3月9日、資源国の間で海外企業に門戸を閉ざそうとする「資源ナショナリズム」が広がり、鉱山会社はアフリカの危険地帯など政治的リスクの高い地域に進出する以外に選択肢が少なくなっている。写真はアフガニスタンの金鉱山近くを飛ぶ米軍のヘリコプター(2012年 ロイター/Omar Sobhani)
[トロント/メルボルン 9日 ロイター] インドネシアが海外企業による国内鉱山への投資を制限する方針を打ち出したことは、海外での鉱山開発を競っている世界の主要鉱山会社にとって大きな痛手となる。
だが、今のところインドネシアから撤退しようとする動きは見られない。その理由は、資源国の間で海外企業に門戸を閉ざそうとする「資源ナショナリズム」が広がり、容易に事業展開できる投資先が他に見つけにくくなっているためだ。
「資源ナショナリズム」はこの10年で、インドネシアや南アフリカなど安定した新興国からオーストラリアやカナダなど先進国にも広がり、鉱山会社にとって市場参入のハードルやコストが高くなっている。
インドネシアが海外企業による鉱山への出資比率を49%に制限する以前にも、課税強化や開発規制の動きが相次ぎ、高収益セクターのリターンを圧迫している。
その結果、鉱山会社はアフリカの危険地帯など政治的リスクの高い地域に進出する以外に選択肢が少なくなり、ブルキナファソ、コンゴ、モーリタニアなど、極度にリスクの高い国にも目を向けざるを得なくなっている。
鉱山業界に影響を及ぼす政治リスクや規制変更に関する著書がある、トロントの法律事務所ノートン・ローズの弁護士アブリル・コール氏は「鉱山業界にとって、これは間違いなく最大の頭痛の種だ」と指摘する。
メタル価格の高騰などを追い風に高収益を上げている鉱山会社は、歳入拡大を目指す各国政府のターゲットとなっている。選挙が近づけば、どの国の政治家も国民の支持を拡大するため、鉱山会社への課税強化やロイヤルティー引き上げによって収入拡大を図ろうとする。
オーストラリア政府は、石炭および鉄鉱石鉱山の利益に30%の税率で課税する計画。金や鉄鉱石を産出するカナダのケベック州も、2010年に鉱山会社に対する増税を実施した。一方、カナダ政府はBHPビリトンによる肥料大手ポタッシュ買収を阻止している。
<鉱山会社は依然高収益>
アーンスト&ヤングは昨年、鉱山会社にとって様々な形の資源ナショナリズムが最大のリスク要因だと指摘。税やロイヤルティーを通じて鉱山会社への締め付けを強化あるいは計画している国は少なくとも25カ国に上ると明らかにした。
そうした動きは、ペルー、ザンビア、ガーナなど小規模な国にも広がっており、ポーランドは先週、銅や銀の価格と連動した新たな鉱山税の導入を承認した。
鉱山業界の投資家やコンサルタントは、インドネシアなどによる新たな規制の導入は投資のリバランスを招く可能性があるが、大幅な投資縮小にはつながらないとみている。
鉱山会社にとってリスクが高まっているものの、資源価格が高水準にあり、利益も順調に拡大しているためだ。
鉱山業界を顧客としている豪パースの法律事務所、ギルバート+トービンのマイケル・ブラキストン氏は「資本は長期的に好ましい投資先に向かう。モザンビークやボツワナなどは門戸を開放している」と述べている。
トロントの投資銀行IBKキャピタルのマイク・ホワイト最高経営責任者(CEO)も、政治リスクの高まりが投資の引き揚げにつながるとは考えにくいと指摘、「鉱山会社が投資から手を引くことはないだろうが、投資のリバランスはあり得る」との見方を示す。
一方、アドバイザーは、資源ナショナリズムによって打撃を受けるのは大手よりも小規模な鉱山会社だと指摘する。
ブラキストン氏は「プロジェクトの利益率が圧迫され始めれば、小規模な企業は資金調達が難しくなる。誰も彼らに貸したくないからだ」としている。
<投資引き揚げは困難>
鉱山開発はリスクの大きなプロジェクトであるため、各国政府はロイヤルティーの引き上げ、既存の法人課税の拡大、超過利潤税の導入などを通じて鉱山会社からの収入拡大を目指している。
豪政府が2010年に新税導入計画を発表したことを受け、オーストラリアの鉱山会社はその撤回あるいは軽減を求めて抵抗している。
一方、フォーテスキュー・メタルズなど最も強硬に抵抗している鉱山会社ですら、鉄鉱石や石炭鉱山に対する新規投資の手を緩める様子は見られない。
既存の鉱山では大規模な鉱床を見つけにくくなっていることも、鉱山会社の悩みの種。その結果、彼らは規制変更など政治リスクが高まっているにもかかわらず、投資を継続する以外に選択肢がなくなっている。
インドネシアに権益を保有するカナダの小規模鉱山開発会社イースト・アジア・ミネラルズのアレックス・グレインジャー社長は「発展途上国に足を伸ばし、彼らのルールに従う以外に道はない」と語っている。(Euan Rocha、Sonali Paul記者;翻訳 長谷部正敬)
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