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コラム

コラム:コロナ後の新たな価値創造へ、経営者は今こそ長期的視点を

[トロント/ニューヨーク 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 新型コロナウイルス禍は多くの企業経営者の不意を突き、世界のビジネスを混乱に陥れた。効率最大化のために構築された世界的サプライチェーンなどのシステムは急停止した。こうした耐性の欠如が浮き彫りにしたのは、経営者が長期的な視点を持つことの重要性だ。

 新型コロナウイルス禍は多くの企業経営者の不意を突き、世界のビジネスを混乱に陥れた。耐性の欠如が浮き彫りにしたのは、経営者が長期的な視点を持つことの重要性だ。写真はロンドンで9月撮影(2020年 ロイター/Simon Dawson)

業界によっては需要が未曽有の落ち込みを見せ、存亡の危機に瀕している企業もある。こうした企業は、いくら備えが万全でも難局を免れるのは難しかっただろう。しかしその他多くの企業は、コロナ禍のような事態をもっと良く予測、準備することができたはずだ。警告のサインは至るところにある。コロナ禍の前でも、平均的な企業は約4年に1度の頻度で、サプライチェーンが1カ月間かそれ以上停止する事態を経験していた。

企業の長期的見通しに注目することは、単にリスクからの身を守ることにおいて重要なだけではない。大きなプラスの効果もある。マッキンゼー・アンド・カンパニーが米上場企業600社以上を調査したところ、長期的な業績を見据えて経営している企業は2001年から14年にかけて、短期的視野の企業に比べて株式時価総額の増加幅が平均70億ドル大きかった。01年から15年にかけての従業員の増加数も平均1万2000人多かった。

それなのに今、短期思考の企業行動が勢いを増している。長期投資を促す研究・手法を開発する非営利組織、FCLTグローバルとマッキンゼーの調査で、15年から19年にかけて、米大手上場企業の間で短期志向の行動が統計上、有意な増加を示していたことが確認された。

この傾向は単一の要因で説明がつくものではないが、強力な要因と言えるのは外部からの圧力だ。FCLTグローバルとマッキンゼーの今年のアンケートでは、特定の投資家、場合によっては取締役会メンバーから短期的な成果優先を執拗(しつよう)に求められていると企業幹部が回答した。企業業績連動の報酬制度が、そうした成果の達成に駆り立てられるインセンティブになっているとの回答もあった。

大半の幹部は短期的業績よりも優先すべきことがあると承知しながらも、他に選択肢はないと感じている。これは何度も見てきた光景だ。最高経営責任者(CEO)が有意義な長期プロジェクトを計画する。続いてその企業は挫折を経験する。投資家からの苦情を恐れ、CEOは四半期利益を押し上げる方向へと資金をシフトする。そして長期プロジェクトは減速し、ついにはエンストする。

こうした短期経営により、長期投資家は高い代償を負わされているが、諦める必要はない。FCLTグローバルとマッキンゼーは4カ月にわたる調査によって、事業を長期的成功へと導く経営の公式があることを学んだ。公式の柱となるのは、価値創造の基本原則に重きを置く行動だ。そうした行動をとれば、企業はコロナ禍のような厳しい時代を生き抜くことができるのだ。

企業は売上高を増やし、資本コストを上回る投資利益率を上げることで持続的な価値を創造するものだ。従って、企業幹部が長期的な価値創造を目指すなら、成長を生み出す複数のプロジェクトに投資するとともに、それらのプロジェクトがトータルで見て利益を生む状態を確保しなければならない。

企業幹部がひとたび一連の成長プロジェクトを抱えると、資本と人材をほぼ同じ割合で各プロジェクトに供給し続ける傾向がある。これは間違いだ。来る年も来る年も似かよった資源配分を続けることは、新たな機会を逃すことを意味する。

幹部は現状を維持するのではなく、頻繁に資本配分を変えることができる。これは株主利益の向上につながる。幹部はまた、長期計画を固持すべきだ。試練が訪れても、短期的に利益を押し上げる行動の誘惑に抗わねばならない。

最後に、幹部は株主だけでなく、他のステークホルダーの要求にも配慮すべきだ。企業は顧客や従業員、コミュニティー、監督当局と良い関係を保ってはじめて、投資家にとって長期的な価値を生み出すことができる。

今こそ企業幹部がそうした行動に踏み出すべき時だ。世界中のCEOと取締役は今、コロナ後を見据えて未来を再考している。そうした頭の訓練は幹部ら自身だけでなく、管理職、従業員、そして提携先企業を方向転換させ、長期的価値の創造というゴールへ向かわせるチャンスだ。

転換の第1歩として、幹部らが行える実際的な変更事項がいくつかある。戦略設計と、その執行の監督に費やす時間を増やすことだ。これはCEOにとって、長期プロジェクトへの資源配分にもっと関与することを意味する。取締役会メンバーはこの仕事をもっと丹念に検証するとともに、CEOの報酬を業績だけでなく、長期的資源配分の優劣とも連動させることができる。

CEOはまた、ステークホルダー、特に投資家ともっとオープンに対話する習慣を作ることが可能だ。各四半期の業績を話し合うのではなく、長期的な戦略・投資について説明すべきだ。一時的に業績が失望を誘った場合、CEOは投資家に対し、長期的な流れの中に現状を位置付けて見せることで、短期的なプレッシャーを緩和することができる。

家電量販店を経営する米ベスト・バイBBY.Nのフバート・ジョリー元CEOは、投資家と対話することの重要性を知っている。彼が最近のインタビューで語っている通り、「投資家は企業に長期的な価値創造を望んでいるので、筋道を立てて説明した上で結果を出していけば喜んで受け入れる」。

CEOはさらに、決算発表と関連し、従業員満足度など非伝統的な業績尺度の発表を定例化すべきだ。非伝統的な尺度で良い成果を出すことが企業の価値創造に寄与することを理解している投資家は増える一方だが、そのために必要な取り組みとなると、投資家の評価を得られない可能性がある。CEOは、そうした取り組みと成果との関係を分かりやすく説明することができる。

企業幹部にとって、長期的な経営が容易ではないことはわれわれも理解している。しかしコロナ禍によって再認識させられた通り、短期的経営の代償はあまりにも大きい。CEOと取締役は長期的視野を持つことで、ステークホルダーにより良く奉仕することができる。

(筆者のMark Machin氏はCPPインベストメンツの最高経営責任者(CEO)で、FCLTグローバルの会長。Kevin Sneader氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・マネジング・パートナーで、FCLTグローバルの理事会メンバー。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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