焦点:中国新指導部の人民元改革、加速への期待と不安が交錯

ロイター編集
焦点:中国新指導部の人民元改革、加速への期待と不安が交錯
5月7日、中国の新指導部は、人民元の国際的地位の強化や一連の金融改革支援のために、今後数年で人民元を完全な交換可能通貨とする施策の実行を加速させるかもしれない。写真は人民元紙幣。2011年1月撮影(2013年 ロイター/Carlos Barria)
[北京 7日 ロイター] 中国の新指導部は、人民元の国際的地位の強化や一連の金融改革支援のために、今後数年で人民元を完全な交換可能通貨とする施策の実行を加速させるかもしれない。ただ、政府内には慎重な意見も残っており、市場開放のペースが鈍いという失望を招く恐れもある。
中国政府は6日の閣議で、人民元の資本勘定における交換可能化に向けた「作戦計画」の策定を要望。改革を大胆に推進する姿勢が見受けられる。
景気減速に悪戦苦闘している政府は、経済の勢いを殺さず、投資機会を拡大しようと、各種改革のスピードアップに熱心になっている。こうした中で厳しく規制された人民元は、金融の全体的な改革や市場主導の経済を展開していく上では妨げにしかならない。
今後の人民元改革についてアナリストの間で最も有力視されるシナリオは、5年以内に人民元は交換可能となるが、短期の資金移動について一部規制が残る、というものだ。
中国の政策決定に関する議論に詳しいエコノミストによると、人民元の交換可能化に向けた工程表策定においては人民銀行(中央銀行)が音頭を取って、達成期限さえ示唆する可能性もあるが、公表はしないだろうという。
これまでも人民銀行の周小川総裁をはじめとする当局者は、人民元の交換可能化で具体的な日程は示してこなかった。
エコノミストは短期的な動きとして、政府が両方向の資本移動を、特に国内の個人による海外投資に重点を置く形で、拡大していくかもしれないとみている。
人民銀行は1日当たりの人民元の許容変動幅を広げることで、為替取引に対する締め付けをさらに緩くしていく可能性もある。
人民銀行の易綱副総裁は4月にワシントンで、資本勘定のさらなる自由化と人民元の変動幅拡大に動く適切な条件が整ったと発言した。
中国農業銀行のチーフエコノミスト、Xiang Songzuo氏は「人民元の交換可能化は、迅速化が必要な金融改革と重要なつながりを持っており、それができないと他の金融改革や人民元国際化の足を引っ張りかねない」と強調。恐らくは今の指導部の任期が終わるまで、つまり5年以内に交換可能化が実現するとみている。
現在も人民元は経常勘定では交換可能だが、政府は資本勘定、とりわけ証券投資の分野では厳格な規制を維持している。その背景には、人民元の自由化を急ぎ過ぎると、短期間に出たり入ったりする資本移動に経済が影響を受けやすい状況がそのまま残ってしまうとの懸念がある。
一方で、人民元への規制は、これを保有する外国人投資家の中国資本市場に対するアクセスに制約を与えるので、政府が進める人民元国際化には障害となるだろう。
<改革の中身で論争>
李克強首相は閣議において、金利や為替制度の自由化を含めた重要な改革を政府が推進し、経済の再生を図る意向を鮮明に打ち出した。
中国人民大学のZhang Zhixiang教授は「中国経済に存在するあらゆる問題は、中国の資本コストがまだ市場で決められていないという事実に起因する」と指摘する。
その上でZhang教授は「人民元の変動幅は拡大し、金利は一層自由化されるだろうと思う。ただし、その過程は緩やかになる」と語った。
中国は、人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)バスケットに組み入れられることを強く希望している。また人民元を国際決済通貨としてドルやユーロと肩を並べさせたいと望み、貿易における元建て決済の促進や、各国との通貨スワップ協定調印、適格外国機関投資家制度を通じた漸進的な資本市場開放などの措置を講じてきた。
それでも中国政府は人民元問題に関しては慎重に歩を進めるだろう。人民銀行の周総裁を含めた当局者はこれまで繰り返し、資本勘定の開放は、資本規制の完全な撤廃を意味しないと主張している。
さらに人民元の交換可能化の具体的な計画策定には、利害が対立するさまざまな政府機関が関係するとみられる。
有力政府系シンクタンクの中国社会科学院のエコノミスト、Zhang Bin氏は「改革の方向性に関しては何の問題もない。だが、実行の順番やスピード、日程をめぐっては論争がある」と話した。
(Kevin Yao、Heng Xie記者)

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