September 27, 2019 / 8:34 AM / 22 days ago

アングル:日銀の追加緩和期待、一様ではない市場の織り込み

[東京 27日 ロイター] - 市場の一部で日銀の追加緩和を織り込む動きが出ている。黒田東彦日銀総裁の発言に呼応するように、中短期金利が低下。マイナス金利の深掘りを予測した取引が強まっている。ただ、株式市場や為替市場での織り込みは限定的で、中期債の金利低下も海外勢の為替スワップを使った買いやリスクヘッジに過ぎないとの見方もある。市場の織り込み度は一様ではない。

 9月27日、市場の一部で日銀の追加緩和を織り込む動きが出ている。写真は金融政策決定会合後に会見する黒田東彦日銀総裁。2018年10月31日、東京で撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

<再三の黒田総裁発言>

日銀の追加緩和期待が市場に織り込まれてきている背景には、黒田総裁による再三の発言がある。9月6日付の日経新聞インタビューでは「マイナス金利の深掘りは追加緩和の選択肢」とし、次回会合での「点検」が決まった19日の決定会合後の会見では、金融緩和に「前回会合より前向きになった」と発言した。

24日の講演では、超長期金利の低下に懸念を示す一方、「短中期ゾーンの金利の効果が相対的に大きいとの認識に変化はない」と話し、マイナス金利深掘りに前向きとの見方が強まった。

日米貿易協定が合意されたことで、追加緩和の「障害」が1つ消えたとの受け止めもある。シティグループ証券のチーフエコノミスト、村嶋帰一氏は、基本的には海外景気や為替、消費増税後の物価などをみての判断になるが、「日銀が追加緩和を決めても、米国から円安誘導だと指摘されるリスクが後退した」と指摘する。

金融政策の変化見通しを敏感に反映する新発5年債利回りJP5YTN=JBTCは25日に一時マイナス0.400%を付け、過去最低水準を更新した。長期・超長期債オペが減額される一方、マネタリーベース拡大のために中期債オペを増額する可能性があるとの見方も要因だが、市場では「マイナス金利深掘りを期待した買い」(国内証券)との見方が出ている。

<マイナス金利深掘り「織り込み」の中身>

ただ、5年債の金利低下は必ずしも、日銀の追加緩和観測を織り込んだものではないとの指摘もある。

「国内勢は万が一に備えたヘッジによるショートカバー。海外勢は為替スワップを使った取引が復活している可能性が大きい。必ずしも追加緩和を本格的に織り込む買いとは言えない」と野村証券のシニア金利ストラテジスト、中島武信氏はみる。

財務省の対内証券投資データによると、8月上旬まで週4000億円ペースが続いていた海外勢の日本国債(短期国債を除く)の買い越しは、8月11─31日にはほぼゼロとなったが、9月第1週は4000億円台、第2週は1兆2000億円台と回復してきている。第3週は3兆1000億円の売り越しとなったが、20日の国債大量償還の影響とみられている。

海外勢は為替スワップを利用してプラス金利を確保できるため、日銀の金融政策見通しよりも、米金利などとの相対的な総合比較で日本国債を買う傾向がある。

OIS(オーバーナイト・スワップ・インデックス)からみると26日時点で、1年後までに約26bpの利下げを織り込んでいる。1回10bp(0.1%ポイント)の利下げとすれば、2.6回分だ。

ただ、OISにおける利下げの織り込みが進んだ9月17日以降では、5年債金利の方がより大きく低下している。中島氏によると「OISレートの低下は5年債金利低下の影響を受けている部分が大きい」という。

金利低下が目立つ円債市場とは違い、株式市場や為替市場では、追加緩和の織り込みは限定的だ。マイナス金利深掘りが株安要因となる銀行株.IBNKS.Tは直近横ばいで推移している。為替市場でも「円債市場ほど織り込みは進んでいない」(外国銀行)という。

<黒田発言は「予防的口先介入」との見方も>

みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は、黒田日銀総裁の一連の発言について「予防的な口先介入」に過ぎないとみている。「急激な円高進行がみられない状況下では、追加緩和の可能性は小さい。一連の発言は円高を防止するためのポーズにすぎない」と話す。

今月は、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和(QE)を含む包括的な金融緩和策を決定、米連邦準備理事会(FRB)は追加利下げに踏み切った。

一方、日銀は政策を据え置き。米中通商協議の合意期待で円高は進んでいないが、金融緩和に踏みこむ欧米に対し、現状維持の日銀という構図は、円高圧力を生みやすい。それに備えた「予防的」発言と上野氏はみる。

2016年7月。OISでみた日銀の追加緩和期待が最も織り込まれたときだ。マイナス0.4%までの利下げを当時は織り込んだが、「総括的検証」の作成を指示した7月、発表した9月ともに、市場が期待した「利下げ」は見送られ、OISレートは利上げを織り込むレベルまで一時上昇した。

政井貴子日銀審議委員は25日、市場で浮上しているマイナス金利の深掘り観測について「日銀は全体をパッケージとして政策を遂行している。1つの部分を取り出してその是非を論じるのは適切ではない」と述べた。

市場では「マーケットのマイナス金利深掘りの織り込み過ぎをけん制する意図があったのではないか」(野村証券の中島氏)との見方が出ている。

(編集:石田仁志)

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