3月15日、安倍晋三首相は、官邸で記者会見し、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を正式に表明した。同日撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 15日 ロイター] 安倍晋三首相は15日夕の記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を正式に表明した。日本の主権は断固として守るとしたうえで、国益を踏まえて最善の道を実現するとの決意を示した。
政府は同時に、TPP参加の経済効果として、実質国内総生産(GDP)を3.2兆円押し上げるとの試算を発表。交渉参加の意義を強調した。
安倍首相は「TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みであり、アジア太平洋地域の新たなルールを作り上げることは日本の国益となるだけでなく世界に繁栄をもたらす」と指摘。「今がラストチャンスだ。この機会を逃せば日本が世界のルール作りから取り残される」と参加表明の理由を説明した。
さらに、「いったん交渉に参加すれば、必ず重要なプレーヤーとして新たなルール作りをリードできると確信している」とした。
TPP参加の日本経済への影響については、「すべての関税をゼロとした前提でも、日本経済には全体でプラス効果が見込まれる」と指摘。「今後の交渉でセンシティブ品目への配慮などにより、悪影響を最小限にとどめるのは当然だ」とし、投資活性化など今回の試算に含まれないプラス効果も想定されると説明した。
具体的な交渉について安倍首相は「国民皆保険制度を守るなど、5つの判断基準を掲げている。交渉の中でしっかり守っていく」とした。聖域が守れない場合は交渉から離脱すべきとの決議を自民党が行ったことに関しては「われわれは国益を中心に交渉する。離脱するかどうかを言うのは国益にも反するので適切でない」と述べた。さらに「日本の主権は断固として守り、国益を踏まえて最善の道を実現する」との決意を示した。
国内農業への支援策については「強い農業、攻めの農業、多面的機能を守るための対策・メニューについてはしっかり議論していきたい」と語った。
<甘利氏がTPP担当相に、農林水産業の生産は4割減>
TPP交渉参加に関する総合調整を手掛ける担当相に就く甘利明経済再生相は、記者会見で「首相の決断は様々な国民の声を踏まえ、国益を総合的に判断したもの。交渉参加は成長戦略実行の第一弾となる」と強調した。
甘利担当相が発表した政府の統一試算によると、相手国の関税撤廃などで輸出は2.6兆円増加するが、輸入も増加するためGDPを2.9兆円押し下げる。輸出増が生産の増加などを通じて所得を増やすとして消費が3.0兆円増え、投資も0.5兆円増加する。差し引きの増加額は3.2兆円。実質GDPを0.66%押し上げる。
TPPへの参加で大きな影響を受ける農林水産業の生産減少額は3.0兆円と予測した。コメや砂糖など試算対象33品目の生産合計額は7.1兆円で、4割超の国内生産が減少する計算となる。食糧自給率はカロリーベースで39%から27%程度へ低下する。
甘利担当相は試算について「中長期の効果を示した。幅を持ってとらえる必要がある」としながらも、差し引きすればGDPを押し上げることから「経済全体へのプラス効果がある」と指摘。「経済連携が(参加した国の)GDP押し上げ効果があることは、日本や他国の発展の歴史を見れば、理解されるものだ」として、関税撤廃効果のみに着目した今回の試算以上の効果が生じることに期待を示した。
さらに担当相は「太平洋を中心にそれを取り巻く国々が、太平洋を『内海』として自由に行き交うことがスタートする。極めて魅力的な話」だとして、TPPが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)やアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)など、今後の経済連携が「発展する際のたたき台になる」側面も強調した。
(ロイターニュース 石田仁志、基太村真司;編集 伊賀大記)
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