6月20日、ブラジルで続く全国規模のデモは収束する気配を見せていない。サンパウロで18日撮影(2013年 ロイター/Alex Almeida)
[サンパウロ 20日 ロイター] - ブラジルで続く全国規模のデモはどこに向かっているのだろうか。それは、デモを最初に始めた団体「フリーフェアムーブメント(「無賃運動」の意)」でさえ分からないことだ。
公共交通機関の無料化を訴えるフリーフェアの拠点はサンパウロで、メンバーは約40人。同団体のデモは結果的に数十万人を集め、抗議対象は汚職から警察の暴力に対する不満にまで広がった。この展開には世界が驚いたのと同時に、フリーフェアにとっても驚きだった。
拡大を続ける大規模デモを受けて今週、各都市で公共交通機関の運賃値下げが相次いで発表されている。大卒の30歳未満がほとんどだというフリーフェアの幹部たちは、抗議デモは一つの形になり、衰えることはないと口をそろえる。
大学生のニーナ・カペッロさん(23)は、「広範囲に広がったデモが歩む道を選ぶのは国民だ」と話す。
8年前に設立されたフリーフェアは、自らを明確なリーダーのいない「水平的組織」と表現。そのメッセージは、欧州やアラブ世界での若者による抗議活動と同様、ソーシャルメディアを通して拡散している。また、同団体は米国の「ウォール街を占拠せよ」運動のように、特定の政治指導者に対する抗議を行っている訳ではなく、いかなる政党にも関連していない。
フリーフェアのミッションは「改札機のない生活」。自治体が運営する公共交通機関は教育や医療と同列の公共サービスだとして、無料で利用する権利を訴えている。サンパウロでの運賃は現在約1.5ドル(約150円)。
道路を封鎖したり改札機を開放状態にしたりするなどして、抗議活動を行ってきたフリーフェアの知名度はここ数年で向上し、新メンバーや支持者らが増加していた。しかし、「全国区」になったのは先週になってからだ。
「サプライズだった」。銀行で働くフリーフェアの活動家、ダグラス・ベロメさん(29)は全国に広がったデモが信じられない様子。「8年間活動してきて、今年は大幅な規模拡大を期待していたが、10万人がデモに参加するとは思ってもみなかった」
<警察の暴力>
先週のデモへの警察の暴力的な対応が、フリーフェアの存在感を増すきっかけにもなった。サンパウロの大通りの閉鎖を目的に行われた6月13日のデモでは、警察の暴力的対応が目立った。
至近距離でゴム弾を顔に撃たれた記者の写真など、警察の過激な対応はソーシャルメディアや新聞などで大々的に伝えられた。警察との衝突は、団体の主張を必ずしも支持しないブラジル国民の心にも響いた。
過去10年で歴史的な好景気に沸いたブラジルでは最近、政治的な抗議デモは起こっていなかった。
抗議活動が拡大する中、フリーフェアの主導的立場は薄れ、今週のデモは他の団体によってフェイスブックを通じて組織された。こうした団体はさまざま名称を用い、「チェンジ、ブラジル」というスローガンも掲げられた。
<予期せぬ影響>
抗議デモは、ルセフ大統領をはじめとする政治家に動揺を与えており、大統領も、公共教育や医療問題に目を向けるよう訴えているデモ参加者を「偉大だ」とたたえる声明を発表した。
デモの参加者は20日になって大幅に増加。リオデジャネイロでは30万人が参加したほか、他都市でも数十万人規模のデモ隊が抗議の声を上げた。
政治アナリストからは、デモが国民の日常生活に支障を与え、ルセフ大統領や来年に選挙を控える議員らにも予期せぬ影響を与える可能性があるとの意見も出ている。
ただ、フリーフェアの幹部らに、公共交通機関の無料化という大目標からそれる意思はない。それは、リオデジャネイロやサンパウロなどの都市が、運賃値上げを撤回したからだという。
フリーフェアが20日に開いた記者会見の会場は、国内外のメディアで埋め尽くされた。「今起こっているすべてのことを消化する時間もなかった」。疲れた様子を見せたベロメさんだが、「われわれが感じているのは満足感だ」と胸を張った。
(原文執筆:Asher Levine記者 Silvio Cascione記者、翻訳:野村宏之、編集:橋本俊樹)
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