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コラム

コラム:パウエル氏、1年前の誤った物価認識が「けがの功名」に

[ワシントン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が26日にカンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で予定している講演は、間違いを正す良い機会と言える。昨年の同会議でパウエル氏は、既に起きていた物価上昇に利上げでは対応しない方針を正当化するため、「インフレは一時的」とする誤った認識を示した。ただこのしくじりは「けがの功名」になった。

 8月25日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が26日にカンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で予定している講演は、間違いを正す良い機会と言える。写真はジャクソンホールで2019年8月撮影(2022年 ロイター/Ann Saphir)

昨年8月にパウエル氏が物価上昇リスクを過小評価した後、皮肉にも物価の上がるスピードが加速し、上昇範囲は拡大。そして今年6月の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は9.1%に達した。すかさず経済金融界の大物たち、例えばサマーズ元米財務長官やJPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)などは、こぞってパウエル氏の政策運営が後手に回ったと糾弾した。パウエル氏はこの埋め合わせの意味で、26日にはよりタカ派的な姿勢を打ち出す公算が大きい。

ところがたとえ1年前、FRBが金融引き締めに動けたとしても、当然動くべきだったというわけではない。米経済はまだ、金利上昇に対処できるほど頑健な足場を築いていなかったからだ。昨年8月の失業率は5.2%で、840万人はなお仕事を失っていた。黒人の失業率に至っては8.8%という悲惨な状況でもあった。

その時点でFRBが引き締めを開始すれば、借り入れコスト上昇と新型コロナウイルスの感染再拡大が重なる結果になっただろう。米国の1日の新規感染者数が130万人近くとピークを迎えたのは今年1月。カリフォルニア州は屋内の集会を制限し、ニューヨーク市は店内飲食にワクチン接種を義務化した。そういった局面で利上げすれば、企業はより大きな緊張を強いられたとみられる。

しかも急上昇した物価の一部、具体的には原油の価格高騰は、ウクライナの戦争が主な要因なので、利上げしても止まらなかったはずだ。イングランド銀行(英中央銀行)は昨年12月、FRBより3カ月早く利上げを始めた。それでも英国の7月CPI前年比上昇率は10.1%と40年ぶりの高い伸びで、他の主要7カ国(G7)を上回っている。

現在の米経済はずっと状況が改善した。FRBが利上げに乗り出した3月の段階で、失業率は3.6%と約50年ぶりの低水準。その後2回連続で75ベーシスポイント(bp)の利上げを実施しても、個人消費はしっかりした基調を維持している。雇用は順調に拡大し、国内総生産(GDP)こそ今年第1・四半期と第2・四半期に続けてマイナスとなったものの、これは主としてサプライチェーン(供給網)に絡む問題の影響だ。一方で7月のCPI前年比上昇率は8.5%と、依然高いが前月からは鈍化した。

パウエル氏の今回の講演は、金利が上昇しても米経済が景気後退(リセッション)に陥ることはないという同氏の期待と確信を反映した内容になるのではないか。だがたとえリセッションのリスクがあっても、労働者は1年前に比べれば強い立場で対応ができる。それはパウエル氏が「筋の良い間違い」をしてくれたおかげだ。

●背景となるニュース

*パウエルFRB議長は26日、ジャクソンホール会議で講演する予定。会議の今年のテーマは「経済と政策に関する制約の再評価」となっている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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