6月19日、日銀の黒田東彦総裁は会見で、輸出や生産への強気の見通しを維持し、その根拠として世界経済の底堅さを指摘した。だが、日本にとって最大の輸出先である中国の輸入減少が止まらなければ、日本の国内総生産(GDP)も伸び悩みに直面しかねない。写真は、都内の建設現場、5月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)
田巻 一彦
[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日の会見で、輸出や生産への強気の見通しを維持し、その根拠として世界経済の底堅さを指摘した。だが、日本にとって最大の輸出先である中国の輸入減少が止まらなければ、日本の国内総生産(GDP)も伸び悩みに直面しかねない。
実際、4─6月期GDPは小幅プラスにとどまるとの見方が市場では出ており、政府・日銀の高めの成長見通しは、早くも試練の時を迎えそうだ。
<弱かった5月実質輸出と強気の日銀総裁>
足元で円安が進んでいるものの、輸出増勢の流れは一向に見えてこない。日銀が17日に発表した5月の実質輸出は前月比5.0%低下と大きく落ち込んだ。
だが、黒田総裁は「世界経済は緩やかに回復していく」「そういうことを踏まえると、輸出は振れを伴いながらも増加していくと思う」との強気の見方を示した。
ところが、この強気の見方に対し、市場では異論も少なくない。あるマクロ分析を専門にする関係者は「中国の輸入が減り続けており、日本から中国への輸出が大幅に増える兆しがない。輸出と生産は当面、伸びが期待できないだろう」との見方を示す。
<減少続く中国の輸入、日本の生産に大きな重し>
実際、5月の中国の輸入は前年比マイナス8.7%と5カ月連続の減少となった。国内での生産調整の影響が、輸入減として色濃く出ており、日本の輸出にとって大きな重しとなっている。
こうした状況の中で、4─6月期の生産は前期比マイナスになるとの予想が市場で広がりつつある。輸出と生産の「元気のなさ」は、日本経済から活気を奪う要因として、次第に多くの市場関係者の注目を集めることになるだろう。
<元気な非製造業、ネット系ビジネスに活気>
他方、1─3月期のGDP2次速報値や法人企業統計のデータを合わせてみると、非製造業の設備投資は、政府・日銀の想定を超えて強くなっている。背景には、正規社員を中心にした賃上げ効果による所得環境の好転で、個人消費に堅調さが見えている点がありそうだ。
中でも、インターネットを利用した通販は売上高が右肩上がりで、物流施設の増強など関連する設備投資に盛り上がりがみられる。黒田総裁もこの日の会見で「確かに非製造業の設備投資が伸びているということは、内需主導の経済成長というものとひょうそくがあっている」と指摘した。
<4─6月期GDP、0.5%前後の予想も>
民間エコノミストの中には、弱い生産・輸出と強い設備投資などとの綱引きで、4─6月期GDPは前期比・年率で0.5%程度の低い伸びになるのではないかとの予想が出てきている。
もし、この程度の成長にとどまるなら、政府の1.5%、日銀の2.0%という15年度の成長見通しを達成するのは、かなり難しくなる展開も予想される。言い換えれば、第1四半期からいきなり強い「逆風」にさらされるということだろう。
物価面から見ても、0.5%程度の潜在成長率と同程度の成長にとどまれば、需給ギャップがプラス方向にシフトし、物価を押し上げて行くという日銀のシナリオからもかい離しかねない。
政府としても、16年夏の参院選に向け、高い経済成長を示して与党への支持を高めたいというシナリオに水を差されかねない。
<強い内需と弱い外需>
政府・日銀の想定にとって、大きなリスクは輸出と生産であり、そのカギは中国経済が握っていると考える。黒田総裁は会見で、輸出について強気の見通しを示しつつ「十分に注視していきたい」とも語った。
もし、日銀の想定から外れて、輸出の不振と生産の伸び悩みが夏場にかけて継続するようなら、政府・日銀の経済見通し達成に「黄信号」が点灯し、それが「赤信号」に変わるリスクが増すだろう。
15年度経済は、強めの内需の足を外需が引っ張ることになるのかどうか、そこに焦点が当たることになると指摘したい。
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