12月2日、あふれていた海外資金が引き揚げ始め、新興国の政府は国内の貯蓄プール拡大という、極めて時間のかかる取り組みを再開している。写真は8月、ムンバイの銀行で撮影(2013年 ロイター/Danish Siddiqui)
[ロンドン 2日 ロイター] -あふれていた海外資金が引き揚げ始め、新興国の政府は国内の貯蓄プール拡大という、極めて時間のかかる取り組みを再開している。
米国の金融緩和縮小への転換の兆候を受けたボラティリティの高まりは、新興国市場が海外資本に依存している現状を浮き彫りにした。さらに、大規模な国内投資家基盤がなければ、景気と不景気を繰り返す20世紀型サイクルに逆戻りしてしまうとの警告も発した。
西側諸国の中央銀行が市場に資金を送り出すのを止め、利上げに着手すれば、新興国経済は投資資金を自国内に求めなければならなくなる。その際には、手元の長期資金を提供できる年金基金や保険資金の拡大によることが望ましい。
こうした事態を理解する政府は増えている。ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのチーフ投資ストラテジスト、イーウェン・キャメロン・ワット氏は、現在では大きな国内投資家基盤を保有するメキシコとマレーシアの改革のきっかけは、1990年代の金融危機だったと指摘する。
キャメロン・ワット氏は「今後十年で最も早いスピードで福祉の貯蓄プールが成長するのは、新興国だ」とし、こうした動きは経済危機の結果、加速する傾向にあると語った。
例えばインドは、民間部門への資金の道筋をつける米国の確定拠出年金(401k)に似た年金法を取り入れた。従業員の課税前の給与から差し引いて退職貯金に回すことができ、多くの場合、経営者側も同じだけ拠出する。
インドはさらに、海外からの年金や保険産業への投資規制も緩和している。年金関連の改革はトルコやナイジェリアなどでも進んでおり、新興国の年金・保険資産は2008年の金融危機以降、増加している。JPモルガンのデータによると08年前から倍増して5.5兆ドルに上る。
しかし、こうした貯蓄はいくつかの大国に集中している。しかも、先進国と比べればまだ規模は小さい。新興国の年金資産を全て合わせても、米国と日本の保有額の10分の1に過ぎない。
それでも、国際通貨基金(IMF)は、今年の市場動向は、「売られ方」が国により異なった点でこれまでと異なると強調する。これは政府の収支状況の違いだけでなく、資金流出を和らげる国内投資家の有無も背景だとしている。
<違い>
南アフリカとロシアとで株式市場の命運が分かれたことが示しているように、国内投資家は海外資金の動向による市場の不安定化を無くしはしないまでも、緩和することができる。
南アフリカでは、国内総生産(GDP)の半分超に匹敵する年金資産により、株式市場<.JALSH>は今年の激しい値動きに対し抵抗力を示し、年初来14%上昇している。
一方、年金資産がGDPのわずか2%に過ぎないロシアでは、外貨が流出し、上場株<.MCX>は年初の値上がり分の大半を失った。
海外資金が流出し、地元通貨が下落すると、国内投資家は値下がりした資産を買うために海外から資金を戻す、とインベステックのグローバルストラテジスト、マイケル・パワー氏は話す。
<進捗は遅く>
より懸念されるのは、予算不足の政府が年金に手を出すことだ。こうした事例はアルゼンチンやハンガリーにある。
最近では、ロシアで、政府による民間退職貯金への管理を強化する法案が可決され、年金国有化への懸念が広がった。
企業や組織への信頼度が低い国々では、既存の貯蓄を投資するのも難しそうだ。インドの貯蓄率は、世界でも最高水準の30%超だが、この8000億ドルに上る貯蓄のほとんどは金か現金で保有されている。直接であれ投資信託を介してであれ、株式を保有しているインド人は5%に満たない。
(Sujata Rao記者)
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