コラム:米出口政策の本格化で日本金利に上昇圧力、株は分かれ道に

ロイター編集
コラム:米出口政策の本格化で日本金利に上昇圧力、株は分かれ道に
5月29日、米超緩和策の出口戦略発動が意識される中、米長期金利が2.1%台に上昇している。写真は3月、都内で撮影(2013年 ロイター/Shohei Miyano)
田巻一彦
[東京 29日 ロイター] 米超緩和策の出口戦略発動が意識される中、米長期金利が2.1%台に上昇している。この動きは、世界的なリスクオン心理の広がりに伴うマネーシフトを誘発するとともに、米国債下落で生じる損失を保有日本国債の利益で穴埋めしようとする国内銀行勢の取引を発生させる可能性がある。
米量的緩和第3弾(QE3)の出口がはっきりするにしたがって、日本の長期金利の水準が次第に上昇すると予想する。
<出口戦略意識され、米長期金利が2.1%台に上昇>
28日のNY市場で、10年米国債利回りは2012年4月以来の2.172%まで一時上昇した。
28日に発表された3月米20都市住宅価格指数が前年比で約7年ぶりの上昇率となり、5月米CB消費者信頼感指数が2008年2月以来の高水準となったことで、ダウ<.DJI>が最高値を更新。米連邦準備理事会(FRB)によるQE3の出口戦略発動への思惑が強まったことが背景にある。
言い換えれば、市場に広がり出したリスクオン心理が、かなり鮮明になりつつあるということだろう。
<リスクオン進展なら、米独日国債からマネー流出へ>
NY市場でリスクオン心理が台頭してくると、その影響は世界のマーケットに波及する。リスクオフの波が大きかった時に、米国債とともに安全資産として買われてきた独国債や日本国債は、リスクオンへの動きが広がるとともに、調整売りの対象になるだろう。
米独日の国債市場から流出したマネーは、米株式市場やその他の主要国の株式市場に流入する可能性が高い。中国経済との連動性を強めてきたコモディティ市場が、中国経済の調整色の強まりで上値が重く、マネーの受け皿として米株式市場など主要国の株式市場が、より意識されていることも影響しているようだ。
<意識される米長期金利2.4%、邦銀が損失穴埋めのため日本国債売りも>
米長期金利が2.1%台に乗せたことで、次の水準として2.4%が市場関係者に意識されているという。米経済指標がこのまま堅調さを取り戻していく軌道に乗れば、米長期金利の上昇スピードが速まり、予想外に短時間で2.4%台まで上昇するシナリオの実現性が高まる。
そのケースでは、米国債運用の比率を高めてきた一部の国内銀行勢にとって、やっかいな展開になる。「黒田緩和」の推進で、2年後に2%の物価上昇が実現すれば、日本の長期金利も1%以下の水準ではいられない。
それを見越して、日本国債の一部を売却し、米国債投資を増やす戦術を採用してきた国内銀行が複数ある。そうした銀行勢は、米国債が短期間で下落(利回りは上昇)すると、含み損を抱え込むことになる。
その規模が、ある一定以上の大きさになった時、リスク管理上の必要性から、利益の出ている日本国債を売却し、一定の利益を確保するという行動に出る可能性が高まる。
<米出口戦略の本格化、日本の長期金利に2つのルートから上昇圧力>
アベノミクスの効果で、円安と株高が進行し、景気回復へのマインドが高まることで、日本の長期金利も水準訂正の動きを始める──というこれまでの東京市場の値動きに、新たにQE3の出口を探る動きが、足元で加わった。
日本の長期金利には、これまで指摘したように新たに2つのルートから、上昇圧力が加わりやすくなったと指摘したい。
市場では、日経平均<.N225>が1万5000円台の時に長期金利が1%になっていても、特に違和感はない、という声が多くなっている。ただ、そこにはQE3の出口をFRBが本格的に模索する動きは、ほとんど盛り込まれていない。
米長期金利が2.4%を目指して上昇し始めれば、日本の長期金利も1.2%台まで上昇する可能性が、かなりあるのではないか。
<東京株式市場を待ち受ける大きな分かれ道、成長戦略が左右>
足元の東京市場では、日経平均の上値追いが一服している。今後、長期金利が上がり始め、それが株価の上値を抑えるのか、それとも米国発のリスクオン心理の台頭を背景に、再び上昇トレンドを取り戻すのか、大きな分かれ道が待っている。
私は、どちらの道に行くかを決める大きな要因として、6月に政府がまとめる成長戦略に対する海外勢の反応に注目したい。米マクロ系ヘッジファンドを筆頭に、東京株式市場に占める欧米投資家の存在感は、相当に大きい。
もし、彼らが失望するなら、米国発のリスクオン相場に日本株が乗り切れなくなる危険性がありそうだ。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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