮想敵の存在は、両国の独裁的指導者を一層強く結びつける可能性がある。
2015年11月にトルコ軍がロシア軍機を撃墜した事件はロシアを怒らせ、同国はトルコ製品の輸入を禁止した。しかしトルコのエルドアン大統領はその後謝罪し、制裁は解除された。大統領は最近、トルコ軍がシリアでロシアが支援するアサド大統領の打倒を狙っていると発言したが、この発言も撤回している。
アンドレイ・カルロフ駐トルコ大使の射殺に対する両国の反応は、驚くほど足並みがそろっていた。両国の政治家はすぐさま、銃撃の狙いは両国関係の分断だと非難。トルコ・メディアは犯人について、7月15日のエルドアン大統領に対するクーデター未遂事件後に失職した警察官だと伝えている。犯人もその場で射殺された。クーデターの際には、米国に事実上亡命しているトルコのイスラム指導者ギュレン師(75)を支持したとして数万人のトルコ人が拘束あるいは更迭されている。トルコ側は今回の銃撃犯を「ギュレニスト」と呼んだ。これは犯人が西洋諸国の後ろ盾を得ていたことをあからさまに示唆するものだ。トルコ国営メディアは既に米中央情報局(CIA)の関与を指摘している。
強い経済関係で結ばれるトルコとロシアにとって、外部の犯人は好都合だ。ロシアはトルコから食品や消費財を輸入し、トルコ人の建設労働者に多くを頼っている。ロシア人にとって、トルコは人気の旅行先だ。ロシアの天然ガスを黒海経由でトルコに供給するパイプライン「ターキッシュ・ストリーム」建設計画の再開も視野に入っている。
その上、両国はともに経済に問題を抱えている。産油国のロシアは石油安と国際制裁に直面。トルコリラは7月のクーデター未遂以来、対ドルで20%超下落し、エルドアン大統領は市民に外貨をリラに両替するよう促している。トルコの国内総生産(GDP)は算出方法の変更により最近20%も増えたように見えるが、第3・四半期は前年同期比で1.8%減少し、7年ぶりのマイナス成長となった。
ロシア、トルコ、イランの外相は20日、モスクワでシリア和平について協議した。ロシアとイランの支援を受けたアサド政権軍によるアレッポ制圧を、トルコは渋々ながら受け入れた。欧州連合(EU)など西側の意図に反し、ロシアとトルコの絆は強まる公算が大きい。
●背景となるニュース
*トルコの首都アンカラで19日、ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が銃撃され死亡した。犯人は警察に射殺される前、銃撃はアレッポを巡るロシアの行動に対する報復だと叫んでいた。
*トルコのエルドアン大統領は同日、プーチン・ロシア大統領と電話会談した後、「これは挑発行為であるとの認識でプーチン氏と一致した」と述べ、「連帯を強化することで合意した」と付言した。
*プーチン大統領は政府高官らとの会談で「殺人犯をだれが操っていたのか突き止める必要がある」と発言。アンカラに捜査員を送り、トルコ当局と協力させる意向を示した。
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