3月24日、ブラジルでは干ばつで主力の水力発電が支障をきたし、政府は停電や電力消費量を一定程度減らすことを求める割当制度導入の回避に向けて時間と格闘しつつある。写真は同国の送電塔。2月撮影(2014年 ロイター)
[リオデジャネイロ 24日 ロイター] -ブラジルでは干ばつで主力の水力発電が支障をきたし、政府は停電や電力消費量を一定程度減らすことを求める割当制度導入の回避に向けて時間と格闘しつつある。
10年の経済成長の間に供給電源は水力一辺倒から幾分多様化し、天候に左右される割合が低下したとはいえ、政府当局者や企業、投資家にとってこれは安心する理由にはならないだろう。
リオデジャネイロのエネルギーコンサルティング会社PSRは、電力消費量割当が実施されるオッズを約1対4とみており、同社のディレクター、ジョゼ・ローゼンブラット氏は「消費量割当の有無にかかわらず、干ばつがブラジルに及ぼす影響は大きくなる。その影響から逃れる方法はない」と指摘した。
ブラジルの電力供給において今もなお水力発電が約3分の2を占めるが、水力発電ダムの水位は過去最低近辺で推移。6月に始まるサッカーのワールドカップに向けて推定で60万人が海外から訪れるとみられる事態を迎え、電気の点灯や工場の操業を途切れさせないように国内の主要な火力発電所はいずれもフル稼働を続けている。
一方で電力各社は、水力から天然ガス、石炭、石油などの火力発電への転換で過去最大規模のコスト負担を強いられ、政府は13日、電力会社救済のため今年全体で120億レアル(52億ドル)を支払うとの見通しを示した。
こうした電力会社の電源切り替えにより恐らく今年と来年の物価上昇率は押し上げられる。またBTGパクチュアルによると、2001─02年の干ばつが参考になるとすれば、今年の成長率はこれまで予想されてきた1.7%から1%ないしそれ以下まで下がってしまう恐れがある。
ルセフ大統領にとって事態はさらに重大だ。10月の大統領選に向けて序盤の世論調査では優位に立っているものの、もっと雨が降らなければ再選の可能性が低下していくかもしれない。
リオデジャネイロのL・O・バプティスタのパートナーでエネルギー産業担当弁護士のギリェルメ・シュミット氏は「政府に対する信認は、ルセフ大統領の干ばつへの対処にかかっている。大統領にとってこれは自身に関わってくる」と述べた。
政府は、問題は雨が降らないことだと主張しているが、それと同じくらい政策にも問題がある、というのが多くのアナリストの声だ。
サンパウロのエネルギーコンサルティング会社ThymosEnergiaのジョアン・カルロス・メロ社長は「降雨がないというのは1つの要因だがそれだけではない。間違った政策や政策運営の不手際も存在する」と話す。
<エネルギー問題との因縁>
ブラジルの有力政治家でルセフ氏ほどエネルギー問題との縁が深い人物はほかに見当たらない。
同国では2001─02年の電力危機で消費者が電力使用を20%減らすよう命じられ、こうした消費量割当への怒りがルセフ氏の前任のルラ政権誕生につながった。
ルセフ氏は当時のルラ大統領の下で鉱業・エネルギー相や大統領首席補佐官を務め、消費量割当が再び起きないようにしなければならないと決意したのだ。
ルセフ氏は大統領就任後の2012年9月には、家庭向け電力料金を20%下げるという新たな目標も導入。水力発電事業者に、重要資産の運営契約の更新を前倒しで認める条件として電力料金の引き下げを求めた。これは政治的には人気を集めたが、電力株は急落し、今や国営のエレトロブラスなどの電力会社は需要の増加への対応で必要になる投資を賄う資金を持てなくなる、多くの人々が懸念している。
そしてタイミングとしては大統領選後になるが、電源切り替えコストが電力料金に転嫁され、値上がり率は最大で20%になる可能性がある。つまり大統領が打ち出した料金引き下げは、帳消しになってしまうだろう。
<消費量割当実施の確率上昇>
02年以降に建設された天然ガスや石炭、石油などの火力発電所がなければ、ブラジルは既に停電が発生する事態になっていたとみられる。
2月時点で、工業と農業が最も盛んな南東部と中西部の水力発電ダムの貯水率はわずか35%と、15年間の平均である66%を大きく下回っていた。3月半ば過ぎまで平年並みの降雨があったが、なお貯水率は35%にとどまっている。
このため2月には、同地域で平均6260メガワットの電力が火力によって供給されることになったが、PSRによると全体の30%ほどが政府の計画した発電量に届いておらず、送電線の不足から稼働していない発電所も一部にあるという。
BTGパクチュアルは17日付のリポートで、さらなる降雨がなければ、ブラジルはワールドカップ開催期間を含めて5月から10月まで、国内で5%の電力消費削減を命じる必要が出てくると予想。鉄鋼会社のゲルダウやウジミナスなどが電力料金の上昇や消費量割当などの事態からの悪影響が最も大きくなりそうだとした上で、消費量割当を先送りすれば消費削減幅が20%まで拡大する恐れもあると警告した。
政府側の懸念は乏しい。鉱業・エネルギー相は、消費量割当が実施される確率を「ゼロ」としている。
これに対してPSRは、4%ないしそれ以上の電力消費削減命令が出てくる確率を1月は17.5%としていたが、2月は確率が23.8%に切り上がった。
(Jeb Blount記者)
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