12月7日、ロイター企業調査によると、総選挙後に誕生する次期政権の政策課題として、企業は円安を目指す通貨政策を最も重視している。写真は国会議事堂。4日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 7日 ロイター] 12月ロイター企業調査によると、総選挙後に誕生する次期政権の政策課題として、企業は円安を目指す通貨政策を最も重視している。回答企業の8割が1ドル85円より円安での安定を望んでおり、金融緩和や環太平洋連携協定(TPP)参加への関心は低かった。
政権の枠組みは自民党主体となるとの予想が大勢だが、対中強硬姿勢やばらまき復活などに対する不安の声が目立つ。また、企業は従来と比べか海外経済の回復と連動できなくなっており、円安進行や経済対策に依存する姿も浮き彫りとなった。景気回復時期は来年後半以降と慎重に見通している企業が全体の7割にのぼった。
この調査はロイター短観と同時に実施し、調査期間は11月20日から12月3日。大企業、中堅企業400社を対象とし、回答は250社程度。製造業、非製造業ほぼ同数ずつから回答をもらった。
<景気対策は円安重視、金融緩和やTPPは関心薄く>
次期政権が取り組む課題としては企業は景気対策への関心が高い。中でも重要視している政策は、製造業では円安を目指す通貨政策が51%を占め、最も多くなった。非製造業では関心は分散しており、規制緩和や財政支出拡大、円安を目指す通貨政策の3つが20%台で同程度となっている。逆に重要性が最も低かったのが製造業、非製造業ともにTPP参加で、全体で8%だった。また自民党が強く打ち出している日銀の金融緩和政策も関心が低く、全体で15%にとどまった。
<8割が85円より円安希望、海外経済回復と連動できず>
円安が企業にとって何よりも重要な政策と位置付けられていることは、景気回復のきっかけとして米中景気動向よりも円安を挙げた企業が突出して多かったことからもうかがえる。円安を挙げた企業が全体で64%だったのに対し、中国、米国の景気を挙げたのは30%台にとどまった。国内経済対策は46%を占め、特に非製造業では5割を超えた。
どの程度の円相場が望ましいか聞いたところ、「1ドル85円より円安での安定」との回答割合が41%で最も多かった。「85円程度の安定」を望むとの回答と合計すると、8割以上にのぼる。
景気回復の時期は来年後半が46%と最も多く、それ以降を合わせると7割が今後半年は景気持ち直しはないとみている。民間調査機関で年明けに景気回復を予想する声が多いことと比較すると、企業は非常に慎重にみていることがうかがえる。
<自民党政権予想が8割、不安は対中関係とばらまきに集中>
総選挙の結果について、回答企業の8割が次期政権は自民党主体になると予想している。ただ、自民党の掲げる政策と企業の考え方には一致しない点も見られる。特に対中強硬姿勢と公共工事への巨額投資には不安の声が噴出している。
外交や安全保障問題では、対中関係改善を最も重視するとの回答と、対米関係改善を最重視する回答がきっ抗した。安倍晋三総裁は尖閣諸島への公務員常駐など対中強硬姿勢が目立つが、中国事業を手掛ける企業はいまだに厳しい状況が続いているだけに、不安の声は強い。日中関係悪化前と比較して、中国関連の新規商談は以前の水準に戻っていないとしたのは回答企業の67%を占め、そのうち31%は激しい反日デモ以降、落ち込んだままでほとんど回復していないという。他方、関係悪化以前と同程度かそれ以上との回答も32%にのぼる。
こうした状況下で自民党主体の政権が誕生すれば「右傾化して中国との関係が悪化することが不安」(非鉄金属)、「靖国神社参拝など、日中関係にまた油を注ぐことになりかねない」(電機)、「周辺諸国を刺激する政策が不安」(サービス)といった声が数多く寄せられた。
また自民党公約が掲げる「国土強靭化」にも不安がにじむ。「利害誘導型のばらまき政治への回帰」(小売)、「旧態依然とした体質を変えられるのか」(海運)といった指摘に加えて「財政赤字の増大」、「国債の乱発」(卸売)を懸念する声も多い。
<消費増税は景気回復前提が6割、原発は75%がある程度の稼働容認>
そのほか、自民党は基本的に予定通りの消費増税実施を掲げているが、回答企業の6割が経済成長の条件や景気の様子を前提にすべきと指摘、4割は予定通り実施すべきと回答した。
原発稼働問題について自民党は3年以内に再稼働を判断するとしている。回答企業の75%が「ある程度の原発稼働を認める」と回答している一方で、「原発ゼロを目指すべき」と回答した企業も17%にのぼり、再稼働容認の姿勢が大方の企業で共有されているとも言えない状況だ。
(ロイターニュース 中川泉 編集:石田仁志)
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