コラム:米国の干ばつ、水をめぐる経済戦争の火種に

コラム:米国の干ばつ、水をめぐる経済戦争の火種に
6月26日、米カリフォルニア州と米南西部を襲った草木を枯らすような干ばつが、水をめぐる経済戦争を引き起こす可能性がある。写真は干上がったカリフォルニア州の湖。2月25日撮影(2014年 ロイター/Noah Berger)
Kevin Allison and Antony Currie
[シカゴ/ニューヨーク 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米カリフォルニア州と米南西部を襲った草木を枯らすような干ばつが、水をめぐる経済戦争を引き起こす可能性がある。降雨の減少が米国の一部の地域を数年間にわたって干上がらせる。今後も十分な量の水を手にできるかという懸念が飲料メーカーから半導体業界まで広がる中で、こうした事態が起きている。
ただ五大湖周辺の市や州のほか、水処理技術を持つ企業には膨大なチャンスといえる。
ゴールドマン・サックスの会長も務めたハンク・ポールソン米元財務長官やマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が主催する「リスキー・ビジネス」プロジェクトは今週、米国経済に対する環境面の脅威を報告書にまとめたが、水へのアクセスの問題は見落とされているようだ。だが、世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加した企業幹部らは2年連続で水へのアクセスを世界3大リスクの1つに挙げた。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国や中国と同様にアリゾナ、ニューメキシコ州を含む地域や他の州は、水のストレスがもたらすリスクの高い地域として調査で常に上位に名を連ねる。
ただ、米国企業は最近まで、規制当局への情報開示の中で水不足をリスク要因として明確に位置付けることには及び腰だった。非営利団体のカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトによると、問題に対処する費用は企業によっては4億ドルに上る。
米商工会議所財団は先週、環境調査団体のパシフィック・インスティテュートとボックス・コミュニケーションズによる最近の調査に焦点を当てたオンラインセミナーを主催した。調査は米国の50社以上を対象に実施し、水問題が事業の成長と2018年までの収益性に影響を及ぼすと回答した企業がほぼ6割に達した。今後に取締役会レベルの課題になると答えた企業は90%程度に上った。5分の3の回答企業は設備をどこに置くかを決める際、すでに水の安定供給を考慮に入れていると回答した。
五大湖に面したオハイオ州とイリノイ州は、この問題をきっかっけに企業進出が進むことを期待している。米国とカナダ国境にまたがるこの地域は、世界の表面淡水域の5分の1を誇る。スーペリオル、ヒューロン、ミシガン、エリー、オンタリオの5つの湖は2万2000立方キロメートルの淡水をたたえており、これは他の48州すべてを深さ3メートルの水で覆うことができる量だ。しかもこの地域は工業都市と広域の港湾や鉄道、高速道路網を抱えている。
ボックス・グローバルのトニー・カランドロ氏によると、インディアナ州は「水の供給豊かな」地域として売り込みを加速している。ミルウォーキー、ウィスコンシン両州は、世界の水研究・ビジネスの中心「ウォーターハブ」に位置付けようと積極的な取り組みを長年進めてきた。
米国で歴史的に醸造メーカーの拠点だった都市は、水処理技術の新興企業を呼び寄せることで改革を実現したいと思っている。地元の大学は淡水研究プログラムを設けた。地元組織を統括するウォーター・カウンシルは、シードファンディグのコンペを実施したり、水ビジネスの起業家に事務所スペースを提供したりしている。
シカゴはすでに水集約産業である医薬品や食品加工業のナショナルセンターで、合わせて地元に数万人規模の雇用が生まれた。シカゴは近隣の小規模自治体とも目標を共有しながら、誘致の巻き返しを図っている。
とはいえ課題もある。シカゴの税率の高さは企業誘致の障害になる。新規参入企業は水を干上がらせたり無駄にせずに操業できることを示さなければならないだろう。スイスの食品大手ネスレは2000年代にミシガン州のミネラルウォーター工場をめぐって地元の反発を浴びた。水を大量に使う石油精製業と製紙業界も、湖を飲料と憩いの場に利用する住民の政治的反発に直面した。
ハイテク産業にとっては見通しが良好だろう。半導体のファウンドリーとサーバー設備には大量の水が必要だ。しかし、半導体メーカーは水を汚染せず、恒久的に水を持ち去るわけでもなく、他と同様に広報活動や環境面での負担は生じない。例えばインテルは使用した水の87%を環境に戻している。約3000億ドルという世界の半導体業界の年間売上高のごく一部でも呼び込むことができれば、年間の財政赤字額がほぼ3億4000万ドルに達すると予想されているシカゴのような都市にとって効果は大きい。
水の拠点になれば明らかにお金が入ってくる。乾燥気候と長年の干ばつの組み合わせによって、イスラエルは水の保全方法の発見にさらに力を入れるようになった。水処理技術関連の輸出額は2006年の7億ドルから2010年には20億ドルに増え、15年までに27億ドルに達するとゴールドマン・サックスは推計する。一方で農業関連の輸出は2011年に21億ドルに達している。
この数値は五大湖周辺の水が豊かな地域だけでなく、米国の水不足地方においても企業や政府の励みになるだろう。農業やサービス業のように、企業の移転は一部にとっては結局は実行不可能だからだ。
AT&Tは顧客の近くで事業を行う要がある。毎年33億立方メートルの水を使い、そのうち約3分の1はビルの冷房システムに利用される。相対的にコストの安い技術を採用することで、通信会社は水の使用量を最大4割減らすことができる。
こうしたシンプルな解決策は企業の移転を防ぐのに役立つ。水不足が深刻化すればするほど、各州が水を経済的な武器として利用する可能性は高まるだろう。
●背景となるニュース
・米国立測候所は19日、カリフォルニア州のほぼ3分の1が異例の干ばつ状態に陥っており、1週間前の25%から増加したと発表した。
・米商工会議所財団は6月17日、「米国企業の水リスク:不安と行動のギャップを埋める」と題するオンラインセミナーを主催した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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