9月19日、日銀が追加金融緩和を決定したことで、市場では円安・株高が進み、リスクオンムードが広がっている。写真は5月、都内で撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 19日 ロイター] 日銀が追加金融緩和を決定したことで、市場では円安・株高が進み、リスクオンムードが広がっている。
欧米中銀の大胆な施策に比べやや見劣りするとの指摘もあるが、緩和見送りとの予想もあったなかで、世界的な緩和協調姿勢をみせたことを市場は評価。円債も底堅く推移するなど流動性相場色が強くなってきた。資産価格上昇などを通じて、世界的な景気減速を食い止められるかどうかが今後の焦点だ。
<「期待値」低くサプライズ効果>
今回の日銀決定会合に対し、市場の事前予想は割れていた。FRB(米連邦準備理事会)が量的緩和第3弾(QE3)導入を決定して以降、懸念されていた対ドルでの円高は進まず、逆にインフレ懸念などが強まり、米金利が上昇したことで77円台から78円台に円安が進行。世界的な景気減速は強いものの、10月30日に展望リポート発表を控えるだけに、今回は緩和見送りとの予想も多かった。
このため市場の「期待値」はそれほど高くなく、資産買い入れ基金を10兆円増額した日銀の追加緩和に対して、19日午後の東京市場では素直に円安・株高のリスクオンが進んだ。対ドルで約1カ月ぶり高値となる79円前半、対ユーロで103円前半まで円安に振れると、日経平均<.N225>は一時9200円台後半と約4カ月半ぶりの高値水準に上昇した。
「金融政策のパラダイムを変えるほどの大胆な施策」(国内証券エコノミスト)との評価も出ている欧州中央銀行(ECB)やFRBの施策に比べると、日銀の緩和策はやや小振りとの辛口評価もあるが、日米欧中銀が積極姿勢でそろい踏みとなったことの効果は小さくない。「ECBやFRBによる無制限・無期限の金融緩和と比較して緩和の規模が物足りない印象だが、欧米中銀に同調して動いたことをマーケットは評価している」と、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は言う。
市場では「中央銀行とは闘うな」との相場格言もあり、「いったんリスクオン・ポジションを構築する動きがみられる。円債も底堅く、過剰流動性相場期待が強まっている」(大手証券・株式トレーダー)という。
第一生命経済研究所の主席エコノミスト、熊野英生氏は、長期国債の入札下限金利の撤廃が効いていると指摘。「長期金利低下に伴い、現時点では日米金利差が再び拡大する格好となり、それが円安の作用をもたらしている。円安・緩和期待で主力輸出株を含めて株価も上昇しており、適切な対応だと思う」と評価している。また「いわゆる時間軸における量的な供給を明示し、基金規模を通じて資金供給のインパクトを鮮明にしたほか、固定金利オペは減額しなかったことで、日銀の積極さをアピールする形となった」という。
<景気押し上げ効果は不透明>
問題は、日米欧ともに短期金利がゼロ近辺に張り付くなかで、金融緩和効果も小さくなっていることだ。重債務国の国債やモーゲージ担保証券(MBS)などを「無制限」に購入することをきめたECBとFRBだが、実際に欧州の当該国が財政再建を図れるか、米住宅市場が回復し実体経済が再加速するかは、依然不透明。インフレという副作用も懸念されている。
日銀の長期国債の入札下限金利撤廃についても「超過準備の付利が0.1%に設定されている以上、国内投資家が0.09%、0.08%といった利回りで買う理由が見当たらない」(大和証券・金融市場調査部チーフストラテジストの山本徹氏)との見方もある。
実際、大胆な金融緩和の裏側にある世界的な景気減速感は一段と強まっている。米宅配大手フェデックスは18日、2013年度の利益見通しを引き下げた。同社が見通しを引き下げたのは過去3カ月間で2度目。世界経済の減速を受けて、より発送日数の長い低価格帯サービスへ需要がシフトしているという。第1・四半期の総売上高は3%増となったものの、利益率の低いエコノミー部門の比率が高くなったことで、純利益は1%減少した。
一方、欧州では、スペインが債務の支払いを継続するためには欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れが必要との見方が高まるなか、市場では同国の支援要請に対する圧力が高まっている。スペイン10年債利回りは6.03%近辺に上昇、主要株価指数のIBEX指数<.IBEX>も下落。スペインが国際支援を受けずに適切なコストで資金を調達することができるのか懐疑的な見方が再び広まっている。
金融緩和が相次ぐ一方、世界的に選挙や政権交代の季節に入ってきていることもあり、財政面からの支援は依然限定的だ。インフレ予想を抑え込みつつ、潤沢な流動性と低金利を原動力として株価や住宅など資産価格を上昇させ、実体経済を下支えすることができるか、注目されている。
(ロイターニュース 伊賀大記;編集 久保信博)
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