アングル:中国政府、売れ残り住宅処分へ「一石二鳥」の打開策

アングル:中国、ビザなし渡航で観光客増加 コロナ前復帰には数々の壁
中国は現在、景気と個人消費の回復を目指して外国人観光客の誘致に力を入れており、多くの旅行者が中国に押し寄せている。写真は北京で2017年1月撮影(2024年 ロイター/Jason Lee)
[北京/香港 16日 ロイター] - 中国政府は5月、地方政府に対し、新築住宅を買い取って低所得者が住める「保障性住宅」政策に活用するよう命じた。これを受けて地方政府がまず打ち出したのは、保障性住宅を購入したり賃貸できる資格者を低所得者層以外にも広げることで、人手不足など他の経済問題の解決にも役立てる計画だ。
中国では長引く不動産危機の下、売れ残り住宅の在庫が膨らみ、開発会社の資金繰りを悪化させ、住宅価格や消費者信頼感、経済活動に大きな打撃を及ぼしている。
保障性住宅という中国政府の新たなアプローチは、同国では珍しく消費者志向の政策であり、地方政府から家計への資源移転を約束するものだ、と一部のアナリストは言う。こうした内需拡大策を求める声は以前から多かった。
しかし、中国20都市の発表文書を分析したところ、地方政府はさらに大きな視野でこの政策に向き合っていることが分かる。
大半の都市は医師や教師など、通常の低所得者層以外にも保障性住宅の需要を測るためのアンケートを配布した。地方から出稼ぎに来ている工場労働者や、科学研究者に関心を促している都市さえある。
エコノミストによると、各都市は頭脳流出や、上海や深センのような巨大都市への人口流出に対処する方法として保障性住宅政策を活用しているようだ。
比較的人口が少ない都市では、工場の労働力不足を緩和し、医療や教育を強化すれば経済活動が活性化されて課税ベースも拡大するため、経済的、社会的圧力の軽減につながる可能性がある。
華宝信託のエコノミスト、ニー・ウェン氏は「小規模な都市の方が、保障性住宅の開発に意欲的だ。手ごろな家賃で出稼ぎ労働者を呼び込み、人口流出を抑えることができる。保障性住宅は警察官や医師、教師にも販売することが可能で、人材の確保にも役立つ」と解説した。
中国全土の都市は5月に指示した政策を実施するための取り組みについて内容を発表し始めており、政策の対象となる層の詳細が明らかになりつつある。
ロイターが調査した20都市の発表文書のうち10件には、医療スタッフ、教師、その他の公共部門従業員にアンケートを実施する旨が盛り込まれていた。東部の煙台市と竜口市は、出稼ぎ労働者に保障性住宅の購入・賃貸資格があるとしている。
より裕福な浙江省の杭州市と金華市は、科学者による購入・賃貸を求めている。北京に近い河北省の唐山市は、新に流入してくる市民と35歳未満の人たちを対象とした。
アナリストらは、これらのアンケートに強い関心が寄せられると予想する。しかし、当局が購入する住宅が劣悪な状態だったり場所が不便だったりすれば、賃貸・購入希望者の多くは考えを変えるかもしれない。
<すごく貧しい>
中央政府はこの政策のために全国で5000億元(約690億ドル)を用意。多くのアナリストは、将来的に額が積み増されると予想している。
保障性住宅に対する補助金の規模を明らかにしている都市はほとんどない。
ただ煙台市と竜口市は、大卒者には毎月400元、それ以外の人たちには300元の家賃割引を提供し、世帯員が1人増えるごとにさらに50元を割り引く。
地元紙とオンライン賃貸プラットフォームによると、これは両都市で少なくとも20%の補助に相当する。
テック大手のアリババ・グループが本拠を構える杭州市は、50平米の保障性住宅の家賃が月500元程度で済むと説明している。
南西部の楽山市と南部の永州市でアンケートに回答した住民によると、110平米までのマンションなら市場価格の3分の2程度で購入できるという。
楽山市の教師、エマ・シューさん(24)にとって、これは約10万元の値下げに相当し、月収4300元の身でも住宅を購入できるようになる。毎月の住宅ローン返済額は1000元強となり、現在の家賃とほぼ同じだ。
「私はすごく貧しい。田舎から出てきて教員寮に住み、学生ローンを返し、両親を養っている。貯金もできていない」と語るシューさんは、住宅購入のためにではなく、万が一の事態に備えて貯蓄できるようになる日を楽しみにしている。
<最終目標は消費拡大>
アナリストは、長期的に家計消費を促進するためには、この制度を拡大し、他の改革で補完する必要があると言う。
ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ハリー・マーフィー・クルーズ氏は、保障性住宅が現時点で中国の住宅在庫の約5%を占めると推計。これを20%ないし30%に引き上げれば、多くの中国人やマクロレベルでの家計消費にとって「大きな恩恵」となるが、そのためには3兆元から4兆元の資金手当てが必要になるという。
クルーズ氏は「中国は経済の不均衡を是正することが必須だ。将来的に持続的な成長を引っ張っていくには家計の消費が必要になる。保障性住宅はそのための特効薬ではないが、戦略の重要な柱であるのは間違いない」と話す。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab