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コラム

コラム:コロナ変異種拡大、英「栄光なき孤立」の憂鬱

[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国での新型コロナウイルス変異種の感染急拡大からは、コロナ禍がもたらす次の憂鬱な展開が垣間見える。イングランド地域南東部で感染力の高い変異種が拡大すると、欧州連合(EU)各国やカナダ、インドは21日に英国との航空便の往来を断つことを決め、フランスは48時間にわたり英国からの陸上貨物輸送を停止した。

 12月21日、英国での新型コロナウイルス変異種の感染急拡大からは、コロナ禍がもたらす次の憂鬱な展開が垣間見える。写真はリバプールで、新型コロナの検査に並ぶ人々。11月6日撮影(2020年 ロイター/Carl Recine)

コロナとの戦いは新たな幕が開いた。そこには国内と世界にとって、ともに憂慮すべき要素がある。

「栄光ある孤立」(19世紀後半の大英帝国の非同盟政策)とは程遠い孤立によってショックを味わった英国だが、これは国内的にはプラスの側面もある。クリスマス前後の5日間、人の集まりにより感染に拍車が掛かる恐れがあったが、この事態を受けて政府はこの間の行動制限を強化した。今回の事態は、国民が「品物が目に見えて不足する事態」に対してどれほど備えができているかを試す格好の「ストレステスト」にもなる。

通常は英仏海峡を渡って、毎日5000台のトラックが英国に入っている。冬に英国民が消費する生鮮の果実・野菜はほぼすべて、これらのトラックが運んでくるものだ。スーパーマーケット大手J・セインズベリーは、数日中にレタス、ブロッコリー、カリフラワーなどの野菜が品切れになるとの見通しを出した。そうなれば、ジョンソン英首相は12月31日の期限前にEU離脱後の貿易協定に合意するのが理にかなっていると考えるようになるかもしれない。

しかし大きな問題が2つある。英国の封鎖状態がより厳格化、長期化すれば、世界的に見てもコロナ禍の打撃が大きかった国内経済は圧迫されるだろう。予算責任局(OBR)の中心予想では既に、2025年までに失業率が7.5%、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率が4%、債務比率が105%に達するとの見通しが描かれている。OBRの最悪シナリオでは、これらの予測値がそれぞれ11%、6%、123%だ。

ブリティッシュ・エアウェイズやイージージェットなどの英航空会社の株価は、来年になれば状況が徐々に好転するとの期待に支えられてきた。直近の事態を受け、これらの航空会社やショッピングモール運営ハマーソンの株価は急落した。

もう1つの問題は世界規模のものだ。もちろん今用意されつつあるワクチンが変異種に効かないという確かな科学的証拠があるわけではないし、EU域内の国境閉鎖はコロナ禍の初期にも経験済みの対応だ。しかし今回の国境閉鎖のスピードには、変異種が英国外に広がることへの恐怖がにじみ出ている。変異種は例えば南アフリカなどで既に感染の急拡大を招いている。

21日に英FTSE100種株価指数は一時2.5%下落したが、フランスのCAC40種指数の下落率はそれより大きい3.5%だ。英国の変異種ショックが示した本当のリスクは、21年の成長率見通しが下がる国が英国だけにとどまらない可能性だろう。

●背景となるニュース

*ジョンソン英首相が感染力の強い新型コロナウイルス変異種について警告を発したのを受け、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、オーストリア、スイス、アイルランド、ベルギー、イスラエル、インド、カナダなどの各国は21日、英国からの入国停止を決めた。

*フランス政府は英国からの入国を48時間停止したため、大型トラックが英ドーバー港から欧州大陸に向けて出発できなくなった。

*英陸上輸送協会によると、通常は1日に1万台前後のトラックがドーバー港を経由して英仏間を行き来している。

*英スーパーマーケット大手J・セインズベリーは21日、欧州大陸との輸送が速やかに回復しなければ、数日中に品切れが始まるとの見通しを示した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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