
10月10日、公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党の高市早苗総裁と会談し、連立を離脱する方針を伝えた。26年間続いた自公の協力体制は解消され、日本の政治は新たな局面を迎える。写真は2016年7月、都内で撮影(2025年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 10日 ロイター] - 公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党の高市早苗総裁と会談し、連立を離脱する方針を伝えた。26年間続いた自公の協力体制は解消され、日本の政治は新たな局面を迎える。
市場関係者に見方を聞いた。
◎政権枠組み見極め必要、円安は行き過ぎ
<日本総研 調査部マクロ経済研究センター研究員 吉田剛士氏>
外国為替市場では、公明党の連立離脱を受けて円が152円前半まで一時買われたが、その後は再び売り戻されている。
最初の円高は、今後発足するであろう「高市政権」の揺らぎに対する不安から、これまで期待先行で進んできた円安の反動が発生したとみられる。その後の円安は、今後の政治情勢が不透明なため、新たな連立交渉などを見極める必要があるとの見方からではないかと考えている。
そもそも自民党総裁選後の円安は急速で、行き過ぎだとみている。高市氏の掲げる政策が全て実現するわけではないだろうし、物価高に歯止めをかけたい高市氏にとって円安はコストプッシュ型のインフレが加速することになる。急速に冷え込んだ日銀利上げ観測も、高市氏が中立的な立場を今後示していけば、市場の見方は再び実施へ変化していくだろう。
ドルは今後どこかで、150円台を割り込むと予想している。
◎次の首相不明で、石破首相長期化も
<法政大 河野有理教授(政治思想史)>
公明党の連立離脱により、首班指名で誰が首相になるかわからない混沌とした政治状況になった。混沌を解消するには衆院解散しかないと思われるが、どの首相が解散に踏み切るのかわからない状態。参政党や国民民主党の人気は続いており、自民党としては今解散したら絶対に勝てないだろう。
公明党にとっても連立離脱によって低迷している党勢が回復できるとは思えない。
首班指名選挙で誰が首相になれるかわからないなか、石破茂首相が、自民党総裁は辞任しながら首相を継続する総・総分離が長期化する可能性も否定できない。先行きは非常に不透明だ。
◎市場巻き戻しのリスク、10月利上げ再開難しく
<SBI新生銀行 シニアエコノミスト 森翔太郎氏>
政局を巡る不透明感は一段と高まった。現在の各党の動向を踏まえると、他の野党との連立枠組みの拡大も見通しがたい情勢だ。高市自民党総裁が首相指名を勝ち取ったとしても、公明党が個々の政策に対して是々非々の対応となれば、財政政策運営は難しさを増すだろう。当面はスケジュールの遅れも懸念され、スムーズな政策実行が難しいとの見方が広がる可能性もある。当初15日とされていた臨時国会召集は遅れることが必至で、組閣後の経済対策作成、25年度補正予算案の審議の遅れが懸念される。
円安が物価上振れリスクとして警戒される水準まで進行しているが、高市自民党総裁の政策期待を背景とした最近の金融市場の動きが大きく巻き戻されるリスクもある。政治がこうした状況に陥ったことで、日銀が10月に利上げ再開に踏み切ることは一段と難しくなったとみている。
◎10月利上げ消える、政治安定なら12―1月か
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 鶴田啓介シニア債券ストラテジスト>
高市早苗氏の自民党総裁選出で日銀の10月利上げの可能性は「風前のともしび」になっていたが、その火が消えた。スケジュール面で10月会合までに政治との連携が取りづらくなっていることに加え、植田和男日銀総裁も利上げに焦っていないようにみえる。
政治情勢が落ち着けば、12月あるいは来年1月の利上げは可能性があるとみている。高市自民総裁選出で円安が進んだが、公明党の連立政権離脱が伝わっても現時点で円高進展は限定的になっている。円安の持続は物価の押し上げリスクになる。
一方で、財政の行方は両方のシナリオが考えられる。自民が少数与党で行く場合、野党の主張を取り入れて財政拡張にならざるを得ない。その半面で、各党の主張がバラバラで「決められない政治」に陥れば、何も決まらず財政が出動されないことになる。
◎高市新総裁で忍耐の限界
<法政大大学院 白鳥浩教授(現代政治分析)>
高市早苗自民新総裁は就任後、公明の支持母体・創価学会へのあいさつより先に国民民主の玉木雄一郎代表と面会したと報じられた。学会員にとっては「何様のつもりだ」となり忍耐の限界だったのだろう。
不記載問題で秘書が在宅起訴された新しい問題を公明は重視している中で、幹事長代行に萩生田光一氏を起用した点についても、公明内の連立離脱論を甘くみていたところがある。高市氏は慌てて(党役員人事などで)非主流派に追いやった菅義偉元首相らに頭を下げて公明との関係修復を模索し始めたようだが、時すでに遅しだった。
今後、玉木雄一郎氏擁立で野党連立政権の可能性は十分ある。野党としても、いまは千載一遇のチャンスであると認識しなければなぜ野党なのだということになる。
公明もキャスティングボートを握る千載一遇のチャンスで、仮に自民と関係修復しても、今後の自民党は公明党さまさまになる。
首班指名で公明が斉藤と書くだけでも、公明は野党に恩を売ることもできる。
◎政局混迷深まる、円債市場は様子見継続か
<明治安田アセットマネジメント 債券運用部シニア・ポートフォリオ・マネジャー 大崎秀一氏>
公明党の自公連立政権からの離脱方針を受けて、ますます政局混迷が深まった。
時間外取引の日経平均株価が急落するなど、「高市トレード」の巻き戻しの動きが出ている。以前のように株が下落すれば債券が買われるという構図は薄れてきている。リスク回避の動きが強まれば中短期ゾーンは買われやすい一方、株高を背景とした年金勢のリバランスの動きが後退するため、超長期ゾーンの買いをサポートするかは不明だ。このため、イールドカーブはツイスト・スティープする可能性がある。
今後自民党が野党寄りとなれば財政拡大が意識され、金利にはネガティブ要因となる。政局の行方を見極めるため市場参加者はポジションを取りづらく、様子見姿勢が続くだろう。
日銀の金融政策を巡っては、10月会合での利上げは難しいとみている。ただ、足元で円安が一段と進行すれば、物価の上振れリスクから利上げが意識されやすく、全体的に金利上昇圧力がかかりやすいとみている。
◎過熱感を解消、高市シナリオは不変
<三井住友トラスト・アセットマネジメント チーフストラテジスト 上野裕之氏>
引け後の先物市場では高市トレードの巻き戻しが起きており、日経平均先物は4万7600円台を推移しているが、自民党総裁選挙の投開票前の水準よりは高い。自民党と公明党の連立解消はサプライズではあるものの、マーケットは高市早苗総裁の首相就任のシナリオは不変とみているのではないか。ドル/円も大きな変動は見られず、マーケットは至って冷静だ。株式市場に関しては、これまでの行き過ぎた過熱感を冷やしているという見方が正しいだろう。
今後の政権枠組みには見極めが必要だ。市場関係者の多くは、自民党がガソリン暫定税率廃止、年収の壁の引き上げといった政策を巡り国民民主党と日本維新の会で合意し、協力関係を深めるのがメインシナリオとみている。立憲民主党、共産党、れいわ新選組などの野党が今後どう出るかは注目ポイントではあるものの、総理指名で一本化するのは難しいのではないか。
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