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日銀所信聴取:識者はこうみる

[東京 24日 ロイター] - 日銀総裁候補の植田和男氏の発言に対し、金融市場では一定の安心感が広がり、株高・債券高が進んだ。「現在の日銀の金融緩和は適切」と述べたことで、早急な大幅政策変更の可能性は低いとの見方が広がった。ただ、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策について将来的な見直しに含みを残したことで、相場は上昇一服となっている。市場関係者のコメントは以下の通り。

 2月24日、日銀総裁候補の植田和男氏の発言に対し、金融市場では一定の安心感が広がり、株高・債券高が進んだ。写真は都内で撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

●植田氏発言は無難、将来の示唆は乏しい

<みずほ証券 チーフ債券ストラテジスト 丹治 倫敦氏>

日銀総裁候補である植田和男氏の発言内容は無難な内容となった。物価の2%上昇達成までは金融緩和を続けるなどと発言しており、これまでの黒田東彦日銀総裁のスタンスを踏襲している。

イールドカーブ・コントロール(YCC)政策にしても、現在はさまざまな副作用が生じているものの「2%目標の実現にとって必要かつ実質的な手法だ」と述べており、現日銀執行部の考えに沿った発言だった。

マーケットの政策修正観測は根強く残るとみられるが、将来の金融政策を示唆する内容は乏しい。参議院での所信聴取も同じような発言内容になるとみられる。次期日銀総裁を巡る相場変動はいったん小休止となりそうだ。

●副作用に課題意識、円高への警戒感くすぶり続ける

<ニッセイ基礎研究所 上席エコノミスト 上野剛志氏>

植田日銀総裁候補の発言は、全体的には現在の日銀の経済・物価の見方および金融緩和の継続方針を踏襲した内容だった。バランスの取れた答弁であった印象だ。別の言い方をすれば、安全運転に終始して無難に乗り切ったともいえる。理論的かつ、分かりやすく、誠実な答弁だったので、これからの市場との対話は期待ができる。

今後の金融政策の手掛かりは、それほど多くはなく、意図的に明言を避けたように見える。基本的には金融緩和の継続には前向きであるものの、副作用に対しては課題意識を持っているようだ。状況をみながら、副作用への対処を優先していくのではないか。  

緩和継続の姿勢を示したものの、イールドカーブ・コントロール(YCC)に手を入れないということではない。市場では、金利の引き上げ方向への修正の可能性は今後も意識され、それに伴い円高への警戒感がくすぶり続け、円の下値を支えるとみている。

●植田氏発言は想定通り、緩和継続期待で株高

<三井住友トラスト・アセットマネジメント チーフストラテジスト 上野裕之氏>

植田日銀総裁候補の所信聴取で市場が注目していたのは、政府・日銀の共同声明の見直しについて発言があるか、大規模金融緩和の出口戦略や、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の見直しについて言及があるかだった。

植田氏は、政府・日銀が掲げる2%目標について「持続的・安定的に達成するには時間がかかる」と述べており、(金融政策を)現段階で大きく変えるという話はでなく、発言内容は無難な内容だったといえる。

全体として、市場が想定していた通りの内容だったことや、今の緩和環境が当面は続くという安心感から、株価も上昇したのだろう。いったん、重要イベント通過ということで、市場の注目点は今後また、米国の金融政策へと戻るのではないか。

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