焦点:ECB、キプロスに対する緊急流動性支援を断つ構え

ロイター編集
焦点:ECB、キプロスに対する緊急流動性支援を断つ構え
3月20日、欧州中央銀行(ECB)はキプロスに対する緊急流動性支援を断つことも辞さない構えだ。写真は19日、キプロスの首都ニコシアで銀行支店前のベンチに腰掛ける男性(2013年 ロイターNicosia)
[フランクフルト 20日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)はキプロスに対する緊急流動性支援を断つことも辞さない構えだ。キプロスは19日、100億ユーロ(129億ドル)の支援策を受けるための預金課税法案を否決した。
支援はキプロスの銀行に対する資本注入に大半が費やされることになっており、ECBはこの支援がなければキプロスには支払い能力がなくなるとし、中銀の支援を受けるためには銀行に支払い能力があることが必要、との立場を明確化した。
この資金供給が閉ざされれば、キプロスは泥沼にはまり込むことになる。
他のユーロ圏諸国に対しては、ECBは国債買い入れや無制限の流動性供給を行う構えがあり、危機の波及を食い止めるための政策手段を揃えている。ただし、ドイツの抵抗で、ドラギECB総裁が新たな政策手段を生み出す可能性が制限されているという側面もある。
ECB理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は、ECBの国債買い入れ計画について、政府への財政ファイナンスに等しいとして反対したが、ECBが1年前に実施した長期流動性供給オペ(LTRO)などの措置は基本的に受け入れている。
この状況を踏まえ、ECBは恐らく新たな危機対応手段を考え出す必要性はなく、既存の措置を講じる前に、銀行預金者の不安を取り除くために各国政府と協力することになるだろう。
米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のシニア・ポートフォリオ・マネジャー、アンドリュー・ボソムワース氏は「波及のリスクとは、他国での取り付け騒ぎだ」と指摘。「預金保護は侵害されないものだとしたコミットメントなど、ECBや政府による口先介入は助けになるだろう」と述べた。
ドラギ総裁は昨年7月、ユーロ存続のため、ECBが責務の範囲内で必要なあらゆる措置を取ると発言、一定の条件を満たした場合の国債買い入れ計画を発表することでその約束を裏付けた。現時点で預金者の不安を取り除く発言を行うのであれば、ユーロ圏の金融システムが円滑に回っていると確信させるための取り組みも伴う必要がある。
<ECBは線引きを明確化>
19日遅くに発表した声明で、ECBは既存の規定の範囲内で必要な流動性を供給する構えがあるとの立場を明確化した。
預金者の不安を取り除きたいドラギ総裁を代弁するように、ECBのアスムセン専務理事は、ユーロ圏には他にキプロスのような銀行セクターを持つ国はない、と述べた。
ドイツ銀行のエコノミスト、ギレス・モエック氏は、ECBの流動性供給に対するコミットメントに加え、キプロスの銀行セクターの問題が同国特有のものだというアスムセン専務理事の発言は、ECBが他のユーロ圏の健全な銀行なら支援する構えがあることを示している、と指摘。同時に、支払い能力のない銀行には資金供給できないことを確認しているようなものだともしている。
国債利回りを急上昇させる最悪のシナリオとして、ユーロ圏他国の銀行顧客に不安が広がることが挙げられるが、これまでのところその兆候はない。
国債利回りの急上昇に備え、ECBは新たな国債買い入れプログラム(OMT)を利用できるが、発動の条件には当該国が改革や緊縮措置といった支援策にまず合意しなければならない。
モエック氏はOMTが基本的には有効な手段としてあるとしても、キプロスをめぐる情勢は、OMTの発動が実際は想定以上に難しいことを確認させるものかもしれないと指摘した。
<明確な境界線>
ECBは「既存の規定の範囲内で」流動性を供給する構えがあると強調しており、そのスタンスは揺るがない。ECBはキプロスのために柔軟な対応をするつもりはないというわけだ。
20日の理事会会合でアスムセン専務理事はキプロスに支援策に合意するよう迫った。「支払い能力のある銀行にだけ緊急の流動性供給ができる。支援プログラムがすぐに受け入れられなければ、キプロスの銀行の支払い能力について確かめることはできない」と述べた。
ECBオペの担保としてキプロス国債は不適格となっているため、キプロス中銀は緊急流動性支援(ELA)の枠組みを通じて国内行に資金を供給している。
これら緊急的な融資は比較的容易に受けられるものの、ECBの理事会がELAの実施を許可することになっている。2週間ごとに見直され、供給を断つにはメンバーの3分の2の賛成が必要。
ベレンベルグ銀行のホルガー・シュミーディング氏は「もし本当に必要であれば、キプロスよりも大きな国が現在の支援条件を拒否することを促すような状況になるぐらいに条件を緩和することよりも、ユーロ圏は小国のキプロスを見放し、その損失拡大を防ぐことに注力することを選ぶだろう」と述べた。
(Paul Carrel記者;翻訳 青山敦子;編集 佐々木美和)

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