コラム:窮地のキプロス、「巨大ガス田」は救世主か

コラム:窮地のキプロス、「巨大ガス田」は救世主か
3月20日、キプロス沖にはドイツのガス需要3年分に相当する約7兆立方フィートの天然ガスが眠るとされるが、銀行預金課税で揺れる同国がガス収入を財源として当てにするのは時期尚早だろう。写真は2011年11月、同国沖のガス田施設で撮影(2013年 ロイター)
By Kevin Allison
[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] 今のキプロスに楽観的な人が残っているとすれば、それはおそらく、同国沖で最近発見された巨大なガス田が理由だろう。しかし、欧州連合(EU)による支援策の条件となっている銀行預金課税で揺れる同国が、資源ブームを当てにするのは時期尚早と言える。
米掘削会社ノーブル・エナジーは、キプロス沖で約7兆立方フィートの天然ガスを発見したとしている。それが事実だとすれば、かなりの規模だ。国内需要を当面賄うのには十分な量で、ドイツのガス需要の3年分にも相当する。さらに、わずか30キロほどしか離れていないイスラエル側で巨大なガス田が見つかっていることから、さらなる発見も今後あり得るだろう。キプロスのガス埋蔵量は最大60兆立方フィートに上るとの楽観的な見方もある。
しかし、その規模や埋蔵範囲の確認にはさらなる精査が必要だ。
7兆立方フィートという推定だけでも、現在の欧州の輸入価格で試算すれば、最大800億ドル(約7兆6700万円)の価値があり、キプロスの国内総生産(GDP)の3倍超に相当する。この数字に財務当局などは興奮するだろうが、一方で無意味な皮算用でもある。全てのガスが採掘可能ではないためだ。また、実際に輸出できるようになるまでには時間と資金も必要だ。
キプロスの天然資源会社の責任者は1月、ロイターに対し、2019年までに液化天然ガス(LNG)を輸出できるようになりたいと語った。しかし、それもまた楽観的だ。LNGプロジェクトに時間と資金がかかるのは歴史が証明している。規模にかかわらず1つのプロジェクトで70億─150億ドルかかる可能性があり、同国の対GDPでは相当の比率になる。
欧州本土への海底パイプライン敷設は比較的安価に済む方法かもしれないが、政治的に問題をはらんでいる。1970年代からキプロス島の北半分を占領するトルコが、キプロス沖のガス田開発に反発しているためだ。何らかの妥協がなされない限り、民間企業が開発に着手することは難しいだろう。
いずれにしても、キプロスやその債権国がガス資源を窮地脱出のため救命具として当てにするのは時期尚早だ。それは、地中海のとらえ所のない資源を財務予測に盛り込んでいるロシアの政府系天然ガス企業ガスプロムなど部外者にとっても同じことだ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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