欧州自動車市場の苦境鮮明、仏プジョーは公的支援・フォード工場閉鎖

ロイター編集
欧州自動車市場の苦境鮮明、仏プジョーは公的支援・フォード工場閉鎖
10月24日、債務危機や緊縮財政、高止まりする失業率を背景に、欧州市場における自動車メーカーの苦境が鮮明になっている。フォードが2014年末までに閉鎖すると発表したベルギーのヘンク工場で撮影(2012年 ロイター/Francois Lenoir)
[パリ/ヘンク(ベルギー) 24日 ロイター] 債務危機や緊縮財政、高止まりする失業率を背景に、欧州市場における自動車メーカーの苦境が鮮明になっている。
米フォード・モーターは24日、ベルギーのヘンク工場を2014年末までに閉鎖すると発表。仏PSAプジョー・シトロエンは政府支援を受け入れた。
域内最大手の独フォルクスワーゲン(VW)でさえも、第3・四半期決算が大幅な減益となるなど、欧州自動車メーカーを取り巻く環境は厳しさを増している。
IHSオートモーティブのアナリスト、ヘナー・レーン氏は「(欧州)自動車業界は過去5年間、危機的状況にあり、しばらく前から前兆が現れていた」とし、「メーカーにはこれに備える十分な時間があった。リーマン・ブラザーズ破たんのような想定外の出来事ではない」と指摘した。
フォードの欧州工場閉鎖は今年に入り3件目。今後は、より労働力が安いスペイン工場に生産を移管する。
同社はまた、25日に英国の労組との会合を設定した。一段の工場閉鎖が続くのではとの懸念が高まっている。
フォードの広報担当は、同社が英サウサンプトン工場を閉鎖する可能性があるとした報道について、コメントを拒否した。
フォードがプジョーへの公的支援に不満を抱いているのは明らかだ。
フォード幹部は匿名を条件に「われわれは必要なことを再度やろうとしている。その一方で、ライバル社は大規模な政府支援を求めている」と語った。
フォードは2008年に発生した金融危機時に、米ビッグスリー(米自動車大手3社)で唯一、政府支援下での破たんを通じた事業再生を免れている。
<一段の取り組み必要>
ジェフリーズのアナリストによると、ヘンク工場閉鎖により、フォードの欧州における設備稼働率は、現在のおよそ70%から2014年末までには最大82%に高まる可能性がある。だがそれでも「生産能力の合理化においては、一段の取り組みが必要な公算が大きい」という。
ただヘンク工場閉鎖は、承認されれば「欧州の過剰生産能力への対応で意義ある最初の一歩となる」とジェフリーズは指摘している。
閉鎖により、フォードはおよそ11億ドルの費用負担を余儀なくされるものの、年間7億3000万ドルを節減できる見通し。
数カ月前には、プジョーが仏オルネー工場の閉鎖に着手している。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は、独ボーフム工場を2016年までに閉鎖する計画を表明済みで、月内に計画の進ちょく状況を明らかにするとしている。
だが欧州の生産能力削減に乗り出したフォードと対照的に、GMは労組や提携先のプジョー、政府当局者との交渉で身動きがとりづらいようだ。
アナリストによると、欧州の組み立て工場(高級車メーカー除く)の設備稼働率は68%で、採算が取れる最低ラインである75―80%を下回っている。
VWも苦戦している。第3・四半期の営業利益は23億4000万ユーロ(30億4000万ドル)と、19%減少した。同社は欧州域外で稼いだ資金を国内の販促に回すなどして下支えを図っている。
<プジョーは公的支援の道>
プジョーは経営の悪化した金融子会社バンクPSAファイナンス向けに、115億ユーロ(149億ドル)の与信枠確保と新規融資に最大70億ユーロの政府保証をつけることで、債権銀行団と暫定合意に至ったとしている。
ただプジョーへの支援をめぐっては、欧州連合(EU)が反対する可能性がある。またVWの大株主である独ニーダーザクセン州もEU条約に抵触するとして反対する意向を示している。
プジョーもこれを認識している。ジャンバプティスト・ドシャティヨン最高財務責任者(CFO)は、計画ではプジョーが政府に対して保証料を支払うとし、「国家による救済ではなく支援だ。市場価格に基づいた価格設定が行われる」と述べた。
プジョーは支援と引き換えに、配当を停止し、幹部のストックオプションも無効とする。
プジョーが同日発表した第3・四半期決算では、売上高が3.9%減の129億3000万ユーロとなった。このうち中核事業の自動車製造部門の売上高は8.5%減の85億2000万ユーロ。
また6月末時点で24億ユーロだった純負債額が、年末までに30億ユーロに達するとの見通しを示した。
クレディ・スイスのアナリスト、エリック・ハウザー氏は、債務危機をめぐって3社それぞれの動きが見られると指摘。「フォードは生産能力を削減できることを示している。VWは浸透しにくい市場でシェアを拡大しようと、この好機をとらえている」とする一方、「政府支援で苦境をしのぎ、市況回復を待つのがプジョーのやり方だ」と述べた。
また、ドイツの自動車大手ダイムラーは24日、2012年通期の利益見通しを約10億ユーロ下方修正するとともに、目標としていた利益率の改善を13年に達成できないとの見方を示した。「市場の状況が大幅に悪化した」ためと説明した。
25日に送られるはずだった声明が、誤って予定より早く24日に電子メールで送信された。
声明では2012年の利払い・税引き前利益(EBIT、継続事業ベース)を80億ユーロと予想。従来予想では前年から横ばいの約90億ユーロとしていた。
ディーター・ツェッチェ最高経営責任者(CEO)は「困難な経済状況により、2012年通期は高水準を記録した前年のEBITに届かない公算だが、それでも堅調な利益を上げる見通しだ」と表明している。
同社は、13年の部門EBITマージンに関する目標も達成できない見通しとし、「現在広がっている市場の大幅な悪化を受け、目標の達成が一段と困難になった」と説明。目標の達成時期は先送りされる見通しだが、各部門で実施しているプログラムを通じて今後も目標達成に向けて精力的に取り組むと表明した。
声明によると、第3・四半期の営業利益は2%減の19億2000万ユーロ。ロイターがまとめたアナリストの予想平均18億7000万ユーロを上回っている。
*誤字を修正して再送します。

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