
日銀は30―31日に開いた金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用を再び柔軟化することを賛成多数で決めた。写真は都内の日銀本店で9月撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
[東京 31日 ロイター] - 日銀は30―31日に開いた金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用を再び柔軟化することを賛成多数で決めた。10年金利について、1.0%を上限の「目途」とした上で、連続指し値オペを通じた厳格な金利コントロールから「大規模な国債買い入れと機動的なオペ運営で金利操作を行う」方式に転換し、1%を超える金利上昇を事実上容認する。
市場関係者に見方を聞いた。
◎引き締め加速ない、株価は年内レンジか
<野村アセットマネジメント シニア・ストラテジスト 石黒英之氏>
日銀は、名目10年金利の1%を容認する一方、金融緩和自体は継続しており、一気に引き締め加速というわけではない。期待インフレ率がかなり上がってきているため、実質金利が低下して米日の金利差が開いて円安に歯止めが効かなくなるリスクを警戒したのではないか。
株価は事前に警戒し、持ち高調整の売りも出ていた。企業決算はしっかりしているし、バリュエーション的にも魅力的な水準となっており、目先は自律反発しやすい。一方、世界的な経済スローダウンの警戒もあるため、年内はレンジ取引ではないか。
長期金利が上がって実体経済にすぐに悪影響が出るような状況ではない。人手不足感が強まって賃金が上がりやすい状況にある。徐々に金利の上昇に慣れながら、実体経済も脱デフレに向かうのではないか。
◎インフレ見通しは慎重、円買い材料にならず
<あおぞら銀行 チーフ・マーケット・ストラテジスト 諸我晃氏>
事前報道ですでに市場は織り込んでいたことから、ドルの水準は元に戻った。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化で今後の金融引き締めが視野に入ってきたことから、ドルは上にも抜けずらい状況だ。一方で、展望リポートでは24年度の消費者物価指数見通し(除く生鮮食品)は2.8%に引き上げられたものの、コアは1.9%となったほか、25年度についても2%を超えなかった。日銀はインフレに関して慎重にみており、円買い材料にはならなかった。結果的にドルはもみ合いでの推移となっている。
ドルは徐々にピークアウトしていくとみているものの、当面はもみ合いでの推移となるのではないか。米金利が低下しない限り、ドルも下がらないだろう。今後発表される米経済指標を確認しながらとなりそうだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)については市場のコンセンサス通りになるとみており、そこまで値幅は出ないだろう。
きょう発表される10月の外国為替平衡操作の実施状況で介入がなかったことが確認されれば、円安に振れる可能性がある。ただ、今後政府・日銀が為替介入を実施する可能性もあることから、ドルは上を攻めづらいとみている。
◎YCC形骸化進む、なし崩し的な印象も否めず
<ニッセイ基礎研究所 上席エコノミスト 上野剛志氏>
7月会合で事実上の金利上限を1%に引き上げたものの、わずか3カ月で撤回し、さらに修正を重ねる形となった。狙いは2つあるとみている。長期金利が1%に近づき、イールドカーブがゆがむことを懸念したことだ。また足元の円安進行で輸入物価高を起点とする物価高が長引くリスクも台頭し、政府側も危機感を高める中、緩和の手を緩めることを示すことで、円安を抑制する効果を狙った可能性がある。なし崩し的な政策修正をすると日銀の政策運営への信頼感が低下しかねない。午後3時半からの日銀総裁会見で納得感のある説明が出てくるか注目だ。
今回の措置でYCC(イールドカーブ・コントロール)による長期金利の抑制力が低下し、形骸化が一層進んだ。結果的に金融正常化に向けた一歩にさらに進んだともいえるほか、本格的な正常化運営に向けた布石が打たれたという見方もできる。
円債市場は一旦下げ幅を縮小したものの、再び売り圧力が強まった。展望レポートで24年度の物価見通し(除く生鮮食品)は2.8%と強い数字となったことはややタカ派的と捉えた可能性がある。日銀として目指している物価目標の持続的・安定的な達成に近づいていることを意味しているのか、25年度は2%未達で賃上げに伴う好循環で2%というビジョンから距離があることを意味しているのか、見極めていく必要がありそうだ。
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