フォトログ:インド東部で進まない人口抑制、根強い働き手待望

ロイター編集
フォトログ:インド東部で進まない人口抑制、根強い働き手待望
 インド東部ビハール州で保健師をしているプラティマ・クマリさんは、毎朝スクーターに乗って広大なトウモロコシ畑やパイナップル園のあるキシャンガンジ地区を縦横に動きながら、幾つもの村を回って若い夫婦と面会している。写真は、キシャンガンジ地区の地域医療センターでお産を終えたばかりのザメラン・ニーシャさん(33)。3月21日撮影(2023年 ロイター/Anushree Fadnavis)
[キシャンガンジ(インド) 11日 ロイター] - インド東部ビハール州で保健師をしているプラティマ・クマリさんは、毎朝スクーターに乗って広大なトウモロコシ畑やパイナップル園のあるキシャンガンジ地区を縦横に動きながら、幾つもの村を回って若い夫婦と面会している。
彼女はこの地区で、コンドームや経口避妊薬(ピル)を無料で配りつつ、これらの夫婦に産児制限や子どもを2人だけにとどめるメリットを説く。
だが、インドで最も出生率が高い同地区で、そうした努力はほとんど実ることはない。
クマリさんはロイターに「私が夫婦にコンドームの使用や、恒久的な産児制限方法の話をするとすぐに、彼らは無視するか話題を変えてしまう」と嘆いた。
キシャンガンジ地区とビハール州は、過去数十年にわたって人口増加を抑制してきたインド全土の中では例外的な存在だ。
インド全体で見ると、1人の女性が産む子どもの数は2019─21年に平均で2.0人と、人口置換出生率(総人口維持に必要な出生率)の2.1人をやや下回っていることが、公式統計から確認できる。
ところが、ビハール州はこの数字が2.98人と州別で最も高く、同州の保健衛生当局の見積もりではキシャンガンジ地区は4.8人か4.9人に達するという。
歴代の州政権は、特にキシャンガンジ地区の人口増加問題を認識し、抑制するための手を打ってきた。例えば、冒頭の避妊具無料配布のほか、不妊化手術を受ける女性には3000ルピー(約4900円)、男性には4000ルピーが支給される。不妊化手術を受けさせた医療従事者も、1件当たり500ルピーを受け取れる。
それでも成果は思わしくない。
<不妊化手術への不安>
キシャンガンジ地区の公営医療センターで働くパルバティ・ラジャク氏は「陣痛に苦しんでいる最中の女性と話をして、出産後直ちに不妊化手術をするよう仕向けても、最後にはいつも家族が結論を下してしまう」と、ある女性の5人目の出産を介助した直後に語った。
4人の子どもの母で現在5人目を妊娠しているジャハン・シェイクさんも、不妊化手術に否定的。義理の母親からは、少なくとも5人の子どもを産めば農場や自宅の手伝いになると言われたという。
また「良く分からないが、不妊化手術には不安を感じる。術後に何か問題は起きないのか、私の子どもの面倒を誰が見るのか」と口にした。
2021年のビハール州当局の報告書によると、20年に州が不妊化手術の対象とみなしたのは87万1307人だったが、実施できたのは46%だった。
医療従事者によると、男性は不妊化手術をすれば男らしさが損なわれると考えて、拒否反応を示しているという。
キシャンガンジ地区では、不妊化手術を受けた男性は人口のわずか0.2%、女性は22.8%だった。
同地区の公営病院で5人目の出産を終えたばかりのある女性は、自宅に戻る前に夫から不妊化手術を受ける許可をもらうつもりだ、と打ち明けた。
「私の体はこれ以上、子どもを持つ重圧を受け止められない。毎回(の出産)で生きていられたのは幸運だった」とロイターに語った。結局、夫の許しを得て、この女性は不妊化手術を受けられた。
<男の子を望む家族>
ロイターがこの報告書に関して14人の女性と6人の州政府の医療従事者に取材したところ、これらの女性のうち8人は、家族から最低5人の子どもを産むよう期待されていると述べた。
特に好まれるのが男の子だ。
36歳のチャンダニ・デビさんは「私は4回とも女の子を授かった。これから数年間待ってから、男の子を産むつもりだ」と、出産後の病院で涙をこらえながら話した。
ビハール州政府高官の間でも、人口抑制という大変な取り組みに向き合っているとの自覚はある。
医療分野を担当するテジャシュウィ・ヤダブ州副首相は「われわれは最善を尽くしているとはいえ、民主主義社会ではこれが精いっぱいだ。家族計画に関するルールを一方的に指図することはできない」と説明した。
州政府のクマール・パンサリ経済統計局長は、州の出生率は低下の兆しが徐々に現れつつあると指摘。ただ、政府が重視するのは、無料の不妊化手術や一時的な避妊具の積極利用といった仕組みが確実に浸透していくことだと強調した。
その一方で「問題は人々がそれらを使うのを敬遠している点で、われわれは彼らに対してずっとこうした手段があると改めて認識してもらう必要がある」と強調した。
(Rupam Jain記者)

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