6月21日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスから格付けを引き下げられた世界の大手金融機関15社が今、成すべきことは何だろう。写真は昨年8月、ニューヨークで撮影(2012年 ロイター/Mike Segar)
By Antony Currie
[ニューヨーク 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスから格付けを引き下げられた世界の大手金融機関15社が今、成すべきことは何だろう。なるべく速やかに資金を借りに行くことだ。
かつてなら拙速な行為に見えたかもしれない。結局のところ、格下げは借り入れコストの上昇を意味するはずだから。しかも格下げされた銀行の大半はキャッシュを必要としていないだろう。しかしムーディーズの上を行くには、素早く市場に戻るのが一番の方法だ。
第一に、市場がムーディーズの決定をやきもきしながら待っていたにもかかわらず、同社が結果を出したのはかなり遅かった。競合するフィッチ・レーティングスとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は昨年、格付け見直しを終えていた。しかし債券保有者はそれよりずっと前に行動を起こしていた。実質的にすべての大手金融機関に対して高い金利を要求している。例えばモルガン・スタンレーの5年債は米国債より約3.9%ポイントも高く、危機前のスプレッドを大幅に上回っている。
しかも銀行はその前にバランスシートの立て直しによるリスク低減を余儀なくされていた。レバレッジ比率は低下し、普通株式の比率は上昇していている。一方、大半の銀行は危機により露わになった他の弱点にも既に対処済みだ。少なくとも米銀はコマーシャルペーパー(CP)への依存度を大幅に減らしている。例えばモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカはCP残高がゼロだ。そして多くの銀行はレポ市場での資金調達と格付けとの関係を断ち切っている。
ムーディーズの格下げが影響する部分であっても、あまりにも備えがおろそかな銀行でない限り、大した痛みは感じないはずだ。モルガン・スタンレーの場合、格下げが2段階引き下げられて「Baa1」となったことで最大67億ドルの追加担保差し入れを迫られるが、過剰流動性を約1800億ドルも抱えているため、ほとんど問題はない。モルガンはなりふり構わず追加の資金調達に動く必要がないわけで、これは同業他社も同じだ。その上、ムーディーズが2月に格付けを見直すと発表して以来、モルガンは格下げで打撃を受けそうなデリバティブ取引の大半について再編、あるいは再交渉をしてきた。
ムーディーズによる格下げが意外だったケースでさえ、対処は可能に見える。クレディ・スイスは3段階の格下げに見舞われたが、それでも「A1」であり、強固な水準だ。つまり、格下げのニュースを一蹴するのに、市場に出て行って起債する以上の方法があるだろうか。
<背景となるニュース>
●ムーディーズは世界的な金融機関の格付けを数カ月間かけて見直した末、15社について格下げを発表した。クレディ・スイスは3段階引き下げられてA1となった。10行の格付けは2段階、4行は1段階、それぞれ引き下げられた。
●ムーディーズは短期債務格付けについても、バークレイズ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーを持ち株会社レベルで、バンク・オブ・アメリカ、シティバンク、モルガン・スタンレー、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドを事業会社レベルで、それぞれ引き下げた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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