アングル:「世界の工場」メキシコ、低賃金で景気低迷

ロイター編集
アングル:「世界の工場」メキシコ、低賃金で景気低迷
 6月3日、安価な労働力を背景に中国に代わる「世界の工場」として存在感を増しているメキシコ経済が低迷している。写真はメキシコ市のペプシコ本社。1月撮影(2014年 ロイター/Tomas Bravo)
[メキシコシティ 3日 ロイター] - 安価な労働力を背景に中国に代わる「世界の工場」として存在感を増しているメキシコ経済が低迷している。慢性的な低賃金で民間消費が伸び悩んでいることが背景だ。
政府は一連の構造改革を通じ、経済活性化や海外投資の呼び込みを図っているが、第1・四半期の経済成長率は前期比0.3%にとどまり、今年の経済成長予測の下方修正を迫られた。
メキシコは米国に隣接していることもあり、中国に代わる世界の工場として著しい成長を遂げてきたが、国内経済は低賃金、公共支出の低迷、生産性の低さに悩まされている。
1992年━2012年の輸出は年平均8.6%増加しているが、経済成長率は年平均2.8%。
全国社会開発政策評価会議(CONEVAL)によると、1人当たりの実質労働所得は2005─12年に6%減少している。
所得が減少しているため、国内総生産(GDP)の3分の2以上を占める民間消費は伸び悩んでおり、昨年の小売売上高は0.1%増にとどまった。
同国では人口の半分近くを貧困層が占めている。
シンクタンク、CIDEのエコノミスト、ラウル・フェリス氏は、質の高い雇用が創出されておらず、安価な労働力に頼りすぎていると指摘。「人口が増えていなければ、経済成長率はゼロだろう」との見方を示した。
<多数の海外企業が進出>
メキシコは米国に隣接していることに加え、複数の国との自由貿易協定を結んでおり、麻薬組織など治安上の懸念はあるものの、魅力的な投資対象となっている。
ペプシコ、ネスレ、シスコの3社は今年に入り、総額70億ドル以上の対メキシコ投資を発表。昨年の海外直接投資は350億ドルと記録的な水準に達した。大部分が輸出製造業への投資だ。
国立統計地理情報院によると、労働者の7人に1人は1日の平均賃金が5.10ドル未満。平均時給は2.43ドルだ。
製造業で働く労働者の平均時給は2.70ドルと比較的高いが、米国の平均時給19.50ドルを大幅に下回っている。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの昨年の調査によると、製造業の労働コストは、中国より約2割安いという。
元ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジム・オニール氏は「メキシコは20年前、中国に朝食・昼食・夕食を奪われていたが、今は『メキシコがあるのになぜ中国が必要か』というのが、国際的な製造業の視点といえるかもしれない。特に自動車メーカーがそうだ」と述べた。
<拡大する自動車産業>
メキシコは乗用車生産で世界8位。フォード、アウディ、日産<7201.T>などが、向こう数年間で多額の投資を予定している。
PWCオートファクツの2013─2020年のデータによると、大手自動車メーカー10社の国別の投資計画では、メキシコの生産能力の伸びが世界で4位になる見通しだ。
中国では賃金が緩やかに上昇し、それに伴い、国内消費も伸びているが、メキシコでは人口が年150万人増加しており、十分な職を確保できないのが現状だ。
労働者の58%は所得を申告していない雇用主の下で働いており、慢性的な税収不足や、労働者の発言力低下につながっている。
メキシコ政府はこれまで賃金引き上げに消極的だったが、メキシコシティ市長が、全国レベルで賃金改善を話し合う必要があると訴えるなど、賃金引き上げに向けた圧力が強まり始めている。

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