9月19日、日銀が10月公表の展望リポートを待たずに追加の金融緩和に踏み切った背景には、海外経済の予想以上の減速といった経済情勢のほか、FRBによるQE3を受けた政策協調の側面もありそうだ。写真は5月、都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 19日 ロイター] 日銀が10月公表の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を待たずに追加の金融緩和に踏み切った背景には、海外経済の予想以上の減速といった経済情勢のほか、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第3弾(QE3)を受けた政策協調の側面もありそうだ。
日銀は当面、追加緩和の効果を見極めていくと見られるが、欧州債務問題や中国経済減速の長期化など海外経済の不透明感が強まる中、景気下振れリスクを意識せざるをえない局面が続く。
白川総裁は金融政策決定会合後の会見で、追加緩和に踏み切った理由について、海外経済の減速長期化を背景に景気の中心シナリオ自体を下方修正したとし「日本経済が持続的な回復経路に復する軌道を踏み外さないため」と語った。日銀では従来、2012年度前半にも景気が緩やかな回復シナリオに復帰するとの見方を示していたが、総裁は回復時期が「半年程度、後ずれする」との見通しを示した。
景気シナリオは、年2回の展望リポートで示され、次回は10月末の会合後に公表する。当初、9月の会合で景気の現状判断を下方修正し、展望リポートの内容を詰める2回の10月会合で景気シナリオと合わせて政策対応を議論する方向だったとみられる。しかし、白川総裁が「この1カ月のデータで、海外経済の減速長期化を裏付けるものがいくつも出てきた」と指摘したように、「外需は想定よりも弱め」としていた日銀の見方をさらに慎重化する必要に迫られた。そうした中で、13日にFRBが、住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドル(約3兆円)買い入れる大胆な緩和措置を決定、日銀の背中を押した可能性がある。
白川総裁は今回の追加緩和と米緩和措置との関連について「他国の中銀に合わせて政策対応を機械的に行うことはない」と否定する。しかし、米緩和措置を受けて日銀による追加緩和期待が市場に醸成される中で、「無回答」では日銀の「緩和姿勢」が問われかねないリスクが高まっていた。さらに欧州中央銀行(ECB)による新たな国債買い入れプログラムの表明や、米QE3を受け、足もとの金融市場では「リスク回避の巻き戻し」も意識されており、市場の動きを後押しする効果も狙った可能性がある。日銀の追加緩和決定を受けて一時、為替市場では円相場が1ドル=79円前半に下落、日経平均株価は前日に比べて150円を超える上昇となった。
今回、展望リポートを待たずに、景気の中心シナリオの下方修正と合わせて資産買入基金の10兆円増額と、まとまった規模の追加緩和に踏み切ったことで、日銀の政策運営は当面、緩和効果を見極めていく展開になりそうだ。もっとも、総裁は「欧州問題のさらなる深刻化による市場動揺や世界経済の下振れリスクをもっとも意識すべき」と強調、中国経済の減速長期化を含めて海外経済は予断を許さない状況だ。投資家のリスク回避姿勢が再び強まれば、円高が急速に進行するリスクも依然としてくすぶる。海外経済や市場動向をにらみながら、政策運営は引き続き景気下振れリスクを意識せざるを得ないようだ。
(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 橋本浩)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」