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アングル:ウクライナ、抵抗の1年を振り返る

[20日 ロイター] - ロシアによる侵攻が始まって1年、ウクライナと同国政府は生き残っただけではなく、反撃を仕掛けている。

全面侵攻による迅速な勝利を当て込んでいたロシア軍は、国境を越えてなだれ込み、首都キーウ(キエフ)にまで迫った。それから1年。この戦争で、これまでのところ最も驚くべき点は、ウクライナが生き残ったということだ。

インタラクティブ版:ウクライナ、抵抗の1年を振り返る

第二次世界大戦以降の欧州で勃発した最大規模の紛争が与えたショックが薄れる今、ウクライナの抵抗は当たり前のように受け止められることさえある。

大方の予想通りに数日も持たずに降伏するどころか、今もウクライナがロシア軍を跳ね返し続けていられるのは、事前の準備や勇気、戦術、国際社会からの軍事・経済的支援、そして戦場におけるロシアの失策が重なった結果である。

とはいえ、ロシアは2022年末に大きな後退を余儀なくされたものの、ウクライナ東部・南部での地歩を固め、新たな大攻勢に先駆けて小刻みな前進を始めている。

ロシアのプーチン大統領はさらに深入りする覚悟を固めているように見受けられ、ロシア政府に対する制裁措置はまだロシア経済に壊滅的な影響を与えるには至っていない。また、ロシア軍にはまだ投入できるリソースが残されている。

だがこれまでのところ、ロシアは規模の点では劣るものの機敏なウクライナ軍に苦戦を強いられている。その先頭に立つのは、ウクライナでの戦争の象徴であり、戦火にさらされた国民を団結させる「顔」となっているボロディミル・ゼレンスキー大統領であり、軍を指揮する「鉄腕将軍」ワレリー・ザルジニー総司令官だ。

ウクライナ政府には達成感はない。米国の推定ではロシアとウクライナの双方で最大10万人の死傷者が出ており、東部での塹壕戦は消耗度が高く、犠牲者は増え続けている。

ロシアは基幹インフラを攻撃し、この冬、何百万人ものウクライナ国民が電力も暖房もなしに過ごした。ミサイルは民間の建物にも着弾し、ドニプロでは先月、集合住宅が全壊して少なくとも44人が死亡した。

ゼレンスキー大統領は2月初め、毎晩のビデオ演説で「状況は厳しくなっている」と表情を曇らせた。

ウクライナではロシアが攻撃を強化すると予測しており、その脅威に対抗するため、戦車を含む大型兵器や弾薬、より射程が長いミサイルを海外から入手しようと奔走している。

ゼレンスキー大統領の「要望リスト」で次に控えるのはジェット戦闘機だ。一部の同盟国は供給の意志を見せているものの、重要なパートナーである米国のバイデン大統領は首を縦に振らない。

首都キーウ(キエフ)中心部に配備されたウクライナ国家警備隊の兵士ら。2022年2月25日撮影(2023年 ロイター/Gleb Garanich)

<キーウ陥落せず>

首都は陥落せず、政府も存続した。

キーウ中心部で検問所を警備する領土防衛隊。2022年3月3日撮影(2023年 ロイター/Valentyn Ogirenko)

2022年2月24日の早朝、万単位のロシア軍兵士がウクライナに侵攻した。最初の数日で迅速な進撃を果たし、南部ではヘルソン周辺、北東ではウクライナ第2の都市ハリコフに迫った。

だが大方の関心は、ゼレンスキー大統領がとどまる首都キーウに集まっていた。人口300万人のこの街を占領し、大統領を拘束または殺害すれば、ウクライナはすぐに降伏する──。それがロシアの読みだったように見える。

キーウ市内では、ウクライナ国家警備隊の部隊が市内に通じる複数の橋で防衛体制を固め、道路には対戦車用の障害物が急きょ並べられた。ロシア軍の攻撃を前に、住民には火炎瓶の作り方が伝えられた。

キーウでは、不安やショック、恐怖の感情が渦巻いていた。首都は急襲を受けるのか。多くの生命が失われるのか。ロシアはどこまで迫ってきているのか。ウクライナはあれほど強大な敵を撃退できるのか──。

市外では、北に延びる幹線道路上にロシア軍が約64キロにも及ぶ長い車列を作っていた。圧倒的な軍勢が、ウクライナの首都に突撃するかのように見えた。

だが、大方の予想とは裏腹に、ロシア政府の電撃的な攻勢はキーウ市の外で止まった。

ロシア軍部隊はキーウのすぐ北西にあるイルピンやブチャの町には到達していた。ここではウクライナ側の捜査担当者が、民間人に対する戦時残虐行為と見られる膨大な証拠を収集している。ロシア政府はそうした容疑を否認している。

キーウ東部ブロワリの町や周辺でも戦闘があった。これら3つの街は現在、激烈な包囲戦の代名詞となっている。アパートや住宅はがれきと化し、地元住民は暴力的に支配された。

道路や線路のあちこちに民間人や兵士の遺体が放置され、ときには何週間も放置されていた。戦車や装甲車の焼け焦げた残骸が激しい衝突を物語る。

だが、周辺の地域は猛攻を受けたにもかかわらず、キーウ自体は陥落しなかった。ウクライナ軍は、ロシア側の補給線を崩したほか、部隊を運ぶ輸送機の着陸を阻止し、ロシア軍の装甲車を破壊して、ロシアの進軍を止めた。

ロシア政府は、これが長い戦いになることを悟った。

キーウで記者会見を行うゼレンスキー氏。2022年3月12日撮影のウクライナ大統領府提供写真(2023年 ロイター)

<国民を鼓舞する指導者、ゼレンスキー大統領>

俳優出身で大統領となったゼレンスキー氏は、ウクライナの断固たる抵抗を象徴する顔となった。

2022年3月16日、米ワシントンの連邦議事堂に集まった議員らに対しビデオ演説を行うゼレンスキー氏。代表撮影(2023年 ロイター)
 2月20日、ロシアによる侵攻が始まって1年、ウクライナと同国政府は生き残っただけではなく、反撃を仕掛けている。写真は東部バフムトの町の損壊した建物と、地面に突き刺さったロケット弾。21日撮影(2023年 ロイター/Alex Babenko)

テレビで活躍するコメディ俳優だった同氏だが、昨年は笑みを浮かべる理由などほとんどなかった。

西側当局の推定では、数万人の兵士と民間人が死亡しており、数百万人の国民が避難。東部を中心に国土のかなりの部分が荒廃した。

この動乱を通じて、ゼレンスキー氏は常に首都に踏みとどまり、iPhoneを使って毎晩国民に語りかけ、戦闘で廃墟と化した地域を訪問し、世界各国の指導者に支援を呼びかけ、世界がウクライナの苦境に対する関心を失わないよう奮闘した。

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自国が戦時下にあることを示すためカーキ色の服を着る45歳のゼレンスキー氏は、米タイム誌の2022年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。

「ゼレンスキー氏の戦時の指導者としての成功は、『勇気は広がっていく』という事実から来ている」と同誌の12月号は書いている。

それと並んで、「ロシアの勝利は他の誰にとっても凶報となる」と世界を説得する力があったことも、ゼレンスキー氏の成功の要因だ。

同氏はタイム誌に、「ロシアが私たちを破滅させれば、皆さんを照らす太陽も輝きを失うだろう」と語った。

侵攻が始まって数カ月間、ゼレンスキー氏はビデオ回線を通じて各国の議会に姿を現した。世界各国の首脳は鉄道でキーウに駆けつけて大統領と会談し、支援を約束し、肩を並べて写真に映ることで自身のイメージアップを図った。

何百億ドルにも相当する兵器がウクライナに提供された。それなしには、ウクライナは持ちこたえられなかったかもしれない。その他にも何百億ドルもの経済支援が寄せられ、戦火にさらされたウクライナ経済を支えた。

側近たちも一般のウクライナ国民も、ゼレンスキー氏の変化に気づいている。いたずらっぽい魅力や少年の様な表情は消えた。無精髭を生やし、顔の皺は深く刻まれ、目もくぼんできた。

キーウ郊外のボリスピリ国際空港で、英国からの支援物資を降ろす英国兵。2022年2月9日撮影(2023年 ロイター/Valentyn Ogirenko)

<西側の支援>

欧州連合(EU)と英国、米国は兵器提供だけでなく対ロシア制裁という形でもウクライナを支援してきた。

キーウ北部の最前線で、米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」を構えるウクライナ兵。2022年3月13日撮影(2023年 ロイター/Gleb Garanich)

侵攻が始まって以来、財政コストが上昇する中で、国際社会は先を争ってウクライナ支援を急いだ。

2022年、ウクライナは他国から約320億ドル(4兆3000億円)の経済支援を得て財政赤字を補填(ほてん)した。米国だけでも、1月末までに290億ドル相当の軍事支援を約束している。

それには、弾薬類から先進的な防空システム、高機動ロケット砲システムのハイマース(HIMARS)まで、ありとあらゆるものが含まれる。ハイマースは前線から離れた弾薬庫やロシア軍部隊、兵たん関係の標的を攻撃するために使用されている。

またウクライナは、最新鋭の戦車の供給を受ける約束を取り付けた。ただし、戦場に投入するには時間がかかり、専門家の間では、戦況に大きな影響を与えられるのか疑問視する声も上がる。

英国やドイツ、ポーランドなどの西側諸国もウクライナの軍事作戦を支援しているが、その役割は米国に比べれば規模が小さい。

ウクライナ当局者によれば、同国の財政赤字を補填(ほてん)するには今年380億ドルが必要になり、それ以外にロシアのミサイルやドローンによる攻撃の標的となったエネルギー関連インフラの緊急修理、地雷の撤去に170億ドルが必要だという。

戦闘を続けるためにこの先どの程度の支援が必要かは、戦況の推移や提供可能な兵器の種類、さらに同盟国の政治的意志次第ということになる。

破壊されたロシア軍の戦車。ハリコフ州イジュムで2022年9月20日撮影(2023年 ロイター/Gleb Garanich)

<攻撃と反撃>

戦術ミスと士気の低下がウクライナに反撃の機会を与えた。

ロシアのクラスノダール地方の村にある、同国民間軍事会社ワグネルの戦闘員の墓。2023年1月22日撮影の提供写真(2023年 ロイター)

西側諸国の情報機関当局者は、ロシアは相手の能力を過小評価し、自国の軍事能力を過大評価していたと言う。

ウクライナ軍はロシア軍に比べればはるかに小規模だが、全面侵攻を予期していたように見える。したがって、ロシア軍は南部及び北東部で迅速に進撃したものの、キーウ占領という主要目標は達成できなかった。

ウクライナがキーウ近郊のアントノフ国際空港を守り切ったことで、ロシアは兵員や装備を空輸で送り込むのに必要な前進拠点を確保できなかった。

ロシアは数千台の装甲車両を陸路で送り込み、その車列が渋滞したためウクライナ軍の反撃に遭った。そして、大規模な隊列がキーウ北方で後退を強いられた。

西側当局者や軍事専門家は、ロシア軍が進撃した一部の地域で適切な防衛線を構築して獲得した地域を統合することを怠ったため、ウクライナ軍が昨秋の反攻により広大な地域を奪還することが容易になったと指摘している。

兵器や装備の貯蔵庫や兵舎は、米国のハイマースなどの西側諸国がウクライナに提供したロケット砲やミサイルによる攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。近日中に配備予定の新型ロケット弾では、射程がこれまでの2倍の151キロになる。

開戦後、ロシア国防省が民間軍事会社ワグネルと対立するかのような状況がたびたび見られた。ワグネルは、プーチン氏の盟友であるエフゲニー・プリゴジン氏が経営し、ロシア各地の刑務所の受刑者も含め多数の戦闘員を採用している。

ワグネルはこれまで、ロシアにとっての戦場での最大級の勝利のいくつかは自社の部隊がもたらしたものだと主張しているが、ウクライナ側によれば、それには数千人の戦闘員が死亡するという高い代償を伴っている。

戦死者数の正確な推定はないものの、かなりの規模に達しており、旧ソ連がアフガニスタンにおける10年の紛争中に出した犠牲をはるかに上回っている。

現在ウクライナとロシアはウクライナ東部で消耗戦に入っており、激戦が続く中で、ロシア政府は定期的に小刻みな前進を発表している。

ここ数週間、戦闘の激しさは増している。ウクライナ、ロシアとも、まもなく春の本格的な攻勢を開始すると予想されている。

2022年5月3日、南東部の港湾都市マリウポリでロシア軍が包囲するアゾフスターリ製鉄所からウクライナ軍と民間人を退避させる「人道的回廊」を設けるよう、各国首脳に要請する集会がキーウ中心部で行われた(2023年 ロイター/Gleb Garanich)

<耐え忍ぶウクライナ市民>

ウクライナの人々の自由を守る意志は固い。

ドネツク州の前線にあるバフムトからの避難を控えた孫のアリーナちゃん(6)に別れを告げる祖母オルハさん。2023年1月31日撮影(2023年 ロイター/Oleksandr Ratushniak)

容赦のない激しい攻撃にもかかわらず、ロシアに屈しないというウクライナ市民の意志は固い。キーウ国際社会学研究所が2022年10月に行った世論調査では、ウクライナ国民の86%は、ロシアに対する抵抗の継続を今も支持している。

ロシアが侵攻を開始して以来、800万人以上のウクライナ国民が祖国を離れた。国連は、7000人以上の民間人が殺害され、それ以外に1万1500人が負傷したとしている。国内にとどまった人にとっても、ロシアのドローンやミサイルによるエネルギー関連インフラへの攻撃による停電により、日常生活は不自由になっている。どこに地雷が埋められているか分からないため、出歩くにも危険が伴う。

住宅や学校、病院も損傷を受け、破壊されている。国連が任命した調査官は、ウクライナの基幹インフラに対する攻撃が戦争犯罪に相当しないか調査を進めている。

また国連は、ロシアの占領地域において、レイプや拷問、処刑、児童監禁といった戦争犯罪が行われたという結論に達している。

プーチン政権は、民間人を標的とした攻撃を否定している。

だが昨年1年間を通じて、民間人が攻撃されたという深刻な報告は着実に積み重なっており、ウクライナ市民が現在耐えている厳しい生活状況や、犠牲者を伴う残虐行為が詳しく報じられている。

スライドショーには、一部遺体の写真が含まれます。

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世界の指導者らは、ウクライナ国民の不屈の闘志を称賛している。外向きには勇気を見せる同国民だが、一方で、世界保健機関(WHO)は国民の4人に1人にあたる約1000万人が紛争から来る精神面の不調に悩まされる恐れがあるとしている。

ロシアによるウクライナ侵攻から1年がたち、戦いには終わりが見えない。戦争の悪影響のほとんどは、国内にとどまったウクライナの人々が背負うことになるが、その中でも日常の生活は続いていく。前線から離れた町では、空襲警報の合間に人々がそれぞれの用事を足しに動いている。クリスマス市場も開催され、レストランは停電中でも調理して客をもてなす方法を習得した。

戦闘地域近くにとどまる人々は、ぎりぎりの状況に追い込まれながらも生き残ろうとしている。国外で難民として生活を再建しようとしている人たちも数百万人いる。

だが、国民が国を守ろうと戦い続け、ウクライナは存続している。

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Mike Collett-White記者、Dea Bankova記者、Aditi Bhandari記者、Prasanta Kumar Dutta記者、Michael Ovaska記者

(翻訳:エァクレーレン)

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