
中国人民銀行(中央銀行)はより積極的な緩和姿勢に転換したが、一連の政策措置は、消費者需要の持続的な低迷という経済成長の最大の課題に切り込んでいない。写真は中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁。北京で24日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)
[北京/香港 25日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)はより積極的な緩和姿勢に転換したが、一連の政策措置は、消費者需要の持続的な低迷という経済成長の最大の課題に切り込んでいない。
人民銀が24日に発表した流動性供給と借り入れコストの引き下げは、市場心理を押し上げた。しかしそれは金融緩和措置を補完する財政刺激策が近く導入されるとの期待が高まったのが主な理由だ。
中国経済は不動産市場の急激な悪化と消費者信頼感の低迷により、強いデフレ圧力に直面しており、今年の約5%の成長目標を達成できない恐れがある。アナリストらは消費者の懐にお金を入れる財政政策だけがこの問題に対処できると指摘している。
スタンダード・チャータードの中華圏・北アジア担当チーフエコノミスト、シュアン・ディン氏は「人民銀の政策は予想を上回ったが、現在の経済における主な問題は流動性不足ではない」と語る。「実体経済を支援するという点で、財政政策を中心とした新たな政策パッケージが実施されるだろう」と予想した。
HSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレッド・ニューマン氏も当局は需要を押し上げる必要があり、それは「財政政策など他の政策手段」によって可能になると述べた。
人民銀は新型コロナのパンデミック(世界的流行)以降で最も大胆な対策を打ち出しているが、景気刺激策の全体的な規模は依然として小さく、アナリストは効果を疑問視している。
家計や企業の資金需要が弱いことを踏まえると、銀行の預金準備率引き下げによって金融システムに放出される1兆元(1420億ドル)は、実体経済への融資よりも国債の購入に拍車をかける可能性がある。
チャイナ・ベージュブック(CBB)はメモで「企業心理が非常に弱いため、(企業は)過去何年も信用状況にかかわらず借り入れに消極的だった」と指摘。「また貯蓄から得られる収益が悪化している状況では、家計は急に楽観的になることはない」と分析した。
既存の住宅ローン金利の引き下げにより、家計は年間1500億元の負担減になる。しかしこれは年間の国内総生産(GDP)の0.12%に過ぎず、一部は住宅ローンの繰り上げ返済に回される可能性がある。
ANZの中華圏チーフ・エコノミスト、レイモンド・ユン氏の推計によると、中国の消費者は収入が100元増えても、そのうちの35元しか消費しない。
人民銀の20ベーシスポイント(bp)の利下げは通常より大きいものの、他の多くの中銀と比較すると小さい。
ガベカル・ドラゴノミクスのアナリストはメモで、「人民銀が発表した主要な金融政策措置はいずれも過去にすでに実施されており、経済への影響は最小限だった」として、今回の措置は「控えめ」な規模だと指摘。「従ってこのパッケージの重要性は、他の動きへの扉を開くかどうかにある」との見方を示した。
<さらなる刺激策はあるか>
HSBCのニューマン氏は人民銀が流動性を注入することで、政府が追加刺激策のために債券を発行する余地が広がるとし、「流動性供給が数週間以内に大規模な債券発行計画が発表されるシグナルであることを市場は期待している」と語った。
INGの中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、短期的に経済を刺激する最も直接的な方法は政府投資の拡大だと語る。買い物券のような需要刺激策がエコノミストの間で好まれるようになっているという。
中国のGDPに占める個人消費の割合は、世界の平均を約20%ポイント下回っている。その一方で投資の割合は平均を20ポイント上回っている。これは政府部門から消費者への移転によって対処できる可能性がある。
野村のアナリストはメモで、低所得層への年金や医療給付の引き上げ、出産補助を行うことで、経済のバランス調整をある程度進めることができるとの見方を示した。しかしそうした措置はすぐには取られないかもしれないとした。
「今回のような金融政策措置だけでは悪化する景気減速を食い止めるには不十分で、財政刺激策が前面に出るべきだと考えている」とした上で、投資家には過度に楽観的にならないよう促した。
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