6月18日、17日の夜にブラジルで抗議デモに参加した20万人以上は、物価上昇を食い止めることから、政府の汚職撲滅まで幅広い改善を訴えた。写真は16日、リオデジャネイロで撮影(2013年 ロイター)
[リオデジャネイロ 18日 ロイター] - 17日の夜にブラジルで抗議デモに参加した20万人以上は、物価上昇を食い止めることから、政府の汚職撲滅まで幅広い改善を訴えた。
その中で際立つメッセージがあるとすれば、政治家が長年にわたって示してきたような楽観的な見通しを、国民はもう簡単には受け入れないということだ。
最近までブラジルは世界の中で最もうらやまれる国の1つだった。過去10年の大半にわたって輸出がブームを迎え、内需が拡大し、あるいは野心的な社会保障プログラムが導入されたことにより、国内総生産(GDP)成長率は平均で年4%を超え、3000万人以上の国民が貧困から脱することになった。
ただし、景気の低迷、インフレ率の加速、公共サービスの質の悪さが、こうした楽観を後退させるようになってきた。ブラジルは順調な道を歩んできたかもしれないが、この国の潜在性を考慮した場合に想像できるものと比べて、国民は日々、苛立たしい試練に直面している。
現地紙フォルハ・デ・サンパウロのコラムニスト、エリアネ・カンタニェデ氏は18日、「この国が楽園だという幻想は消えた」と書いている。
バス料金の値上げが引き金となってその他の不満が噴出したデモでは、どの政党にも矛先が向いておらず、どの政治家にも憤りは向けられていない。それでもなお、この抗議デモが巻き起こったこと自体が注目すべきことだ。
失業率は過去最低に近い水準を維持。ブラジルは1990年初め以降、こうした規模の社会的な混乱が巻き起こったことはない。デモを主導した世代は、ソーシャルメディアを通じて訴える若い世代が中心となっており、長年にわたって政治的な無関心が指摘されていた。
<抗議の声に耳を傾ける>
サッカーのコンフェデレーションズカップやローマ法王フランシスコ1世の訪問に加え、2014年のサッカー・ワールドカップ(W杯)や2016年のリオデジャネイロ五輪など、ブラジルでは今後数年で主要イベントが相次ぐ。
つい先週までブラジルの経済見通しに対する批判の拡大を「テロリズム」だと反論していたルセフ大統領は、抗議デモの参加者の大半が暴力を用いていないことを評価し、抗議の声に耳を傾けることを表明した。
ブラジリアでのスピーチで「政府は変化を強く求める声に耳を傾ける」と述べた。過去10年の成功で「人々がより多くを欲し、そうしたものにふさわしくなった」と付け加え、より良い病院や学校、交通手段、または抗議デモの参加者が要求した多くの要求の必要性を認めた。
ただし、景気が不透明な時期に、これ以上の手を打つことは困難。議会内の味方さえルセフ大統領の進める政策を妨げることもある。
ライバルらは、こうした不満を既に利用しており、来年の大統領選に野党の社会民主党からの出馬が見込まれるアエシオ・ネベス上院議員は18日、記者団に対し、デモの参加者らが「政権が宣伝するような景気の良いブラジルは存在しないということを明らかにした」と述べた。
任期3年目にあり、再選に向けて準備を進める中、ルセフ大統領への支持は特に低所得層の有権者の間で厚い。労働者階級の大半は、ようやく獲得した成功は、与党や前大統領の功績だと信じている。
<景気への悲観論>
最近では2010年に7.5%だった成長率は、昨年はわずか1%未満に減速。2013年も再び失望を誘うことになりそうだ。
サンパウロのコンサルティング会社、テンデンシアスの政治アナリスト、ラフェール・コルテス氏は「最近までは継続性が約束されることは良いことだった」と指摘。だが「今は一連の問題に対する本質的で新たな解決策を示す必要がある」という。
風向きの変化は、既に海外投資家によって示されているセンチメントを映し出している。こうした投資家がブラジルの可能性にかける情熱が、ブームの間に投資の流れを加速させた。
税率の高さや劣悪なインフラ、官僚主義、規制上の不透明感といった長年の問題に取り組む代わりに、細かく経済をコントロールしようとする政策に対し、これら投資家がだんだんとしびれを切らすようになってきた。
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はブラジルの債務格付けを引き下げる可能性を指摘。レアルは他の新興市場通貨と比べて振るわず、対ドルで3月に付けた高値から10%以上下落した。
キャピタル・エコノミクス(ロンドン)の新興市場担当チーフエコノミスト、ニール・シアリング氏は「すぐにブームが戻るようなブラジルの力を制限するような構造的な課題が多くある」と指摘した。
(Paulo Prada記者;翻訳 青山敦子;編集 吉瀬邦彦)
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