7月18日、日本で独自の進化を遂げたコンビニエンスストアが、その「ノウハウ」を海外展開にも組み込む新しい局面を迎えている。写真は5月、クアラルンプールのセブンイレブン店舗内(2014 ロイター/Samsul Said)
[東京 18日 ロイター] - 日本で独自の進化を遂げたコンビニエンスストアが、その「ノウハウ」を海外展開にも組み込む新しい局面を迎えている。
最大手のセブン―イレブンは、来年夏に1号店を開くアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、日本式ノウハウを付加した形で展開を図る。すでに進出している国・地域でも追加支援を実施することで、本格的な日本式コンビニの輸出に取り組む。
<海外店、多くは日本と別の商法>
セブン─イレブンは3月末現在、国内外で5万2811店舗を展開している。このうち、日本以外の地域は約3万6000店舗強で、米国の8163店舗をはじめとして、タイや韓国、台湾など15カ国・地域に広がっている。
しかし、日本で40%のシェアを誇るセブン─イレブンが世界各国で展開されているとイメージすると、間違いだ。
ハワイや中国・山東省という一部を除いては、基本的にマスターフランチャイザーである米セブン―イレブン・インク(SEI)とライセンス契約を結び、商標を利用しているにすぎない。
出店戦略、マーチャンダイジング(商品政策)、単品管理といったオペレーションなど、これまでセブン―イレブン・ジャパン(SEJ)が日本で積み重ね、強みとしてきたノウハウを活かした店舗運営とは、全く別の「商法」が展開されている。
これが何をもたらすのか――。ライセンス供与を受けただけのセブン─イレブンと、日本が関与したセブン─イレブンでは、1日の1店舗当たりの販売額(日販)に大きな差が生じている。
例えば、国内でセブン─イレブンとローソン<2651.T>では、14年2月期の平均日販は12万円の差が生じているが、セブンイ―レブン内でも、SEJが関与した店舗とそうでない店舗では、大きなギャップがある。ノウハウを活用していない海外のセブン─イレブンの日販は、各国の物価水準を調整した後の比較で、日本の半分以下の国が多く、高いところでも60%程度にとどまっている。
<来年夏のドバイ出店は新たな一歩>
セブン─イレブンの海外店舗に日本式の事業インフラを導入するための新たな一歩となるのが、来年夏に予定しているUAE・ドバイへの出店だ。海外出店では初めて準備段階からSEJが関わっており、中東への初進出というだけでなく、海外展開の新たな方法として大きな意味を持つことになる。
2020年のドバイ万博に向けて、中小小売業の近代化を目指すUAEが理想のチェーンとして目を付けたのがSEJだった。進出要請はSEIではなくSEJに持ち込まれたため、ライセンス付与は従来通りSEIが行うものの、ライセンス契約と同時にSEJによる支援契約も結ばれるという、新しい形となった。SEIのドバイ駐在事務所にSEJから4人が出向する。
2年前に案件が持ち込まれて以降、市場調査を実施。3兆円というUAE小売市場の中で、コンビニは200億円と小さい。成長の余地が十分にあるほか、「国が大きくないため、物流は構築しやすい」(酒井良次常務)と判断。来年夏から3年間で100店舗をドバイに集中(ドミナント)出店する中で、ドバイ以外の地域への出店も模索する。
こうした新たな海外展開で実績が残れば「進出先の熱意や市場があれば、最初からSEJが関わる形で海外展開する可能性はある」(酒井常務)という。
<進まない既進出国へのSEJ支援>
ただ、既存ライセンシーについても「底上げが必要」(酒井常務)という認識は強く、SEJによる支援プログラムをスタートさせている。
各社の出店競争が激化し、不振店の増加に見舞われていた韓国では、2012年にSEJによる支援プログラムを導入。店舗展開を量から質に転換するために、SEJから6人程度が毎月定期的に韓国を訪れ、店舗開発や店舗運営、店舗経営相談員(OFC、オペレーション・フィールド・カウンセラー)の教育、商品開発・物流についてサポートしている。
このほかモデル店舗を設けて、徹底的に市場調査を実施。品ぞろえやレイアウトの改革、店員の教育などを図った結果、2年半経過した現在でも、日販は2桁成長を遂げているという。
しかし、この支援プログラムを導入したのは韓国のみにとどまる。「相手先の意向もあり、押し付けるわけにはいかない。国内事業が中心だったSEJ側の人材にも限りがあり、なかなか手を広げられない」(酒井常務)という事情も影響している。
韓国の運営会社「コリアセブン」のJung Seung InCEO(最高経営責任者)は、7月上旬にも来日して、SEJのOFC教育を確認したという。酒井常務は「就任以来、非常に前向きに取り組んでいる。これから日本流取り込みのスピードが上がると期待している」と話す。
韓国が軌道に乗れば、他の既存ライセンシーに提示する具体的な成功例となる。また、SEJからSEIには執行役員も含めて出向するなど、ライセンスを付与する側のSEI自体の改革も進められている。
セブン─イレブンは、むやみに進出国・地域を拡大する戦略はとっていない。複数のアプローチにより、海外におけるセブンイレブンの「質の向上」を図ることで、収益の引き上げにつなげる方針だ。
世界全体での売上高を16年2月期に10兆円規模にする計画を持っているセブン─イレブンの14年2月期売上高は8.2兆円。さまざまな取り組みによる進出国での日販増が、目標達成に向けた鍵となっている。
清水律子 編集:田巻一彦
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」